バレンタイン・キッス（アンダーバージョン）
ｂｙドミ
「恋人達の聖なる日に、素晴らしき桜色の宝石を、頂きに上がります」
怪盗キッドの予告状が届いたのは、立春とは名ばかりの、この冬一番の冷え込みが襲った、２月３日の事であった・・・。
時期的に、恋人達の聖なる日とは、「バレンタインデー」の事であろうと考えられ。
キッドが狙うものは・・・。
「米花博物館に展示される予定の、バレンタイン・キッスの事に、間違いない！」
「バレンタイン・キッス」とは、美しい桜色をした、非常に希少な、大粒の天然ピンクトパーズである。
宝石展でも滅多に見られる事がない、ピンクトパーズが、「バレンタイン展示企画」として、米花博物館に飾られる事になったのだった。
中森警部以下、警視庁捜査二課の面々は、今度こそキッドを捕まえて見せると、張り切って警備に当たる事になった。
☆☆☆
「お嬢さん。この怪盗めに、チョコレートを頂けませんか？」
２月１４日の夜。
中森警部は、部下を引き連れ、米花博物館を警備していたが。
怪盗キッドは、中森警部の自宅２階のベランダにいた。
窓の内側には、警部の一人娘である青子が、キッドを睨みつけていた。
「ば快斗には、もう、チョコ、あげたでしょ？」
「黒羽快斗は頂いたかもしれませんが、怪盗キッドは頂いておりません」
「同一人物じゃないの！」
「同一人物ですが、別存在です」
「青子は、怪盗キッドなんか、嫌いだもん！嫌いな相手に、チョコなんかあげないよ！」
「じゃあ、黒羽快斗の事は、好きなのですか？」
青子は、ぐっと言葉に詰まる。
「なっ！すす、好きなんかじゃないもん、あんなスケベ！」
「おい・・・！まさか、オメーが今日くれたチョコ、義理チョコだなんて言わねーだろ？」
「怪盗さん。言葉が、崩れてますわよ。お気をつけ遊ばせ」
「にゃろ！」
「大体、去年まで、バレンタインデーも知らなかったクセに。快斗は甘いものが好きだから、チョコをあげただけで、他意はないもん！」
それまで、辛抱強く、窓の外にいた怪盗キッドは、窓のカギをあっという間に外してしまうと、部屋の中へ体を滑り込ませた。
「ちょ！何、不法侵入、してるのよ！？」
「今夜の予告を果たしにね」
「予告って・・・、今夜キッドは、米花博物館に展示されている、バレンタイン・キッスを、盗み出す筈なんじゃ！？」
「私が狙う今夜の獲物は、桜色の宝石は、ここにある」
青子がモップを振り下ろすのを、ひょいと避け。
キッドは、青子をぐいっと抱きしめると、その顎に手をかけた。
「えっ！？キ・・・」
青子の抗議の言葉は、キッドの唇の中に飲み込まれた。
口付けられたのだと気付いた時には、もう既に唇は離れていた。
「な・・・な・・・！？」
青子が、顔を真っ赤にして、口をパクパクさせる。
「何をするのよ！？青子のファーストキス！」
「奇遇ですね、私もファーストキスです」
「嘘おっしゃい！あちこちの女の人に、キスしまくっているクセに！」
「ヤキモチですか？可愛い人だ」
「や、妬いてなんかないもん！ば快斗〜〜〜っ！」
悔しい。
何が悔しいかって、本当は嫌ではなかった自分が、一番悔しい。
「唇へのキスは、あなたが初めてですよ」
「何を・・・んっ！」
再びの口付けに、強張っていた青子の体から、力が抜けて行く。
今度は、先程より少し長く、口付けられた。
「甘い」
「えっ？」
キッドが、自分の唇をペロリと舐めるのを見て、青子はドキリとする。
「すげー柔らかくて・・・チョコより、ずっと甘い・・・」
「なな、何を！？」
青子は、頬がかっと熱くなるのを感じながら、怒鳴った。
「どれ、もう一度」
「なっ！んっ！んんんんっ！」
繰り返されるごとに、深くなって行く口付け。
いつしか青子も抵抗をやめ、キッドの首に自分の手を回していた。
キッドの手は、青子の腰に回っていたが。
口付を続けたまま、その手がもぞもぞと動き、右手は前に回され、左手は下の方へ移動して行く。
服の上から、胸とお尻を撫で回されて、一旦落ち着いていた青子の抵抗が、再び始まった。
「ん〜！ん〜！」
青子が必死で身をよじるが、キッドの手はハッキリとした意思を持って、青子の胸とお尻を撫で回す。
「嫌っ！」
青子が力を入れてキッドを押しのけた。
「嫌なのですか？」
「何で！？だって、青子は、胸もお尻も未発達で、触り甲斐がないでしょ！？」
「くくくっ！拘るところは、そこですか？」
「だ、だって！」
キッドが青子を再び抱き締める。
暴れる青子をなだめるように、キッドは唇を塞いだ。
キッドの舌が青子の唇をなぞる。
青子の体を、甘い痺れがつきぬけ、青子の体から力が抜けて行く。
唇の隙間から、何かがぬっと差し入れられ、青子の口の中を侵して行く。
舌が入れられたのだと気付いた時には、青子の舌はキッドの舌に絡めとられていた。
「ん・・・んふっ・・・んんっ！」
ふわりと、青子の体が宙に浮いた。
抱きあげられたのだと理解した時には、何か柔らかいものの上に降ろされていた。
キッドの唇が離れ、青子は目を開ける。
キッドの向こうに見えるのは、見慣れた天井。
青子は、ベッドの上に降ろされたのであった。
キッドのマジシャンの手が、あっという間に、抵抗の間もなく、青子の衣服を取り去って行く。
「ああっ！やあっ！」
青子は、目をギュッと閉じ、顔を横に向けた。
その全身が細かく震えている。
「・・・見ないで・・・」
「・・・綺麗だ・・・すごく、綺麗ですよ・・・青子・・・」
「嘘つき。いつも、お子様体型だって、バカにするクセに・・・」
「それは・・・煩悩を誤魔化す為ですよ。黒羽快斗も、恋する女の子相手に自分を抑えるすべを知らない、ガキなのでね」
手袋をはめたキッドの手が、青子の肌を這いまわる。
青子は、ビクンとはねた。
「中森警部は、米花博物館に足止め。今夜は、２人きり。逃す気はありません」
青子が、顔を両手で覆い、いやいやするように首を振った。
その様子に、キッドも一瞬、ためらう様に動きを止めた。
「・・・お願い・・・快斗が、良いの・・・」
「青子？」
「キッドは、嫌。快斗に、なって？」
「・・・同一人物だって、言っているでしょう？」
「分かってる！キッドも、快斗の一部なんだって、ちゃんと分かってるけど！でも、初めての相手は、快斗が良いの・・・お願い・・・」
キッドは、目を丸くした。
そして、シルクハットを取り、モノクルを外し、マントを取り去る。
黒羽快斗は、一糸まとわぬ姿になって、青子の上に覆いかぶさった。
「青子」
「かい・・・と・・・？」
「ああ」
「快斗！」
青子が、ぱあっと笑顔になって、快斗の首に手を回した。
快斗は青子を抱きしめ、青子の唇に己のそれを重ねる。
「快斗・・・ドキドキ、してる？」
「ああ。当たり前だろ？青子も、ドキドキしてんな」
「うん。だって・・・」
キッドの正体が青子にばれた時、快斗と青子はお互いに、好きという言葉は、伝えていた。
しかし、今日までキスもまだの、清い関係だったのである。
「快斗は、青子の事、好きって言ってくれたけど」
「うん？」
「それって、幼馴染みの延長みたいなもので、女として見られてないんだって、思ってたの・・・」
「・・・バーロ。んな訳、ある筈ねえだろ？」
「だって！」
「だからー。色々言ってたのは、照れ隠しだっての！」
「うん。だから、今日、キッドから迫られて、嬉しかったんだけど・・・でも、悲しかったの」
「何で！？」
「だって。キッドの時って、いっつも、仮面かぶってるじゃない。素の快斗で、向かい合って欲しかった。素の快斗で、求めて欲しかったの・・・」
青子が、一筋涙を流す。
「素のオレだと、余裕ねえし。優しくなんか出来ねえぞ？」
「いいよ、それでも。快斗が青子を欲しいって思うんだったら、青子は・・・」
青子の笑顔に、快斗はクラクラとなる。
快斗は、もう一度青子に口付けると、唇を喉元から胸元に、滑らせて行った。
小ぶりだが形の良い胸の膨らみを辿り、その頂にある果実に吸いつく。
するとそこは、固く勃ちあがって、存在を誇示した。
「んあん！」
同時に青子が声を上げ、のけぞる。
「この感度の良さは、確かに、お子様じゃねえなあ」
「ば、ば快斗っ！ああっ！」
「柔らかくてスベスベしてて・・・たまんねえ・・・」
「んん・・・ああ・・・はあん・・・」
快斗は、指と唇で、青子の全身にくまなく触れて行く。
快斗の腕の中で身をくねらせ、白い肌がピンクに染まり、あちこちに快斗がつけた鮮やかな紅い花が咲いている青子の姿は、妖艶で。
さながら、蝶の羽化を見るような青子の変化に、快斗はごくりと喉を鳴らした。
快斗が両足を抱えて押し広げると、青子の中心部にある紅い花は、既に蜜をたたえて芳香を放ち、快斗を誘っていた。
快斗はそこに顔を寄せると、花芯を舌先で愛撫し、溢れる蜜をすする。
「あ・・・！んんっ・・・やあ・・・んやああっ！」
青子がのけ反り、蜜はますます溢れてくる。
快斗は、自身の先端を、青子の中心部にこすりつけ、蜜を絡ませた。
「え・・・あ・・・！」
熱く硬い感触に、青子が一瞬、体をこわばらせた。
「青子・・・出来るだけ、力抜いておけよ・・・」
力を抜くと言っても、どうしたら良いのか分からないままに。
灼熱の塊が、青子の中心部をうがった。
「う・・・ひ・・・痛い・・・っ！」
「青子・・・青子っ！」
こらえようと思いながらも、青子の口から苦痛を訴える声が漏れ、眦から涙が流れ落ちる。
お互いに初めての事とて、苦痛を抑えるすべも分からぬままに。
快斗のものは、青子の奥深くに入って行く。
やがて、快斗の動きが止まり、青子の痛みの波は遠のいて行った。
「青子、青子。大丈夫か？」
「う、うん・・・」
「全部、入ったぜ。分かるか？」
青子は、良く判らないままに、コクコクと頷いた。
「これで、オレ達、夫婦だぜ♪」
「か、快斗・・・」
青子が、ほんのりと微笑む。
「幸せになろうな」
「・・・不倫したら、許さないんだからね」
「だ！誰がすっか、バーロっ！」
「だって、女好きの快斗は、信用ならないもん」
「ったく！事の真っ最中にそんな憎らしい事言うのは、この口か！？」
「んんっ！」
快斗は、黙らせてやるとばかりに、青子の口を自分の唇で塞いだ。
そして、腰を動かし始める。
「あ・・・やっ！イタっ！快斗・・・動かないで・・・」
「青子・・・ごめん！無理！」
青子を気遣いたいと思うが、今更止まれない。
「すげ・・・青子・・・気持ちイイっ！」
「あ・・・う・・・かい・・・と・・・っ！」
快斗の動きは、どんどん激しくなる。
それに連れて、青子の痛みも大きくなっていたが。
段々、別の感覚が、体の奥から沸き起こってきた。
「ああ・・・快斗・・・んあん！あああん！」
青子の表情と声に、苦痛に代わって艶っぽさが混じり始めた。
「あああっ！はああっやああああっ！快斗・・・っ！んあああああっ！」
青子がのけ反って高い声を上げるのと同時に。
「くぅっ・・・！うお・・・青子・・・っ！」
快斗は、青子の中に、自身の熱を放った。
２人とも弛緩して、快斗は青子の上に倒れ込んだ。
暫く余韻を楽しんだ後、快斗は青子の中から、ゆっくり己を引きぬく。
２人の体液が混じり合ったものと同時に、赤いものが、青子の中から流れ出た。
「青子。大丈夫か？」
「うん・・・平気よ・・・」
青子が、弱々しく微笑む。
「痛かっただろ？」
「うん。でも、嬉しかった・・・」
青子の笑顔は、邪気がない。
妖艶さの名残りはあるものの、いつもの天使のような青子の姿が、そこにあった。
「ねえ、快斗」
「ん？」
「赤ちゃん」、出来ちゃうかなあ？」
快斗は、ゴホゴホと咳をする。
この場面で口に出す事かと思ったが。
「さあな。可能性は、あるよなあ」
避妊せずに青子の中に出したのだから、出来ても不思議はない。
「でも、良いじゃねえか。オレ達はもう、夫婦だって言っただろ？」
「・・・うん・・・」
「もしもの時は、警部に話をして、籍入れようぜ」
「うん」
快斗は、青子の隣に横たわり、青子を抱き寄せた。
「それにしても、今日は、オメーの唇だけを頂いて帰る積りだったのになあ」
「えっ！？」
「オメーがあんまり可愛いもんだから、止まんなくなっちまった」
「快斗。今、キッドになってる？」
「おい！素のオレでも、たまには本音を出す事くれえ、あるに決まってんだろ？」
「・・・そうなの？」
「今夜は、オメーの唇を頂いて。ホワイトデーのお返しに、オレの童貞をやろうかって思ったんだけどよ」
「・・・！何それ！？サイテー！」
青子が怒って快斗の胸をぽかぽか叩く。
「しゃあねえ。ホワイトデーは、２倍返しって事で」
「えっ・・・！？まさか、エッチを２回するの？」
「いや、最低でも、６回かな？」
「な！何で！？２倍で６回に！？」
「そりゃ、今夜、最低でもあと２回はしようかと」
快斗の台詞に、青子は目を真ん丸にした。
そして、気付く。
力を失っていた筈の快斗のものが、すっかり元気を取り戻して、青子の下腹部に当たっていた。
「スケベ〜〜〜っ！」
「否定は、しねえ。オレが不倫しなくて済むように、全部受け止めてくれよ、青子」
「最低〜〜〜っ！」
「青子があんま可愛くて、気持ちイイのが悪い」
「ば快斗〜〜〜っ！んんっ！あ・・・ん・・・あんっ・・・」
やがて再び。
中森邸２階の青子の部屋には、喘ぎ声と嬌声、隠微な水音とベッドのきしむ音が、響き始めたのであった。
空調が消されて寒い博物館の中、あるいは寒風吹きすさぶ戸外で、中森警部と部下達が、いつまで経っても現れないキッドから、ピンクトパーズを守っている頃。
キッドは、桜色の素晴らしい宝石を、すっかり手中に納めていたのであった。
Fin.
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