同窓会



byドミ



<(注)この話には、いわゆるエッチシーンはありません。けれど内容が表に置けないため、裏に持って来ました>



「え?法子なの?垢抜けちゃって」
「よっく言うよ、もうオバサンだって。そう言う佳織も綺麗にしちゃって」
「まあ、女は化粧で化けるからねえ、でも、基本的には変わってないよねえ」
「そう、むしろ男子!結構誰が誰かわかんない」
「言えてる〜〜。でも流石にお互い老けちゃったねー」
「もう帝丹高校卒業して20年になるんだもんね」

今日は、喫茶店を借り切っての帝丹高校の同窓会が行われている。
全校規模や学年単位の大きなものではなく、集まったのは21年前の「2年B組」である。

卒業して20年が経った今日、誰かが音頭を取って、懐かしい「2年B組」のメンバーで集まったのだ。

その当時、妙に結束が固かったクラス。
30代後半は仕事も子育ても忙しい世代なので、全員は無理だったが、それでもクラスの半数以上が集まっている。



「法子、佳織、まどか、お久〜〜〜」
「園子!」

2年B組である意味中心メンバーの1人だった鈴木園子が登場してきた。
公私共に忙しい最中を駆け付けて来たのである。
流石に鈴木財閥の次期会長として活躍する立場だけに、園子は凛と美しく貫禄がある婦人になっていた。

「園子、忙しいんでしょ?」
「へへ、まあね。でも、人を如何に使うかが問われる立場でもあるからねー、時間のやり繰り位出来なくちゃいけないのよ」
「そういえば、女子で苗字が変わってないのって、園子と、後何人かいたっけ。もっとも園子の場合、旦那さんの方が名前変わったんだよね〜」
「まあ、結局姉貴が嫁入って私が跡取りの立場だし。一応法律では、男女同権でどっちの姓を名乗っても良い事になってるけど、訳でもなければ、なかなか『女の方の姓を名乗る』ってのは、現状では難しいよ」
「そう言えば、2年B組のクラスメート同士の結婚って、結局蘭たちだけだったね」
「まあ、あの2人はもう昔から夫婦してたから」
「あ、噂の主の登場よ」

工藤(旧姓毛利)蘭が姿を現した。

高校生の頃から清楚な美しさを誇っていたが、清楚さはそのままに一段と艶やかに美しくなったその姿に、男子からも女子からも溜息が漏れる。

「蘭、新一くんは?」
「また例によって事件よ。終わり次第駆け付けるって言ってた」
「あやつも相変わらずよねえ」
「ふふっ、そうね」
「蘭、久し振り〜」
「元気そうね〜」
「佳織、法子、まどか、お久し振り」
「高校時代より更に美貌に磨きがかかったわね〜」
「え〜、そんな事無いよ〜」
「工藤くんにしっかり愛されてんでしょ〜?」

旧クラスメートのからかいに、蘭は真っ赤になった。

「なんか、あんたたちって・・・ホント、凄いわ」
「まだ『幼馴染』って言い張ってた時からラブラブで、いまだにラブラブな訳〜?」
「私なんてさ〜、今の旦那と出会ってからまだ10年位なのに、もうお互い空気みたいで、ときめきも何もないよ〜」
「そうそう、私のとこも似たようなもんだよ」

蘭はまだ赤くなっている。

「蘭のとこってさ、1人目の子供産んだの早かったよね?」
「うん、まあ結婚が早かったからね。上の子が今日帝丹高校の卒業式だったの」
「そっかー、2世は私たちの後輩かあ」
「工藤くんのお母さんと蘭の両親も、帝丹の卒業生だったよね、親子3代帝丹に通ったんだ」
「それにしても蘭、子供を2人育てながら大学と専門学校に通って会社で秘所勤めした後、『工藤探偵事務所』のマネージャーになったんだよね」
「おまけに空手のインストラクターをして、帝丹高校空手部のコーチにもなってんでしょ?」
「凄いねー」
「そんな事・・・私は、私に出来る形で『探偵』工藤新一を支えたかったの。空手も続けたかったし、私って欲張りなのよ」
「でも蘭、それを全部実現するところが凄いなって思うよ」

最初はまともだった女子たちの会話は、既婚者が多い者同士の井戸端会議らしく(?)猥談へと突入して行く。

「でも流石に、40近くにもなると、結婚生活も淡白になるよね〜」
「そうそ、うちなんかさ〜、2人目の子供出来た後は殆どセックスレスよ〜」
「うちも結婚して何年か経ったら、もう全然!」
「こっちは花の盛りなのにさ〜、ちょっと寂しい時あるよ」
「そう?私は下手に求められても今更うざくてさ〜、『もう、1人で処理しといて!』な気持ちの時あるよ」
「まあ、新婚の頃からしたら、回数は減るよね〜、当たり前だけど」
「1回位すればいい方かな?ね、蘭のとこは?」
「え?私のところ?」

話題に付いて行けず、目が点になっていた蘭は、自分に話が振られて慌てる。

「夜の営みは、どの位?」

流石に天然の蘭も、その位の意味はわかっていた。

「え、えっと・・・1、2回かな・・・新婚の頃は4、5回くらいが当たり前だったけど、流石に最近ではそこまでは・・・」

蘭は赤くなりながらも律儀に答える。

「まあ、年が年だし、結婚して20年も経ってるし、その位が妥当よね」
「でも、普通からしたら、結構きちんと性生活あってる方だよね〜、やっぱラブラブね〜」
「普通は週末だけ、下手したらそれも無いから」
「あ、でも、新一が事件で居ない時とか、私が『あの日』で出来ない事もあるよ。その分、帰って来た時なんかは3回も4回も求められてしまったりするけど・・・」

蘭の言葉に、座は一瞬静まり返り、蘭はきょとんとする。

「ね、ねえ、蘭、もしかして・・・」
「ひょっとしたら・・・『今は1、2回、新婚の頃は4、5回』って・・・」
「まさかもしや・・・週にじゃなくて・・・1晩でって事?」

女子たちの恐る恐るという感じでの質問に、蘭はきょとんとしたまま、あっけらかんと答える。

「そうだよ?」
「「「「ええええええええ〜〜〜〜〜〜〜〜っっっ!!!!!」」」」

女子たちの絶叫が、喫茶店を揺るがした・・・。



  ☆☆☆



事件が終わった工藤新一が駆けつけたとき、自分の妻である蘭も含め、女子全員から真っ赤な顔で見られ、解けない謎に苦しむ事になる。
何人かは、思わず新一の股間に目が行ってしまい、慌てて目を逸らしていた。
日本警察の救世主となって20年以上が経つ工藤新一も、流石に女たちの猥談の行方までは判らなかった。

「工藤くん、全然くたびれた様子無くて、ダンディよね〜」
「それにしても、探偵として日々忙しい仕事をこなしてさ・・・夜もお盛んだなんて・・・」
「しかもその相手が蘭一筋ってのもまた、凄いよね〜」
「あの位の男だったら、その気になれば遊ぶ女にだって事欠かないと思うけど、多分・・・」
「うん・・・きっと、彼の事だから蘭以外の女とは経験なさそうよね・・・」


新一は片隅で小さくなっている男子たちの輪に入る。

「どうしたんだ、みんな」
「どうしたもこうしたも・・・オバサンパワーの凄まじさに参ってるのさ」
「家では女房に尻に敷かれ、ここでも女子のパワーに小さくなってるとは・・・」
「ああ、高校時代が懐かしい」
「工藤よ・・・おめーも毛利の尻に敷かれてんのか?」
「・・・さあ・・・蘭には敵わねーし、蘭のおねだりには逆らえねーから、それが尻に敷かれるということなら、そうかもな」

新一が女子の輪に入っている蘭を愛しそうに見詰める。

「おいおいおい・・・幼馴染で30年以上毛利一筋なんだろ?」
「それでも見飽きねーのかよ?」
「ああ?蘭に対して一生『飽きる』なんてことは有り得ねーよ」
「ははは・・・」
「やっぱ『伝説の夫婦』だな」
「何だよその伝説って?」
「おめーらは既に帝丹高校の伝説になってんだよ。それも、『伝説の恋人』じゃなくて『伝説の夫婦』ってとこがすげーよな」



  ☆☆☆



「工藤くん、程ほどにね」
「蘭を壊しちゃ駄目よ」

同窓会が終わって別れ際、新一は旧クラスメートの女子達からからかい混じりの声を掛けられる。

「蘭、何かあったのか?」
「ううん、何もないよ・・・」

蘭は赤くなって答える。
蘭にとって、「普通の夫婦は毎晩営むものではない」と今日知った事は、かなりのカルチャーショックであった。

「今日は、米花シティビルに部屋を取ってるぜ。たまには他所に泊まるのも良いだろ?」

子供たちも既に手を離れる位に大きくなっている。
それに加え、自立心旺盛な子供達である。
別に1晩両親が留守にする位どうって事はない。
蘭は赤くなりながらも、新一に身を寄せる。

『私って・・・普通では考えられない超絶スケベなのかしら?新一も毎晩求めてくるけど、私だってそれを待ってるんだもん・・・』

新一によって甘く酔わされる夜は、蘭にとっても不可欠のものであった。
そして新一も知らない。
普通の夫婦の夜の営みが「毎晩」ではないという事を。



高校生の頃から現役で「日本警察の救世主」である男は、夫婦生活も人並みではなかった。







Fin.


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