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ジェスネリアードの栽培

1 総論
2 種類(属)ごとの管理

  ストレプトカーパス(Streptocarpus)
  プリムリナ(旧キリタ等)(Primulina)
  ペトロコスメア(Petrocosmea)
  コドナンテ、コドナントプシス、ネマタンサス、コドナタンサス
  (Codonanthe, Codonanthopsis, Nematanthus, xCodonatanthus)
  エスキナンサス(Aeschynanthus)
  コルムネア(Columnea)パキカウロス(Pachycaulos)アルソビア(Alsobia)
  シンニンギア(Sinningia)
  ディアステマ ( Diastema)
   コーレリア (Kohleria)、グロキシネラ(Gloxinella)
エウコドニア(Eucodonia)
  ゲスネリア(Gesneria)、リチドフィラム(Rhytidophyllum)、リンコグロッサム
    (Rhynchoglossum)

1 総論

栽培用ミックス(配合土)

 ジェスネリアードは木や岩などの窪みに付着したり、浅い土壌に根を広げているものが多く、水はけがよく空気の流通の良い土を好む。そのため粘土質で重い土は不向き。一般に市販されている鉢物用土や山野草用土でも栽培できるが、ジェスネリアード用に栽培用ミックスを作る場合の一例をあげる
 排水と通気性をよくし、併せて一定の保水性も維持するために、ピートモス、パーライト、日向土、硬質鹿沼土などを混合する*注1。硬質でない鹿沼土は粒がつぶれやすく推奨できない。日向土は小粒や細粒が良い。ピートモスは酸性が強いので石灰を加えて酸度を調整する*注2。当園で主に使用している配合例を次に示すが、自分の栽培条件にあわせてアレンジするとよい。また、市販の鉢物用土に、日向砂、鹿沼土を加え、排水を良くして使用することもできる。
 
 (配合例:容量比)
 ピートモス1*注2 + パーライト1 + 小粒硬質鹿沼土(または日向土)1

 注1:ピートモスの割合が少ない方が、潅水過多や夏の高温による根腐れの危険は少ない。特に暑さに弱い高地性の種類の場合、有機物を含まない砂礫質の山野草用土がよい。
 注2:酸度の調整にピートモス1リットルあたり苦土石灰を5グラム加えている。これでどの程度酸度が調整できているのか正直よくわからないが、上記配合土の酸度はph5.5-6.0となる。少し低すぎるように思うが、一般のジェスネリアードの栽培に支障はない。酸度の測定にはホームセンター等で売られている酸度検定液が手軽。



  肥料と水やり
 生育期(最低気温が5度以下または高温が30度以上の時期を除く)には液肥を1〜2週間毎に与える。水は、過湿にならないように土の状態を見ながら与える。高温期には、遮光していても濡れた葉に光が当たると葉焼けする恐れがあるので、日が陰ってからやるのが無難。

 害虫
  最も被害が大きい害虫はコナカイガラとネコナカイガラ。前者の場合、葉に白い綿状の粒が見える。後者は根に寄生するので見つけにくいが、鉢から抜くと根鉢や鉢の内側に白いパーライトに似た小さな粒が見える。用土にパーライトが含まれる場合、肉眼ではパーライトと見分けにくいことがあるので、虫眼鏡で確認する。コナカイガラの場合、箸やピンセットで取り除くか、有効な殺虫剤を散布する。ネコナカイガラの場合は、殺虫剤を土に潅注するのが有効。規定の濃度を守れば根に薬害が出ることはない。原因がよくわからず生育が悪い場合には、ネコナカイガラの被害を疑い、一度鉢から抜いて調べてみる必要がある。また、植え替えの際にネコナカイガラを発見することがあるが、その場合は放置しないで植え替え後に薬剤を潅注する。

 半耐寒性ジェスネリアードの越冬
 ストレプトカーパス、プリムリナ(旧キリタ)、ペトロコスメア、シンニンギアなどの多くはかなりの耐寒性があるので、地域にもよるが、戸外でも簡単な被覆程度で越冬できる可能性がある。プリムリナやペトロコスメアは、低温で越冬した株のほうがよく開花する。当園(兵庫県赤穂市)は瀬戸内海に面した温暖な土地だが、ここでの越冬例を紹介する。
その1 無加温フレーム内
 建物の北側軒下・無加温小型フレーム。直射光は当たらないので終日締め切り。12〜3月、フレーム内の気温は最低-2〜最高10℃程度。この期間中はよほどひどくしおれない限り灌水しないほうが無難。
 日が当たる場所に置く場合は遮光幕を掛けるとともに、日中の気温が上がりすぎないように(25℃以下)管理する。
 越冬を終えたストレプトカーパス。4月上旬  越冬を終えたプリムリナ(旧キリタ等)。
4月上旬
 越冬を終えたペトロコスメア。4月上旬

その2 軒下
 建物の北側軒下、遮光幕の下で越冬。  遮光幕下で越冬中の状態。葉はほとんど枯れている。  越冬後の回復状況。緑の新葉が伸びている。

異常寒波に注意
 2011年1〜2月は例年になく低温が続き、ビニールハウス内の最低気温は連日−5℃程度まで下がった。無加温ハウス内で通常は越冬できるストレプトカーパス、プリムリナ(旧キリタ)、ペトロコスメア、シンニンギア等が沢山枯死し、または大きな損傷を受けた。翌年からは、ハウス内にビニールトンネルを張った上、電熱線(農電園芸ケーブル)でトンネル内の気温を最低2℃に維持できるようにしている。耐寒性は種類によって異なるが、おおざっぱに言って、最低夜温0℃程度以上が越冬限界の目安と思われる。土がよくぬれていると腐りやすいので、冬の灌水は極力控えるほうがよい。

2 種類(属)ごとの管理


ストレプトカーパス(Streptocarpus)

1 開花期
 園芸品種は周年開花性があるが、初夏と秋によく咲く。原種は6月頃から秋にかけて咲くことが多い。

2 鉢
 素焼き鉢、プラスチック鉢のいずれでもよいが、夏越しが難しい場所では素焼き鉢のほうがよい。サイズは苗の大きさに合わせて2〜5号(直径6〜15cm)を使用するが、どちらかといえば小さめの鉢の方が管理しやすい。

3 明るさ
 直射日光に当てると痛む。遮光は条件によって一概には言えないが、自然光の場合(温室、ベランダなど)5〜10月は厚手の遮光ネット2枚、それ以外の時期は1枚程度の遮光をする。室内の窓際(南向き)ではレースのカーテン越しくらいの明るさにする。概ね以上の程度を目安に工夫して欲しい。また、セントポーリアの蛍光灯栽培をしている場合は、同程度の照明で栽培できる。

4 温度
 生育適温は20〜25度位だが、最低気温10〜最高気温35度位の範囲で生育可能。夜温が30度近くの日が続くと生育が衰え、腐るものが出ることがある。冬の最低温度(夜温)は、成育を続けさせるためには10
度程度以上、休眠し葉が痛むが枯死しない程度には0〜5度以上を目安にする。

5 空中湿度
 特に多湿や乾燥気味にする必要はない。普通でよ

6 施肥と潅水
 液肥(ハイポネックス微粉が無難)を隔週に一度程度与える(7〜8月および低温で越冬させる期間は原則として施肥しない)。
 乾燥には相当強く、過湿で腐ることはあっても(特に夏、冬)、土が少々乾いて葉がしおれても枯れることはない。夏の暑さで弱っているところに水をじゃぶじゃぶかけると腐る原因になる。また、冬に温度が下がる場合(概ね5度以下)は原則として潅水しない。葉がしおれたり痛むが、気温が上がれば新葉がでて元気に生長を再開する(上図参照)。

7 繁殖
 葉挿しができる。きれいな葉を長さ5cm程度に切り、鹿沼土などに挿して日陰で管理する。5、6月が適期だが、夏に腐りやすいのでできるだけ涼しい場所に置く。温室など冬に加温できる場所があれば、10−11月頃に挿すと高温による腐敗を避けられる。古く黄ばんだ葉は挿し木に適さない


葉を横に4-5cmの長さに切り(上)、鹿沼土で1cm程の深さに挿す。葉を中央の葉脈を切り離すように縦に切る方法(下)もある。長い葉片は挿しにくいので切り分ける。

挿した状態。






発芽した状態。3か月以上かかる。





カッターナイフなどを使って、芽を葉から慎重に切り離す。




8 1葉種・寡葉種の栽培
 1葉種は開花後に結実して枯れるので、採種して種子から苗を育てる必要がある。寡葉種は多年生だが、数年で株が衰弱枯死することが多く、葉挿しもしにくいので種子から育てる。4月頃または9月頃に播いて、1葉種は播種から開花まで最低足かけ2−3年かかる。葉の長さが50 cm を超える大型のものが多い。寡葉種はそれほど大きくならず、1年程度で開花する。凍らない程度以上の気温があれば越冬できる。低温で越冬させる場合はほとんど潅水しない。普通、越冬中に葉が枯れ込むが、春になると其部のほうから再び再生して来る。葉が一定以上の大きさになると開花する。初夏に開花を始める。

プリムリナ(旧キリタ等)(Primulina) 

 1 開花期、生育温度
 栽培されているプリムリナの原種の中には夏―秋咲きのものと、春咲き性のものがある。ただし、開花期は栽培条件(特に越冬温度)の影響を受けるので、開花時期が変わることもある。(個々の種類・品種の開花期は当園のカタログ参照 other list
 春咲き種は秋に花芽ができるが、冬の低温を経て開花が促されるため、冬の気温が高すぎると開花しなかったり、花柄が伸びずに葉の下で開花したりするので、低温(最低温度0〜5℃位)で越冬させると花柄が伸びてきれいに咲く。夏ー秋咲き種の開花には低温の必要はない。
 大部分を占める半耐寒性種・品種は0℃前後の最低夜温があれば越冬できる。旧キリトプシスや旧プリムリナに属した種類も同様。 耐寒性の程度は種類により若干異なり、葉が多肉質のもの(プ・ミヌティマクラータ、プ・オピオポゴイデス、プ・ロンガネンシスなど)は耐寒性が比較的弱い。プ・バランサエやプ・ゲメラ 、プ・ドラケイなど非耐寒性の種類は、冬は暖かい場所(最低夜温10度以上)で育てる。
2 繁殖
 葉挿しができる。葉の軸(葉柄)を1cm程付けて切り取り、挿す。また、葉を太い葉脈を含むいくつかの切片に切り分けて差すこともできる。管理はストレプトカーパスと同じ。脇芽ができるものはそれをかき取って挿す。

3 その他はストレプトカーパスに準ずる。


ペトロコスメア(Petrocosmea)

 ペトロコスメアの多くは葉の色や配列がきれいな小型の宿根草で、花がなくとも美しい姿が楽しめる。

1 開花期
 春から夏にかけて咲くものもあるが(ペ・フォルモーサ、ぺ・ケリー、ぺ・フラキダなど)、多くは晩秋から冬にかけてよく咲く。開花が冬にかかる場合には、幾分保温できる場所に置いたほうが咲きやすい。1年中高温で育てるより、冬の温度を低めにする方が翌年よく開花する。

2 明るさ
 ストレプトカーパスやプリムリナと同程度か、やや暗い場所で育てるときれいに育つ。

3 育成温度、用土
 寒さにはかなり強く、0度前後の温度にも耐える。当園では無加温のビニールハウス内で冬越しさせている。暑さにはそれほど強くないものが多く、特に、ペ・ベゴニイフォリアやペ・ロンギアンテラ、ペ・ミノールなどは夏に枯死しやすいので、寒冷地以外ではピートモスなどの有機物を含まない砂礫質の山野草用土に植えるのが無難。その他の種類でも、有機物が少なく粗い砂礫中心の用土で育てると根ぐされしにくい。

4 繁殖
 プリムリナに比べて葉はずっと小さいが、葉挿しの方法は同じ。脇芽がよく発生するのでこれをかき取って挿してもよい。


コドナンテ、コドナントプシス、ネマタンサス、コドナタンサス
(Codonanthe, Codonanthopsis, Nematanthus, xCodonatanthus)

 コドナンテ、コドナントプシスとネマタンサスは中南米産の宿根草。コドナタンサスはコドナンテとネマタンサス間の属間雑種。いずれも下垂、または横に張る細い枝を叢生し、ハンギングバスケット向き。また、低照度、高低温、乾燥にも比較的強いので室内でも育てやすい。コドナンテの花は白で地味だが可愛らしく、ほおずきを小さくしたような美しい実を着ける。ネマタンサスの花は黄色からオレンジ色が多く、金魚型の特徴ある形をしているものが多い。コドナタンサスは両者の中間的な特徴を持つ。

1 鉢
 観賞にはつり鉢が適する。苗は2−3号ポットに数本寄せ植えし、ある程度茎が伸びたらつり鉢に植え替える。

2 明るさ
 強い直射日光に当てると葉焼けするが、ストレプトカーパスより明るい場所を好み、花や実着きをよくするには明るい日陰を選ぶ。

3 温度
 低温が続くと落葉するので、きれいな株を維持するには夜度が10度を下回らないようにする。暑さには強い。

4 繁殖
 茎を切って挿す。挿しやすい長さに切り、上の1、2節の葉を残して下節の葉は取り除き挿す。発根しやすいので、挿し木床を使わず、栽培用の鉢に挿し穂を数本まとめて直接挿すことも可能。


エスキナンサス(Aeschynanthus)

 熱帯アジア原産の宿根草。細い枝が下垂するものが多いが、斜上気味に伸びるものや木立性の種類もある。花は茎頂に固まって着くものと葉腋に着くものがある。花色は赤ーオレンジ系が中心だが、黄色や緑色もある。
 栽培はコドナンテに準じる。

コルムネア(Columnea)パキカウロス(Pachycaulos)アルソビア(Alsobia)

  中南米原産の宿根草。枝が下垂し花が葉腋につくので吊り鉢向き。栽培はエスキナンサスに準ずるが、耐寒性は劣るので最低夜温10℃程度以上が必要。


シンニンギア(Sinningia)

 シンニンギアはブラジル原産で球根(塊茎)ができる。小さいものから大きいものまで、また、茎があまり伸びずロゼット状になるものから茎が長く伸びるものまで多様だ。

1 鉢
 小さなものでは2号(径6cm)かそれ以下の鉢で育てるミニチュア種・品種から、4〜5号またはそれ以上の鉢で育てるものまで様々だが、小さめの鉢が育てやすい。

2 明るさ
 ミニチュア種・品種はストレプトカーパス並の明るさが良いが、多くはそれより明るい場所を好む。

3 休眠と温度、潅水
 多くの種類は球根ができ冬に休眠するので、秋に地上部が弱ってきたら水を切って鉢のまま休眠させる。休眠中は水を与えないで室内等凍らない場所(シンニンギア・リッチーなど、種類によりやや高めの温度が必要なものもある)で越冬させる。春になり自然に芽が動き出せば潅水を始める。シンニンギア・ウィローサ、シ・リンドレイ、シ・グッタータ、シ・バルバータなどのように木立性のものは明瞭な休眠が見られず、冬でも10度程度以上を保つ必要がある。交配種のミニシンニンギアは、乾燥して休眠させると二度と発芽しなくなることがあるので、絶えず温度と湿り気を保ち休眠させないようにする。
  暑さには強いものが多い。

4 植え替え、繁殖
 年一度程度植え替える。球根の芽が動き始めた頃が適期。細かい根は古土と共にむしり取る。大きな球根は上半分くらいが土の上に出る程、小さいものでも球根の上部は土の上に出るように植える。
 球根から複数の芽が出れば切り取って挿し木できるが、種類によっては発根しにくいものもある。また、脇芽ができるものはこれを挿し木する。シンニンギア・リッチー、シ・チュビフローラ、シ・カウツキアイのように子球ができる種類もある。


ディアステマ ( Diastema)

 南米産の小型植物。球根(ライゾーム;鱗状地下茎)を作り、次々に発芽してくる。温度が下がると地上部は枯れるが、この間も土を乾かさないようにするのが無難。球根を乾燥させて貯蔵した経験はないが、一定期間の乾燥状態には耐えられると思う。
1 鉢
 2〜3号程度の鉢が植物とのバランスが良い。大きな鉢に沢山の球根を寄せ植えをする場合には浅鉢を使う。

2 明るさ、温度
 あまり強い光では葉焼けするので、暗めの環境が良い。耐寒性はないので少なくとも10℃以上に保つ。

3 湿度、潅水
 テラリウム内での栽培にも適する。潅水を特に多くする必要はない。

4 植え替え、繁殖
 株が込みすぎるようになれば、株分けする。

コーレリア (Kohleria)グロキシネラ(Gloxinella)エウコドニア(Eucodonia
  南米産の球根植物(ライゾーム;鱗状地下茎)。初夏から咲き始め秋まで花を着ける。葉焼けしやすいので、濡れた葉に強い光を当てないように。
1 鉢
 4−5号鉢に3-5球程植える。
2 明るさ
 生育期はストレプトカーパスと同程度の遮光をする。
3 越冬
 エウコドニアの球根は冬休眠し春に発芽する。球根は鉢のまま、または掘り上げて袋に密封し春まで保存する。
 コーレリアの球根には完全な休眠期間がないので、親株が成育中にも球根から新芽が発生してくる。気温が下がると新旧の芽が混在したまま成育が衰えてくるので、鉢に入れたまま5−10℃程度以上で潅水を控えて乾燥気味に越冬させる。その場合、古い茎は切り取っておく。 球根を掘り上げて保存する場合は、バーミキュライト等と一緒にビニール袋に封入する。乾燥状態では、徐々にしなびてくるのであまり長期の保存はできない(1,2か月程度)。また、湿らせておくと、しなびることはないが芽が伸びだすので、この場合もそれほど長期の保存はできない。また、掘り上げた時にすでに芽が伸びている球根は、芽を切り取ってから保存する。
 グロキシネラの根茎は細い紐状で明瞭な球根にはならない。鉢に植えたまま温度、湿度を保って越冬させる(5℃程度以上)。

ゲスネリア(Gesneria)、リチドフィラム(Rhytidophyllum)、リンコグロッサム(Rhynchoglossum)
スタウランテラ(Stauranthera)
 非耐寒性の多年草。夜温10℃程度以上の温度が必要。乾燥に弱く、一度しおれると回復しにくいので、鉢を乾かさないように注意する。