月の光と日の光



byドミ



番外編・激情(2)永遠へと続く昼と夜



(注:このお話は、表の「月の光と日の光」(3)のラストシーンでカットされている2人の時間です。先に表から読む事をお勧めします)





新一は蘭を横抱きにしたまま2階の自室に入ると、蘭をそっとベッドに横たえた。
そのまま蘭の上に覆い被さって、きつく抱きしめ、口付ける。

息もつかせぬほどの深い深いキス――新一の舌は半ば強引に蘭の唇の間から入り込み、口の中を這い回る。

「ん、んんっ」

蘭がくぐもった声を出す。
それに構わず新一は、奥の方に逃げようとする蘭の舌を捉え、自分のそれを絡めてきた。

蘭が新一の腕から逃れるように身を捩る。
新一はやっと蘭の唇と舌を開放すると、やや不機嫌そうな声で言う。

「んだよ、逃げんなよ」
「・・・だって新一、痛いよ・・・」

蘭が目を少し潤ませながら訴えたため、ようやく新一は腕の力を緩める。

「わりぃ」
「新一、私、逃げたりなんかしないよ?だからね、あんまり乱暴な事しないで」

新一はそれに言葉では答えなかったが、抱きしめる腕の力も、口付けも、丁寧で優しいものへと変わった。

蘭はそっと息を吐く。
他の男など知らないし、知ろうとも思わないが、新一が蘭を抱く時はとても優しく扱ってくれている事は蘭にもよく判る。
新一がどれ程に蘭を大切に思っているのか、どれ程に蘭を愛してくれているのか、蘭は実感し、涙を零した。

「ら、蘭っ!?どうした、どこか痛くしたか!?」

新一が目敏く蘭の涙に気付き、声を掛けてくる。

「ううん、新一。違うの。ただ、嬉しいだけなの。新一の気持ちが伝わって来て、幸せなだけなの」
「本当に大丈夫か?」
「うん・・・。ごめんね」
「おめーが謝る事なんて、何もねーよ」
「新一は優しいね」
「優しい?俺がか?」
「うん」
「蘭。それは違う・・・俺は・・・」

蘭は続きの言葉を聞こうとしたが、新一の愛撫に我を忘れ、それ以上聞く事は出来なかった。

「あ・・・っ、あんん、新一、新一」
「蘭。おめーは俺のもんだよ。そして俺はおめーだけのもんだ。忘れるなよ」

幾度も肌を重ね合った2人の体は、お互いにしっくりと馴染んできている。
新一は蘭の感じ易いところを唇で指で愛撫しながら、所々肌を強く吸って紅い印を残していく。

「あん・・・新一、痕を残さないで・・・」
「やだ。おめーは俺のもんだって、みんなに見せ付けねーとな」
「でもお父さんたちが・・・こうなってる事知っていても、痕を残してたら何て言うか・・・」
「わーったよ・・・見えるとこには付けねーから・・・」

そう言って新一は、確かに表から見えないところ・・・胸や腹部、太腿の内側などに紅い印を残していく。
蘭は、見えない所に印を付けて何の役に立つんだろうと思ったけれども、それは口に出さないまま、すぐに忘れてしまった。

新一が蘭の胸を揉みしだき、頂の赤く色付いた突起を指の腹で擦る。

「んはぁ・・・し、新一・・・あっ」
「おめーは誰にも渡さねーよ。俺だけのもんだ」

新一は、既に硬く尖っている蘭の乳首を口に含むと、舌でこねくり回すように愛撫し、強く吸った。

「んああああっっ!!」

体の中を電流が走ったように感じ、蘭はのけぞって声を上げる。
蘭の胸を口と手で攻めながら、新一のもう一方の手は、蘭の引き締まった腹部をさすり、蘭の秘められた部分に到達する。
蘭の淡い繁みの奥は、既に湿り気を帯びていた。

新一は、蘭の秘所が充分に濡れている事を確認すると、いつもに比べたらやや性急に、蘭の中に入って来た。

「あっあっ・・・!!」

新一との秘め事に慣れた蘭の体は、一気に貫いてくる新一のものをスムーズに受け入れる。
新一のものが根元まで蘭の中に入ると、新一はちょっとの間、動きを止めた。

「新一・・・」

新一と1つになっている喜びに、蘭は涙を流す。

「蘭、ごめん。ちょっと急ぎ過ぎたか?痛かったか?」

新一が心配そうに問うてくる。

「ううん。新一が私の中にいる事が嬉しいの」
「蘭・・・愛してるよ。誰よりも愛してる。おめーだけを愛してる」

新一は蘭の中に入ったまま、蘭を抱きしめ、深く口付けて来た。
蘭は新一の首に腕をまわして抱きつき、新一の舌に自分の舌を絡ませて応える。


新一はゆるく腰を動かし始めた。
段々その動きが速く激しくなって行く。
新一が抜き挿しを繰り返すと、淫靡な水音と共に、蘭の体中を快感が駆け抜けた。

「んんっ・・・新一、・・・はあっ・・・あっあっ」

快楽の波に呑まれそうになる一瞬、蘭はふと違和感を感じたが、それが何か判らないままに思考力が弾け飛んでしまう。

蘭が最初のクライマックスを迎えた時、新一も上り詰めたらしく、動きを止める。
蘭の中で新一のものがビクビクと動き、熱い液体が蘭の中に放たれる。

新一が大きく息をしながら、繋がったままに蘭の上で力を抜いて覆い被さって来た。

「新一・・・」
「ごめん。重いか?」
「ううん・・・」

正直、弛緩した新一の体は重かったけれど、蘭はそのまま新一を受け止めていたくて、否定の言葉を口にする。
蘭の中でまだ怒張したままの新一のそれがビクンビクンと脈打っていた。


やがて新一が体を起こし、蘭の中に入ったまま、再び緩やかに腰を動かし始めた。
蘭の中にある新一のものが、再び硬く大きくなってきている。

「え?し、新一?」
「抜かずの2回戦・・・てやつ・・・」

蘭がその言葉を聞いたのは初めての事だったが、瞬時に意味を悟って真っ赤になる。

「蘭。出来る事なら・・・このままおめーと・・・ずっと繋がっていたい・・・すげー気持ち良いけど・・・それだけじゃ・・・ねーんだ・・・」
「んんっ・・・新一・・・ああっ」

蘭は新一の言葉の意味を問おうとしたが、再び快楽の波に呑まれ、訊く事が出来なかった。

そして再び2人は絶頂へと上り詰める。



2度のクライマックスで、新一と自分の体液にまみれた蘭の秘所を、新一がティッシュで丁寧に拭う。

「し、新一、そんな事自分でやるからっ・・・」

蘭が恥ずかしさで真っ赤になりながら新一を止めようとする。
が、新たに与えられた刺激に思わず「あんっ!」と声を上げた。
新一の手は、蘭の秘所から零れ出た液体を拭っていたかと思うと、今度は蘭の突起を弄り始めたのだった。

「や、やだ新一、そんなとこっ!」

焦る蘭に構わず、新一は蘭の豆を探り出してぺろっと舐める。

「やあああああああっっ!」

快感とも苦痛ともつかないあまりに強い刺激に蘭は仰け反って声を上げる。
蘭は涙を零しながら、下の方を攻めたてる新一の髪の毛を掴むが、新一の動きは止まない。
新一に貫かれる時とはまた違った快感に、蘭は身悶える。

やがて頭の中がスパークし、痙攣と共に大きな快楽の波が蘭を襲う。

「あっはっ・・・!あああああああんんっっ!!」

蘭はまたもや絶頂に達し、仰け反って声を上げた後、ぐったりとなった。



新一は蘭の体を抱き寄せ、蘭の耳に熱い息と共に囁く。

「蘭、すっげー。最高だよ。おめーの体。こんなに感度が良くて」
「うっっ馬鹿っ。新一が私をこんな体にしてしまったんじゃない!」

暗にいやらしいと新一に言われたような気がして、蘭は涙ぐんで抗議する。
新一を攻めるのは理不尽だと自分でも判っているが、こんな風に反応するのは新一に対してだけなのだ。
ただの淫乱だと思われるのはとても悲しい。

「蘭、泣くなよ。判ってるって。おめーが俺の事思ってくれてっから、感じてくれてるんだって事」

新一が優しく言って、蘭の唇に触れるだけの優しいキスをする。

「愛し合う2人がこうやって抱き合う毎に、段々感度が高まって行くのは当たり前のことなんだからさ。蘭がそれだけ俺の事思ってくれて受け入れてくれてるんだって思えて、俺、すっげー嬉しいんだからよ」
「新一・・・」
「俺の方もすっげー気持ち良いんだけどよ・・・。蘭を愛してるから・・・、惚れた女を抱くからこそ、感じるわけだからさ・・・」

新一の言葉が嬉しくて、蘭は再び涙を零しながらもニッコリと笑う。

「おめー、そんな顔すんなよ。またやりたくなっちまうだろうが」
「もう、新一の馬鹿っ!助平っっ!」
「そう、俺は助平なの。蘭限定でな」

蘭は真っ赤になる。

新一が再び蘭に口付ける。
深く甘いキスに、蘭は陶然となっていく。

新一は蘭の腰に手を掛けると、蘭の体をくるりと回転させて、うつ伏せにさせる。

「新一?」
「蘭、膝を立てて・・・」

蘭は訳が判らないながらも、新一の言う通りにする。
お尻を突き出した格好になって、羞恥心を刺激される。
この格好だと、新一の顔が見えないため、尚更だ。

新一が後ろから蘭の足の間に入り込んだ気配がする。
背後から伸びてきた手が、蘭の胸を鷲掴みにして揉み始める。

「あ、ああんん」

新一が蘭のうなじに口付け、その唇の感触が、背中を辿って下の方に降りていく。
既に全身余すところなく新一の目に何度もさらしたのだが、こうやって別の角度から見られていると思うと、恥ずかしくなってくる。
新一の唇が、お尻の丘に口付け、指が背後から蘭の秘所に触れてくる。
恥ずかしさと共に、快感が込み上げてきて、蘭の秘所はまた湿り気を帯びてきていた。

新一の怒張したものが、後ろから蘭の秘所にあてがわれ、一気に入って来た。

「うっ・・・うあああんんっ」

蘭は思わず声を上げる。
新一のものが蘭の中にいつもと違った角度から入って来て、強い刺激と快感を感じると同時に、蘭のあそこは思わず強く新一のものを締め付けてしまう。

「っくっ、蘭・・・!そんなに強く・・・っく・・・締め付けると・・・、先に・・・出ちまうぞ」

蘭は、男女の営みにこんな体位がある事も知らなかったので、半ばパニックになりかけていた。

「し、新一っっ、こんな・・・のって、・・・んああああっっ・・・変だよ・・・」

新一が腰を動かし始めると、大きな快感の波が蘭を襲って、蘭は何も考えられなくなってしまう。
新一のものが、強く深く、何度も蘭の中を突いてくる。

「うっ、ふあああああん、新一いっ、あああああんんっ!」

蘭の手はシーツを掴み、頭は仰け反って甘い声を上げる。

「蘭、蘭っっ」

新一の動きが激しさを増す。

「んああああああああああああっっ!!」

やがてひときわ高い声を上げて、蘭は果て、新一のものを強く締め付ける。
新一も動きを止め、蘭の奥深くに自身を強く押し付ける。
怒張した新一のものからまた熱い液が蘭の奥深くに放たれたのを、蘭は感じた。



「もう、新一、何であんな格好・・・!」

暫くして落ち着いた蘭が、新一に抱きしめられながら、抗議の声を上げる。

「え?蘭、知らなかったのか?あれは後背位と言って、ちゃんとした男女の交わりの体位の1つだよ。人間以外はほとんどあれだし」
「え?そ、そうなの?」
「まあ色んなやり方があっからな。おめーとはこの先も長い付き合いなんだから、少しずつ教えてやるよ」
「教えるって、・・・何でそんなに色々知ってんのよ?」
「だーかーらー、俺はちゃんと本を読んで勉強してんの!何ならおめーも2、3冊借りてくか?」

蘭は真っ赤になってプルプルと首を横に振る。

この名探偵は、色々な事を書物やインターネット、テレビ番組などで勉強しているのだが、その中にあっち方面も含まれているらしい。

「いいよ、私は」
「別に際物じゃなくて、真面目な本だよ。おめーはあんまり無知過ぎっから、ちっとは勉強した方が良いんじゃねーか?」
「・・・だって、新一が教えてくれるんでしょう。だからいい」

蘭の言葉に新一は目を丸くした後、赤くなった。

だって、と蘭は心の中で思う。

新一以外とは、絶対にこんな事にはならない。
だから、全部、何もかもを新一に教えて貰えば良い。


新一の手がまた蘭の肌を撫で始める。

「それじゃあ、そろそろレッスン再開といきますか」
「もう、馬鹿っ!」

新一のからかうような声音に、蘭は憮然として、頬を膨らませる。

「膨れた顔も可愛いけど、どうせなら笑った顔を見せて欲しいな」

そう言って新一は蘭に口付ける。
少しばかり怒っていた筈なのに、新一の甘いキスと愛撫に、蘭は陶然となり、思考力がなくなっていく・・・。



  ☆☆☆



まだ日が中天にさしかかる前から何度も肌を重ね合った新一と蘭――今は大分傾いた陽射しが部屋の中をオレンジ色に照らす中、2人抱き合ったまま、うとうととまどろんでいた。
何度もの行為に、お互いの汗と体液にまみれて、体中がベタベタしている。
蘭は、お風呂に入りたいな、と半覚醒でぼんやりした頭で考える。

ティッシュを取り、自分の太腿をつたう新一と自分のものが交じり合った体液を拭おうとして、ふとある事に気付き、蘭は一気に目が覚める。

「新一・・・ねえ新一、起きてよ」

まだまどろんでいる新一に、蘭が震える声を掛ける。

「んあ?蘭、どうした?」
「新一、今日は全然避妊してないよね・・・」

今まで――それこそ、新一が初めて蘭を抱いた時から、新一は必ず事の最初からしっかりきちんと嵌めていた。
それが今日は、最初から装着しようともせず、蘭の中に熱いものを何度でも放出しているのだった。

「中で・・・出しちゃったよね・・・」

蘭が泣きそうに震える声で言う。

「蘭。『中出ししない』ってのは、全く避妊にはならねーんだぜ」
「新一・・・私が言ってるのはそんな事じゃないよ・・・」

今日はそんな事を考える余裕もなかったのかも知れない。
けれど、今までどんな時も避妊を欠かす事のなかった新一が、今日はすっかり忘れている様子なのが、蘭は悲しかった。
現実問題として、もし子供が出来たらどうなるんだろうという恐怖感も頭をもたげてくる。
知らず蘭の頬を大粒の涙が濡らしていく。

新一は慌てたように身を起こした。

「蘭、大丈夫だから、泣くなって」
「新一、だって・・・もし子供が出来てたら・・・」

自分たちの気持ちと快楽を優先して避妊を思いつかなかった事に、蘭はすごく情けなく後ろめたい気持ちになっていた。

「蘭、だって俺、子供が出来たって良いって思ってっから」

新一の口から出た言葉が思いも掛けないものだったので、蘭は驚いて目を見張る。

「え?子供が出来ても良いって・・・新一?」
「避妊するのは、今の時点で子供を望まねーからだろ。俺は、今、蘭との子供ができたって良いって思ってっから」
「新一、それって・・・」
「もしそうなったら、おっちゃんたちは怒るだろうけどよ。まあ一発どころじゃなく殴られるくれーの事は覚悟しなくちゃなんねーだろうけどな」
「新一・・・。もしもの時には、責任取ってくれるつもりなの?」
「責任取るんじゃねーよ。俺自身が蘭とずっと一緒に居たいって思ってっからさ。だからもしそうなったら、俺にとっちゃ、もっけの幸いかな?」

悪戯っぽく・・・しかし真剣な眼差しで言う新一の言葉に、蘭は胸がつまる。

「だから、一生傍にいるって、ずっとおめーだけだって、そういう事。俺が他の女に心奪われるなんて、金輪際有り得ねー事なんだからよ、もう変な事考えて不安に思ったりするんじゃねーぞ」
「新一・・・」

蘭は胸がいっぱいになって、それ以上何も言う事が出来なかった。
新一が蘭をじっと見つめる。
その深い深い瞳の色に、蘭は溺れそうになる。
新一が蘭を抱き寄せ、目蓋に、額に、頬に、唇に、優しいキスを落としていく。
手の平が胸の膨らみを包み、揉みしだく。

今日何度となく燃え上がった蘭の体が再び熱を持ち、皮膚が赤く染まり、やがて喘ぎ声がその唇から漏れ出してくる。



  ☆☆☆



今日は幾度肌を重ねたのか、もう既にわからない。
蘭がふと気付くと、いつの間にか窓から月の光が射し込んでいる。

もし新一が他の女性に気持ちを移したら・・・その不安からここ数日おかしくなっていた蘭だったが、今は、新一が蘭だけを愛し続けてくれると信じる事が出来、満ち足りた思いだった。
ふと、新一はそういった不安に駆られる事はないのだろうかと疑問に思う。

「ねえ新一」
「ん?」
「もし、もしもよ・・・もし私が・・・」
「何?」
「もし私が他の男の人と・・・こんな事したら・・・新一は」
「なんだって!?」

新一が体を起こし、蘭の両肩を掴む。

「痛っ!!」
「あ、わ、わりぃ」

新一は蘭の肩を掴んでいた手を緩める。

「おめー、他の男となんて・・・」
「・・・馬鹿。新一以外の男の人となんて、絶対嫌に決まってるでしょ。・・・ただ、もし、もしね・・・そんな事になったら、新一に嫌われるのかなって・・・」
「蘭・・・おめーな・・・例え話でも心臓にわりぃぞ。言っとくけどな、想像したくもねーが、そんな事がもしあったとしても、俺がおめーを嫌うなんて事、金輪際有り得ねーよ。まあ、おめーの肌を見たり触れたりした男がどうなるか、命の保障はしねーけどな」

蘭は目を見開く。
新一の口調と瞳は真剣で、冗談などではない事がよく判る。
新一の目の奥に、狂気にも似た光を見つけ、蘭は・・・何故だか安心してしまった。

「おい蘭、何笑ってんだ!?」

憮然とした様に新一が問うてくる。

「ん、だって・・・こんな独占欲を持って狂うような気持ちになっちゃうの、私だけかと思ってたんだもん。でも案外、新一もそうなのかもと思ったら、何だか安心しちゃった」

蘭がぺろっと舌を出して笑う。
新一が蘭を抱き絞めて来る。
そのきつい程の力に蘭は戸惑う。

「新一?」
「蘭、俺は・・・。おめーから見たらいつも自信たっぷりに見えるかも知んねーけどよ・・・。おめーの事に関してだけは、いつだって自信なんかねえ。おめーが俺から去ったりしたら、俺はどうなるか自分でもわかんねーよ」
「新一・・・」
「蘭は俺が優しいって言ったけど、それは違う。俺は、おめーに嫌われたくねーから、おめーを失いたくねーから、絶対手放したくねーから、だから・・・。それが優しいように見えるだけで、本当は違う。裏も何にもなく、本当に優しいのは、おめーの方だよ」

新一が蘭の唇に触れるだけの優しいキスを落とす。

『新一。やっぱり新一は優しいよ。新一がどこまでも優しく私を大切にしてくれるのは、嫌われたくないって言う計算だけではないって、ちゃんと判るもの。新一がそれだけ私のこと愛してくれてるんだって、ちゃんと判るもの。・・・でも私、そんな新一の事、ちゃんと信じてなかったんだね』

「ごめんね・・・」

謝罪の言葉だけを口に出して、涙を一滴流した蘭に、新一は戸惑った顔をする。

「蘭、なんで謝るんだ?」
「ううん、何でもないの・・・ただ、新一の愛の大きさを今まで判ってなかったなあって思って・・・」
「蘭、俺は・・・」
「新一。私ね、絶対新一以外の男の人に、心も体も許す事はない。それは信じてて」
「蘭。俺だって、おめーを信じてねえ訳じゃない。ただ、他の男たちが、どんどん綺麗になって行くおめーをどんな目で見てるか判るだけに、不安になる事あんだよ。おめーって無防備だしさ」

無防備と言われると、蘭は不満だったが、新一が蘭を覗きこむ深い瞳の色に捕われて、何も言い返せなくなる。



新一は蘭に口付けながら、手をゆっくりと胸に這わせ始めた。
蘭の太腿に当たっている新一のものが、また大きく硬くなっている。

「蘭・・・」

新一の手と唇が、蘭の体を辿り始める。

「んあっ、新一・・・」
「蘭、今回の事で、蘭がどれ程俺を思ってくれてるか、ちゃんと判ったからな・・・」
「あっんんっっ」
「だから、ちゃんと蘭の事信じてるよ。でも・・・焼き餅は止みそうにねえけどよ」

苦笑して言った新一の言葉に、蘭は驚く。

今まで新一がはっきりそうだと明言しなかったため、時折新一が垣間見せる不可解な態度が実は独占欲から来る嫉妬だったとは、蘭は気付いていなかったのだ。

新一の独占欲――それすらも今は何だか心地良い。

やがてまた襲ってくる快楽の波に、蘭は素直に身を預ける。



  ☆☆☆



既に全身が痺れて、快感を感じているのかどうかさえ判らなくなっている。
頭は朦朧として、何も考えられない。
それでも何度も何度もお互いを求め合い、その存在を確かめる。
何度もの絶頂を迎え、愛し合っているという実感で満ち足りる。



蘭は、この先一生、新一と2人寄り添って行くのだと、永遠に離れる事はないのだと、初めて実感し、幸福感に包まれる。




やがて月が西の空へと傾き、空が白み始める頃、新一と蘭はしっかり抱き合い、繋がり合ったまま、深い眠りに落ちて行った。






初めて結ばれた時以上に、硬い絆と揺ぎ無い信頼感で結ばれ、気が遠くなるほどの幸福感に包まれる――

新一と蘭にとって、今日はそんな昼と夜だった。







Fin.



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