Sweet Pain



byドミ



(21)体育祭



昼休み。
食堂でご飯を食べた後、教室で紙パックの飲み物を手に、お喋りをする。

けっこう、コイバナや、彼氏とのエッチの話が多いんだけど。
わたしも……そしていつもだったら超お喋りの園子も、その手の話になったら微妙に聞き役に回る。
だって、うっかり、教師である彼との話はできないもの。

「蘭とか、ほら、突然転校してった高橋君とか、けっこうもてるんだからさー。彼氏作ったらいいのに〜」
「園子も、あれでしょ?ラブレターもらったりとか、あったじゃん?」
「うっさいわねー。わたしは、もっと大人の男の人を探すんだから、ほっといて!」
「あー。そういえば、わたしの彼氏、クラスメート紹介してってうるさいのよ。彼氏の友だちと合コンしようってさー」
「そう?考えとく」

こういう時にそらっとぼけて話題に加わるのって、園子は上手い。
わたしはいつも、苦笑いして聞いてるだけ。


結構えげつない話とか、きわどい話とか、多い。
それはまだ、我慢できるんだけど……。


「なんかさー。最初の頃はすっごい何回もやりまくるのに、段々、会ってもエッチしなくなって……そのままフェイドアウトなんて、酷いと思わない?」
「エッチの前は一生懸命アプローチして来たのに、やっと体許したら、すごく冷たく素っ気なくなっちゃってー」

そういう話は、聞いてて何だかつらい。

「付き合い始めてあんまり早くエッチしちゃダメだよね。飽きるもの早いよ」
「ちょっとはもったいぶらないと」
「エッチした後も、もったいぶってあんまりさせない方が良いよ」
「やっぱ男の人って、最初はやりたがるけど、その内、飽きちゃうみたいだよねえ」


最初の頃は、「新一に限って!」と思っていたわたしだけど。
何だか、段々心配になっていた。


新一が心変わりするかもとか、浮気するかもとか、そういう心配はしてない。
でも、今、あんまりエッチし過ぎると、いざ、正式に結婚したころには、もうエッチに飽きてあんまり求められなくなって、子どもも作れない……なんてことにならないかしら?
だって、わたしの高校卒業まで、あと2年半以上あるんだもん。



   ☆☆☆



「ねえ、蘭。チアガール立候補する?」
「え?体育祭の?」
「もちろん!蘭は中等部の時もずっとチアガールになってたよね」
「立候補なんかしないよ!別に、やりたいわけじゃないし……」

帝丹学園秋の体育祭は、やっぱり中高一貫で行われ、春の文化祭以上に大きく盛り上がる行事だ。
各学年8クラスあるため、クラス単位でAB組は赤、CD組は青、EF組は白、GH組は黄と、4つのブロックに分かれ、ブロック対抗で競技が行われる。
チーム名はそれぞれのブロックで決めるが、大抵、色のイメージと動物を組み合わせたチーム名になっていた。
今年は、赤ブロック=鳳凰、青ブロック=青竜、白ブロック=白虎、黄ブロック=金鷲と決まった。
公平になるよう、年齢体力が関わるような競技は、各学年で何人ずつ選手を出すなど、細かくルールが決められている。

校庭の陸上トラック周囲に4つのスタンド席が組み立てられ、出番や役割以外では、基本的に自分のブロックの応援席で応援することになっている。
チアガールや応援団に選ばれた人は、自分の出場種目以外の時は応援席で常に応援しなければならないので、結構ハードだ。

体育系の部活をやっている人は、出場制限がある。
たとえば、陸上部所属の者は短距離走にもリレーにも参加できないとか。

わたしと園子は体育系の部活だけど、所属は空手部とテニス部で、それが問題になるような競技はないため、出場制限はない。

そして、点数も大きく毎年盛り上がるのは、応援合戦だ。
男子の応援団がリードし、女子のチアガールチームが踊り、ブラスバンド部所属の人達はチームに分かれて演奏し、ブロックごとに工夫したアトラクションを行い、そしてチーム全員でブロック応援歌を歌い、人文字を作る。
それぞれのブロック応援歌は、ずいぶん昔から歌い継がれていたりする。
先生たちが審査員になるのだが、毎年、点数付けには苦労すると言ってらした。


で、チアガールだけど、結構大変だから立候補する人は毎年ほとんどいない。
クラスから数人ずつ、立候補か立候補がなければ推薦されるのだけど、毎年わたしと園子は推薦されていた。
高等部3年の外部受験者のみは、応援団やチアガールの推薦を断ることができる(というより最初から選考から外される)が、そうじゃない限り、クラスで受けた推薦は、基本断れない。

「蘭は姿も良いし、運動神経良いから踊りも上手だしね」

で、結局、今年も推薦された。
まあ、仕方がないか……でも、チアガールになると、毎日帰りが遅くなって、門限ギリギリ(体育祭前は特別に門限が8時半になるけど、それでも)になるし……土日も練習あるしで、文化祭前の時以上に、新一の宿舎に行けなくなる。

すごく残念だけど……ただ、わたしは「あんまりエッチし過ぎると飽きる」という言葉が頭の中に残っていて、少しホッとしていた部分もあった。
少しお預け状態になることで、新一が飽きるのを先延ばしできるかもしれないと、思ったのだ。


『チアガール!?蘭が?』
「う、うん……なんか毎年、選ばれちゃうんだよね」
『……そりゃあ……まあ……蘭が選ばれるのは分からなくもねえけど……断れねえのか?』
「え!?何で!?断るなんて……だって、クラスの推薦なのに!」
『まあ、オメーの性格じゃ、断れねえよな』
「う、うん……で、しばらくすごく忙しくなると思うの……」
『もしかして、文化祭以上に忙しかったりするのか?』
「う、うん……」
『そっか。仕方ねえな……』

新一と電話で話した時、新一は何となく不機嫌そうだったんだけど。
その理由は、会える時間が減るからかなと単純に思っていた。

わたしだって寂しいけど我慢してるのに。
これは帝丹学園生徒の義務だし、不機嫌になられても困る。


まあ……わたしは外部進学を決めたから、チアガールをやるのは、もしまた推薦されたとしても、来年までだ。
選ばれたからには、頑張らなきゃ。


しかし、その日、寮の部屋で園子が半べそをかいていた。

「蘭〜。真さんから怒られちゃった〜」
「え!?何で!?」
「あんな、露出の多い恰好は許せません!……だって……」
「ろ、露出が多い恰好!?って……」

でも確かに、チアガールの制服は毎年、袖なしの超ミニで。
下にアンダースコートは履くけど……。

も、もしかして、新一が不機嫌だったのって、その所為!?


「でででも。推薦されたら断れないって、ちゃんと言ったの?」
「言ったよ。そしたらその後、口きいてくれなくて……」
「えー!?」


わたしは新一と微妙に険悪になって。
園子は京極先生とかなり険悪になって。

そんな風に、体育祭準備が始まったのだった。



   ☆☆☆



チアガールの練習が始まる。
振付は、3年のチアリーダーの先輩が行う。

「右、左、ステップステップ、はい、そこでターン」

結構本格的で厳しい練習が続き、毎日くたくた。
練習の時の衣装は普通の体操服だけど、汗をかくので毎晩洗濯して干して……という日々が続いた。

ちなみに、応援団やチアガールじゃない人たちも、応援スタンドの巨大背景画を描いたり、応援合戦出し物用の小道具大道具を作ったり、炊き出しをしたり……で、生徒全員大忙しだ。
自分の所属ブロックを優勝させようと、皆、一丸となる、それが帝丹学園の体育祭だ。


応援団の衣装は学ランの背中に刺繍がしてあるもので、これは代々受け継がれ、クリーニングされて大切に保管されている。

チアガールの方の衣装は、毎年、新しく作成していて、家政科部が一手に引き受けて縫っている。
デザインも家政科部で、チームごとに不公平にならないように、色をチームの色にするが、基本デザインは同じだ。

そして、応援団もチアガールもチーム全員、ブロック色の鉢巻きを締める。
応援団の鉢巻きはものすごく長く。
チアガールの鉢巻きは特製で長くて幅広く薄い生地のリボンのようなヤツで、それをブロックごとに工夫して頭飾りにしている。
わたし達のブロックは、リボンの結び方を工夫し頭の横に尾を垂らした鳳凰が止まっているかのような形にしていた。


家政科部の部員は中等部高等部合わせて20人弱、それで中等部から高等部まで全部で96人分の衣装は、大変だろう。
それを、1か月の間に仕上げるのだ。

チアガール衣装作成を一手に引き受けている家政科部に、ある日、激震が走った。

学園側から
「衣装は袖付・膝丈以上にするように」
と通達があったからだ。

「96人分の衣装に袖をつけて裾を長くするなんて、今からそんな余裕ある訳ないでしょう!!」

家政科部部長がムンクの叫びの顔になって言ったとかで。
それを受けて学園側も譲歩し、家政科部作成中の衣装はそのままで、それに市販のボレロとスパッツを組み合わせることとなった。
ボレロとスパッツの費用については学園側が体育祭用の予算とは別に責任を持って支払うとのことだった。


男子からの非難の声は多かったけど、実は女子からも「チアガールがボレロにスパッツ!?ダサ過ぎ〜!」と文句が出た。
けれど、
「体育祭はあくまで授業の一環。チアガールの生徒達も普段は部活でチアリーダーを行っている者達ではないから、露出度が高い衣装は許されない」
ということで、押し通された。


ただ正直、わたしと園子はホッとしていた。
これで、新一と京極先生との気まずい空気が解消されると思ったのだ。


「し、新一……」
『ん?蘭、何か用か?』

やっとの思いで電話したのに、新一から「何か用か」と言われて、胸がズキッと痛み、涙が溢れた。

「声が聞きたかっただけ。でも、新一の方はそうじゃなかったみたいだから、もう切るね。お休みなさい」
『蘭!待てよ。ごめん、オレが悪かった!』
「な、何よ!……謝られたって……!」

謝られたって、心に刺さった棘の痛みは、すぐに治らない。

『オレも蘭の声が聞きたかった』
「ウソ」
『いや、本当だって!』
「だって……新一、ずっと素っ気なくて……わたし……わたし……」

声が震えてしまうのが、自分でもわかる。

『蘭……』
「わたしばっかり、新一のこと好きみたい」
『オレも、オメーの事が好きだ!好きなんだ、蘭!』
「どうだか」
『そ、その……ごめん!オレは、その……オメーがチアガールやるって聞いて、まあオメーは可愛いし運動神経も良いから選ばれて不思議ねえのは分かるけど……男子生徒たちにオメーの足や胸元が見られるかと思うと、どうしても不愉快で……』

新一の必死な言い訳を聞いていると、悲しかった気持ちがどこかに行って、何だかおかしくなってきた。
それに……新一が焼き餅やいたんだってわかると、不思議と新一が可愛く思えてくる。

「新一って、心狭いのね」
『う゛……じ、自覚はある。すまない……』
「わたしね。新一の心が狭いのは、嫌じゃないよ。新一が他の男の人に見られたくないって思ってくれるのって、嬉しいもん」
『ら、蘭……』
「でも!不機嫌になって素っ気ない対応されるのは、すごく嫌!」
『わ、悪かった……』
「わたし、傷ついたんだからね!」
『申し訳ない……』
「許してあげる。でも、今回だけよ」
『……わかった……』

新一の声がすごく沈んでて、今度は何だか可哀想になって来た。

「でね、新一。チアガールは、ボレロとスパッツをつけることになったから」
『ああ。知ってる』
「え!?何で!?」
『いや、職員会議で決まったから』
「へえ。そうだったんだ……」
『ああ。ま、オメーなら来年も選ばれるだろうし、でも、男子生徒たちにオメーの生足見られる心配がなくなったから、オレもドーンと構えていられる』

新一の独占欲の強さに驚いたけど……それが嫌じゃないわたしも、結構重症かもしれない……。


ともあれ、新一だけでなく、京極先生も、機嫌を直したとのことで。
とりあえず、良かったのかな?



そもそも、職員会議に「チアガールの衣装の露出度を何とかすべきだ」と提案し、強硬に押したのが新一であったことを、わたしはずっと後になって知ることになる。



   ☆☆☆



体育祭の3日前、衣装が出来上がって来た。
ラストスパートの時期、家政科部は特別に、学校への泊まり込みが許されていたりする。

わたし達のブロック「鳳凰チーム」は、赤がチームカラー。
なので、赤を基調にして作られている。
ワンピース型の可愛い衣装だった。

わたし達はそれを試着する。


「すっごーい!可愛い!」
「あー!これにボレロはまだしも……スパッツ付なんて、耐えられな〜い!」

称賛の声に嘆きの声が混じる。
学校が買ってくれたボレロとスパッツは黒で……スパッツを履くと、正直ダサいと、わたしも思った。

でも。
一番可愛い姿は新一だけに見てもらえばいっかーと、心のどこかで思っている。

「せっかくだから、ボレロもスパッツもない状態で、写真撮ろうよ!」
「えー!?でも、怒られない?」
「だって、もったいないじゃ〜ん!でも、男子と外部に横流しは絶対禁止よ!先生たちにばれたらやばいからね!いい?」
「うん、わかった〜」

女が自分を飾るのは、基本的に、自分のため。
それにプラス、好きな男性に見てもらうと嬉しい。
その他大勢の男子たちに見せないのは、ま、いっかーって感じ。

わたしは新一からもらった携帯で自撮りした。
そしてさっそく、その写真を新一に送った。


その夜。

『あの写真、他のヤツ見てねえだろうな!』

新一からの電話第一声が、それだった。

「さあね〜。どうかしら〜」
『ら〜〜〜ん!』
「んもう。新一のほかは、女子だけだから」
『そ、そっか?』
「新一には特別に見せてあげるんだからね!」
『なあ。2人きりの時に、あの恰好してくれねえか?』
「もう!学校の衣装なのに!」
『だめか?あれ、返さなきゃいけねえのか?』
「ううん、チアガールの衣装はもらえるけど……」
『じゃ、頼むよ。オレ、オメーがチアガールで踊ってるとこも、遠目にしか見られねえんだからよ』


なんとなーく。
学園祭の後と同じことになるような、嫌な予感がしたけど……。
でもきっと、わたしは新一の願いを聞き入れるだろう。

これが、惚れた弱みってものなのかなー。




それこそ、電話で寝る前に会話をするくらいで、学校以外では新一と会えない日々が続き、体育祭当日。

よく晴れ渡った空の下、体育祭が開催された。


新一は今日、救護班にいて、養護教諭の先生の手助けをしている。


「先生!お願いします!」

わたしは保健室にクラスメートを連れて行った。

「ら……毛利!?怪我したのか!?」
「もー!違いますよ!わたしじゃなくて……」
「あ、ああ。わりぃ。中里、どうしたんだ?」
「急に眩暈がして……」
「10月だけど日差しは強くて暑い。熱中症かもな。水分は取ってるか?」

新一はてきぱきと対応する。

「それじゃ、わたしは……」

やらなきゃいけないことが沢山あるので、わたしは去って行った。
新一と一瞬視線が絡み合ったけど、お互いにすぐ目をそらした。

今日が終わったら、そしたら……。
その気持ちはきっと、お互いにあると思う。

泣いても笑っても、今日で今年の体育祭は終わりだから。



精一杯、走って。
組体操とか。
ダンスとか。

そして、圧巻の応援合戦。

各ブロック応援合戦の出し物は、祭りを参考にしたりして趣向を凝らしたもので。
その担当になった人たちもまた、睡眠不足の日々が続いていた位だ。


わたし達も、競技以外の時は、スタンドで踊って踊って踊って。



そして。


「優勝、青竜ブロック!」


力及ばず、みんなで泣いて。

そういう風にして、帝丹学園高等部1学年の体育祭は、幕を閉じた。


「中高一貫の催し物の筈だけど、中学校の頃はこんなに大変だって分かってなかったねえ」
「まあ、中学生に遅くまで色々させられないしね。来年再来年は、わたし達が中心になってやってかなきゃいけないから、もっと大変だよ」
「あー。いろいろ大変だったけど、楽しかった〜」
「うん。終わっちゃったねえ」
「そうねえ」

体育祭が終わった寂しさが、押し寄せる。

そして。
心のどこかで、新一と同級生だったら、一緒に体育祭に参加できたのにと、考えていた。
そしたらわたし、新一が競技に出ているときは精いっぱい応援したのに。
新一が応援団リーダーとかやったら、最高にカッコ良かっただろうに。

仕方がないことだけれど、そういうことを夢想する。

新一は、高等部の体育祭を経験しないまま、アメリカに行っちゃった。
中等部高等部合同で行われる体育祭だけど、中等部の頃はまだお客さんなんだよね。

新一も、高等部の体育祭、経験したかっただろうな……。
そしたらきっと、応援団とかリレー選手とかで、すごく活躍したんじゃないかって気がする。


新一は決してそうとは言わないけど、アメリカに行ったのは、わたしのためで……。
新一の帝丹学園高等部生活を奪ってしまったのは、わたしだって気がして仕方がない。


体育祭終了後は、片付けが遅くまであったあと、次の日は、お休み。
さすがに外泊する人は少ないし、中山先生の事件解決後、出入りがチェックされるようになったから、外泊届出しているのに門を出ていないと、逆に勘ぐられてしまう。

園子もわたしも、その日は電話で愛しい彼の声を聞くだけで、寮で大人しく過ごすことにした。


次の朝。
寮の朝の点呼が終わった後、そのまま寮で休んだり、学校に行ったり、街まで遊びに行ったり、皆、思い思いに過ごす。
わたしと園子は、林に踏み込み、職員寮まで行った。
裏口で園子と別れ、それぞれ愛しい男性の待つ部屋へ。


ドアを開けて中に踏み込むと、待ちかねたように新一から抱きしめられた。
一瞬、見つめ合って。
そのまま、どちらからともなく唇を求めあう。
お互いに舌を絡め合って。

いつも新一主導で行われていたことが、今夜はわたしの方も積極的になっている自覚は、あった。

口付けられたまま抱え上げられ、新一のベッドに下ろされた。
新一の唇が、のど元を這い、手が服の上から胸を揉む。

「あ……ん……」

自分でも信じられないくらい、甘い声が出る。

「蘭……」

新一の息が荒い。
もどかしそうにブラウスの前が開けられ、胸の下着が押し上げられる。

そして、胸の頂が新一の口に含まれ吸われる。

「はあん!」

その間に、新一の手の方は、わたしのスカートの裾から侵入している。

少しずつ衣服をはぎ取られ、少しずつ肌が露わになり、わたしの全身を新一の指と唇が這っていく。

いつの間にかわたしは生まれたままの姿となり、新一もまた生まれたままの姿になっていた。


新一がベッドサイドの引き出しを開け、避妊具を取り出す。
もどかしそうにそれをかぶせると、わたしの中に新一が入ってきた。
わたしのあそこは十分潤っていたけれど、久しぶりであるためか、その瞬間、痛みと圧迫感が襲う。

「あ……ああ……っ!」

わたしの眦から涙が一筋溢れて落ちた。

「ら、蘭!?きつかったか!?」

新一がわたしの顔を覗き込んで言った。
わたしは首を横に振る。

「新一と、こうやってることが、嬉しくて幸せなの……」

新一が目を丸くする。
そしてぎゅっとわたしを抱き締めた。

「オレも、幸せだよ……蘭……」

そして新一が腰を揺らす。
わたしの中を突き抜けるのは、肉体の快楽だけじゃない。
愛しさと胸の疼き。
甘い痛みが全身を走る。


彼がわたしの奥で脈動しわたしの上に崩れ落ちるのと、わたしが背中をそらして果てるのとは、ほぼ同時だった……。



そのまま続けて求められるかと思ったけれど、彼は優しく微笑み、わたしを抱き込んで横になった。

「新一……」
「ん?」
「新一と同級生だったら良かった……そしたら……」
「ああ。オレも、そう思うよ。でも、それは今更どうしようもねえし」
「うん……」
「なあ、蘭。チアガールの衣装、持って来てるよな?」
「え?う、うん……」
「着て見せてくれよ」
「ええっ!?今!?」
「ああ……だってオレ、オメーのチアガール姿、間近で見られなかったからよ」

た、確かにそうなんだけど……。
新一に見てもらえなくて残念という気持ちはあったけど。

仕方がないので、チアガールの衣装を取り出した。

「下着はつけなくていいだろ?」
「ええっ!?でも……」
「ここにいるのはオレとオメーだけなんだから」

素肌にこの衣装を着るのは、何だか恥ずかしい……。
でも結局、新一の言う通りにしてしまう。

一応透けないようになってるけど、チアガール衣装って、本当なら服の裏地になる生地で作っているから、ペラペラなんだよね……。
洗面所で衣装を着て、寝室に戻ると、新一がごくりと喉を鳴らしたのが聞こえた。

「すげ……確かにこれは、下着なしだと着られねえよなあ」

ハッと見ると、胸の形がくっきり。
いやああああ!

思わず逃げそうになったわたしだったけど、新一に捕まり、後ろから抱きすくめられる。
そして、服の上から胸をなぞられる。

「ひやっ!」
「すげ……もろに感触が伝わる……」
「あ……や……っ!」

超ミニでパンティを履いていないので、身をよじるとそれだけで大事なところが見えそうになり、わたしは慌てて裾を掴んだ。
けれど……。

新一にそのままベッドの上に押し倒され、足が大きく広げられる。

「すげーエロいカッコ……」
「やだあああっ!」

新一は両手でグッとわたしの足を押し広げると、足の間に屈みこみ、その場所を舌でなぶるように愛撫し始めた。

「やあっ!」

敏感な花芽をいじられて、あまりの刺激の強さにどうにかなってしまいそう。
わたしが朦朧としている間に、新一はまた新たな避妊具を装着したらしい。
わたしの中に、また入って来た。

下着なしでチアガールの衣装を着けたままのエッチなんて……。
お互い裸で抱き合うよりも恥ずかしくてたまらなかった。

でもやがて、羞恥心すらも飛んで行き、新一から与えらえる快楽の海にわたしは溺れていった。



   ☆☆☆



繰り返された情事に、わたしは疲れ果てて、グッタリしていた。
時折、新一の優しい口づけが降りてくる。


「飽きないように、我慢しようって思ってたけど、無理かも……」
「何だよ。その、飽きないようにって……」
「だって、みんな言うんだもん。エッチし過ぎるとその内飽きて、やらなくなってしまうって」
「はあ?みんなって、誰だよ!?」
「クラスメート」
「あのなあ。高1ですでに、飽きるほどやりまくってるってのも、問題じゃねえか?」
「そう?でも、わたし、結構新一とやりまくってる気がするんだけど」

わたしの言葉に、新一がグッと押し黙った。
ややあって、言う。

「まあその、前も言ったけどよ。一緒に暮らすようになったら、少しは落ち着くと思う」
「そっかなー」
「ああ……多分」

やや自信なさげな気がするのは、わたしの気のせい?

「でも……やり過ぎて飽きてセックスレスは、ぜってー、ない」
「そっちの答は、えらく自信ありげじゃない?」
「まあその、確かめた訳じゃねえけど、うちの親も40過ぎ、結婚して20年以上経ってるが、そっちは現役のようだし……オレも多分、結婚してからもずっと、毎晩、オメーを抱くと思う」
「そうなの?」
「こんな気持ちのいいコト、飽きる気がしねえ」
「……」


あんまりやり過ぎると飽きるのか飽きないのか、どっちが本当かなんて、分からないけれど。
飽きないためにわざわざ控えるのも何だかバカバカしい気がして……それに、新一が、「将来飽きないために控える」なんてことは、絶対しそうにないし。

「ねえ、新一。でもね、ひとつだけ、責任とって欲しいんだけど」
「は!?ま、まさか、蘭!?」

新一がガバッと起き上がった。

「わーった。いつ、おっちゃんのとこに挨拶に行けば……」
「さっきのプレイの所為で、チアガールの衣装、一部裂けちゃったの。せっかく、取っておこうと思ったのに……責任とってくれる!?」

チアガールの衣装の破れたところを指さしながら言うと、新一は顔を青くしたり白くしたりしていた。



(22)に続く


++++++++++++++++++++


<後書き>

あああああ。
今回も新一君変態道まっしぐら。

今時の高校体育祭って、どんなものか全然分からなくて。
今回の体育祭は、私の高校時代の体育祭を再現しました。
わたしの母校は、体育祭が一番盛り上がる行事でした。
選手にもならないしチアガールなんて選ばれたこともない私ですが、炊き出しだとか色々な協力はしていました。
同じ高校に行った妹は、私と違い可愛くスタイル良かったので、チアガールとかやってましたが。

いや、もう昔々なんで、今の実情に合ってないのであれば、申し訳ないです。


2,015年7月16日脱稿
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