誰にも内緒



byドミ



(5)内緒のホワイトデー



わたしは、帝丹高校の音楽教師・毛利蘭。

帝丹高校2年生でわたしの教え子である工藤新一と、誰にも内緒で、こっそり、お付き合いしている。


ううん。
幼馴染で親友で、帝丹高校国語教師である鈴木園子にだけは、新一とお付き合いしている事を、打ち明けていた。


「あ、蘭。その指輪、はめてるんだ?」
「うん。フリーと勘違いさせるのも、問題だって思ったから」

今年の初めに、新一から貰った「エンゲージリング」を、わたしは、今迄、チェーンにつけて首にかけていた。
何故なら、どこから、新一との「内緒の関係」がばれるかもしれないという怖さがあったから。

でも、今日から思いきって、左手の薬指にはめる事にした。
わたしには、将来を誓い合った恋人がいる。
その事は、公にして置きたかったから。

新一からも、「周りの男に、蘭がフリーだと勘違いさせるのは罪だ」と言われてしまったしね。
同僚の斉藤先生に迫られた時は、ほとほと困ったけれど、元はと言えば、わたしが恋人持ちだって事をきちんと伝えてなかった事も一因だったと思うし。

教え子である新一と恋仲である事は、公に出来ない。
でも、わたしに恋人がいる事は、将来を誓っている仲である事は、公にしたい。


だから。
わたしは、左手の薬指に、新一から贈られた指輪を、はめた。


「ねえ、ところで、蘭。ちゃんと避妊、してるの?」

園子が声を潜めて聞いて来て。
わたしは、真っ赤になった。

「ななな、何て事言うのよ、園子!?」
「わたしは、真面目に聞いてんのよ、蘭。だってさー。2人とも真剣だって言っても、新一君ってまだ高校生でしょ?今、子供が出来たら、色々、厳しいと思うよ。実際、そういう関係なんだし、可能性、低くはないでしょ?」
「う、うん……実はね……」


わたしと新一がそういう関係になったのは、クリスマスイブの夜。
わたしが、新一の家まで押し掛けて行って、そして、迫ったからだけど。
一旦、そういう関係になると、新一は、機会さえあればわたしを抱きたがるようになった。

教師と生徒という関係で、ろくにデートも出来なかった所為もあるけれど。
初夏に恋人同士となってから暫くは、たまにキスやハグをする程度の関係で。

その頃のわたしは、正直言って、不安だった。
女で、処女であるわたしは、セックスの感覚がよく分からなかったし、そういう関係を焦っていた訳ではないけれど。
新一は、本当にわたしの事が好きなのか。
ただの、年上の女性に対しての、憧れめいた気持ちに過ぎないのではないだろうか。
そういう風に、悩んでしまっていた。

新一と付き合い始めた時、唯一、それを打ち明けていた園子に、わたしのその不安をこぼしてしまうと。
園子は、
『新一君が蘭に対して、そういう欲望を持ってないなんて、有り得ないって。ヤツはきっと、我慢してるだけよ』
と大笑いした。
わたしは、そんな事はないだろうと思っていたけど。
後になってみると、園子の言った事が正しかったって、分かったんだけどね。


『確か、ヤツは一軒家に1人暮らしだって、言ってたよね?何かのイベントがあったらさ、新一君ちに押しかけて、迫ったら?絶対、堕ちるよ』
『そ、そんなハシタナイ事、出来ないよ!』

けれどわたしは結局、「そんなハシタナイ」事を、やったのだった。

未経験だったし、別にセックスへの憧れがあった訳じゃないけど、大好きな新一に抱いて欲しい気持ちは、あった。
そういう欲望がすごい年頃の筈なのに、迫って来ない新一の事が、不安でもあった。
新一の誕生日もわたしの誕生日も、とっくに過ぎてしまっていたから、次の「恋人同士のイベント」と言えば、クリスマス。
わたしは新一の家に行き、そして……わたし達は、結ばれた。


わたしは、新一の家に行く前に、妊娠の可能性を考えていた。
そりゃ、新一の子供を授かるのだったら、どんな事をしてでも産みたいけれど。
そして、新一が、妊娠したわたしから離れるような薄情な男だとも思ってないけど。
でも、まだ高校生の新一に、父親という重責を負わせるのは、嫌だし。
かと言って、シングルマザーになるのは、子供に負担を強いる事にもなりかねない。
それに、教師の場合、産休や育休の制度は充実しているけれど、シングルマザーになる宣言をしたらその時点で、退職勧告されるだろう。
親子して路頭に迷ってしまう。

新一に女性体験があるかどうかは分からなかったけど、少なくとも、わたしと恋人同士になってから後に、他の女の子とどうこうなんて事はしてないだろうって、信用はしてたし。
となると、避妊具を持っていないかもしれない。
だからと言って、わたしが避妊具を持参して彼に渡すのも、すごく憚られるような気がして。

結局わたしは、女医さんがいる婦人科の門を叩いて、ピル=経口避妊薬を処方してもらう事にしたのだった。


新一には何も告げないまま、今も経口避妊薬を続けている。


「……なるほど。でも、蘭。それって、新一君を甘やかし過ぎじゃない?」
「そんな問題じゃないよ、園子。新しく授かるかもしれない命への責任は、男女共にあるんだから。今、子供が出来たら困るなら、女性側だってきちんと考えなきゃ」

ピルも今は、副作用が少ないものが出ているし。
わたしは幸い、殆ど副作用が出る事もなく、今迄過ごして来ている。

「ま、良いけどさあ。蘭、新一君とキチンと話をしなきゃダメだよ。男性はどうしても、妊娠の可能性なんて、頭で考えても、実感出来ないんだからさあ」
「う、うん……」


わたしは、複雑な気分で、音楽室に向かった。
入試もひと段落している為、放課後、音楽大学に行く為の練習に来る学生も、今はいない。

放課後の今、音楽室に向かっているのは、わたしの家には電子ピアノしかないので、ここのピアノで練習させて貰う為と、新年度の授業での資料作りとか、それなりに、色々仕事があるのだ。

ドアを開けると、椅子に座っている生徒がいるのに気付いた。


「……工藤君。どうしたの?」
「会いに来たんだよ、蘭に」

真っ直ぐそう言われると、とても嬉しかったけれど。
人に見られたらと、どうしても気になってしまう。

「誰かに見られたら、どうするの?」
「音楽の実技が散々だから、特別補講だとでも言えば良いだろ?」

そう言いながら、新一がわたしに近付いてきた。
そして、わたしを抱き締め、口付けて来る。

頭のどこかで、もしも誰かに見られたらと、考えてしまうけれど。
わたしは、新一の口付けを受け止めていた。

新一がわたしを抱き上げ、バレンタインデーの時に体を重ねた音響機材室へと向かう。
そして、ソファーの上に降ろされた。

「や!待って、ダメ!」
「……どうして?」
「きょ、今日は、あの日だから!」

ピルの飲み方には、4週間の内1週間の休薬期間があり、その間に無排卵性の
月経が訪れる。
そして、今、その月経が訪れているのは、本当の事だった。

「別に、生理だからって、エッチ出来ない訳じゃないだろ?オレは気にしねえけどな」
「ば、バカッ!新一は良くても、わたしは良くないっ!」

あまりのデリカシーの無さに、わたしは腹を立てて新一の胸をポカポカ叩く。

「ごめん。でも……胸だけなら、良いだろ?」
「え?あっ……!」

新一の手が服の上からわたしの胸をまさぐり、わたしは思わず仰け反って声をあげる。
ブラウスがたくし上げられ、下着の中に新一の手が侵入して来た。

彼の指がわたしの胸の飾りを捉えると、信じられない程の快感が、電流のように体を走る。


「ああん!」
「すげ……最初の頃より、ずっと感じ易くなってんじゃん?」
「そ、そんな事、言わないで……ああっ!」

彼の唇が、わたしの胸の頂きを捉え、舌先で転がされるように愛撫される。
わたしは、この防音室からでも、外に声が漏れてしまうんじゃないかって心配になる位、高い声を上げ続けた。

彼の息遣いも、荒い。

「やべ……挿れたい……蘭……」
「だ、ダメっ!それだけは!」
「わーってるよ……けど、オメー、色っぽ過ぎ……すげえ、そそる」
「はああん!」

新一は、わたしの胸を散々いじり、わたしの意識が朦朧となった頃、抱きしめて来た。

「蘭……」
「……新一?」
「好きだよ……」

そして、かすめるような口付け。

「新一……わたしもよ……」

新一は、切なそうにわたしを見ると、今度は深く口付けて来た。

「ごめんな……こらえ性なくて……」
「新一?」
「好きだから、見たい。触れたい。ひとつに、なりたい……」
「うん……」

わたしも、信じてる。
新一がわたしに触れて来るのは、単なる欲望だけではないんだって。

新一が、わたしの左手を取り、その薬指に口付けて来た。

「早く一人前になって、蘭を、名実ともに、嫁さんにしてえよ……」
「うん……待ってるから……」
「今度の週末、ウチに泊まりに来るか?」
「うん。都合つける」

新一が微笑み、ようやくわたしを解放した。
わたしは服の乱れを直す。

「あのさ、蘭。ヤツは……?」
「ヤツ……?」
「斉藤だよ」
「ああ。斉藤先生なら……わたしが空手技で気絶させてから、どうやら熱が冷めてしまったみたいで……わたし、おしとやかそうに見えるらしいんだよね」

新一が渋面を作った。

「……ライバルが減るのは嬉しいけどよ。ヤツ、蘭の表面しか、見てなかったんだな……」
「新一?」
「蘭は、美人だけど。蘭の良さって……何と言うか、そういう表面的な事ばかりじゃねえだろ?」
「……新一……」


わたしは、初対面の時、逃げ出した犯人に空手技をかける姿を見せてしまったのだけれど。
新一は、わたしのそういう部分を最初から知っていて、それが良いって思ってくれてるんだ。

わたしの心に、温かなものが満ちる。
この人を好きになって、本当に良かったと思う。


わたしは、新一の上に圧し掛かるようにして屈みこむと、新一のズボンのベルトを外そうとした。


「ら、蘭!?」
「わたしの中に挿れるのはダメだけど。新一も、気持ち良くさせてあげる」

とは言っても。
脱がされた事はあっても、脱がした事はないので、なかなか上手く行かない。
わたしの意図に気付いた新一が、自らズボンを下ろし、一物を取りだした。

目の前でマジマジと見るのは初めてで。
こんな大きなものが、わたしの中に入ってわたしを狂わせるのだと思うと、何だか不思議になって来る。

わたしは、そっと両手で新一のモノを掴んでみた。
生温かく固いそれは、わたしの手が触れると、ビクンと動く。

「蘭……本当に良いのか?オメーにこんな事させて」
「わたしだって、新一を気持ち良くさせてあげたいもん」

こんな事、もちろん初めてで。
上手に出来る自信はなかったけれど。
少しずつ練習して、新一を歓ばせてあげたい。


わたしは、思いきって、新一のモノを口に含む。
気の所為か、それはわたしの口の中でますます大きくなって、わたしの口いっぱいになる。

新一が甘い溜息をもらし、新一の手がわたしの頭の後ろに添えられる。

「蘭……そのまま、前後に動かして……そう……」

わたしは、訳が分からないまま、舌を使って舐めてみたり、彼のモノを含んだまま頭を前後に動かしたりしてみる。
彼のモノはぴくぴくと動き、口に含んだ時より更に大きくなったような気がする。

新一がわたしの頭を抱えながら、甘い溜息をついた。
感じてくれてるのかな?だとしたら、嬉しい。


「蘭……も、いいから、離して……!」

突然、新一が切羽詰まった声で言って。
わたしは、ワケが分からず、動きを止めた。

すると、彼のモノがわたしの口の中でビクビクと脈打ち、口の中に生温かく苦いモノが満ちた。

思わず彼のモノを口から出す。

「けほけほっ……!」

彼から放たれたものが、わたしの口から零れ落ちたが、少し飲み込んでしまい、わたしはむせた。
新一がわたしの頭を撫でてくれる。


「ごめん……!蘭、大丈夫か?」
「う、うん……」

わたしは、ティッシュで口元を押さえながら新一を見た。

「ねえ、新一?」
「うん?」
「少しは、気持ち良かった……?」
「蘭……少しなんてもんじゃねえよ。すっげー、気持ち良かった。けど……」
「けど?」
「蘭に、無理させたくねえ」

そう言った新一の顔が、歪んでいた。
わたしは何だか、悲しくなる。

「無理なんか、してないよ。わたしは……新一が好きだから、新一にも気持ち良くなって欲しいって、それだけだもん」
「蘭……」

新一がふっと笑ってわたしの髪をくしゃっと撫でる。

「ごめん。嬉しかったよ、すごく」
「新一……」
「週末は、その、大丈夫なのか?」
「うん。その頃は、終わってる筈だし」
「その時は、目いっぱい、蘭を気持ち良くさせっからよ」
「うん……」

わたしは、新一の胸に顔を埋めた。
新一の年頃の男の子が、愛情も何もなくても、ただただ「やりたい」と思う位に、性欲旺盛だって事は、わたしも知っているけど。
新一は、自分の欲望を押し通そうとするのではなく、新一なりのやり方で一所懸命、わたしを愛そうとしてくれている。

今でも、新一がいつまでわたしの事愛してくれるのか、いつまで2人の仲が続くのか、自信はないけれど。
今は、新一がわたしの事、とても愛してくれて、精一杯大切にしてくれている事を感じて。
わたしは、幸せだった。



   ☆☆☆



そして、週末。
わたしは、工藤邸を訪れた。

わたしが抱えている食材を見て、新一が言った。

「わりぃな。ホントは、一緒に買い物に行ってやりてえんだけど……」

2人で買い物なんかしていたら、誰に目撃されて何を言われるか、わかったもんじゃない。
憧れはするけど、出来ないのは仕方がない。

「わたしは……公に出来なくても、新一と愛し合えているだけで、幸せだよ?」

新一が微笑んだけど、その表情にはどこか弱々しい。

「……最初は、蘭もオレの事を想ってくれていただけで幸せだって思ったのに。どんどん、欲張りになってくよな、オレ」
「うん、わたしも。おんなじだね」

新一の表情が、ようやく満面の笑顔になった。


それから、わたし達は、ご飯を作った。
新一の手際はお世辞にも良いとは言えないけど、精一杯手伝ってくれる。

「1人暮らししてたのに、料理の腕は今一ね〜」

と、わたしがからかうと、新一は渋面を作って

「あんま手が掛からないもんばっか、作ってたからな」

と答えた。
今は、すぐに料理出来るように、刻んである野菜も売ってあるし。
出来合いのものもコンビニ弁当もある。

新一は、学業もあるし、探偵の仕事もあるし。
高校生の1人暮らしとしては、良くやっている方だと思う。

わたしも仕事が忙しいし、そんなにしょっちゅう、新一の家にご飯を作りに来てあげられる訳ではない。

一緒に住めば、もっと色々してあげられるのにと思う。
一緒に暮らしたい。
新一とずっと一緒に……。


『蘭。同棲なんかしたらねー、男にイイ想いをさせるだけで、女はボロボロになって捨てられてみじめな結果に終わる事が多いんだからね!絶対、そんな事考えちゃダメよ!』

ここを訪れる前に、親友の園子が言った言葉を思い出す。
でも、わたしは、新一がそんな人じゃないって信じてるし。
それに、新一との幸せな生活が送れるなら、絶対に後悔しない。

たとえその後、いつか、別れる日が来たとしても。


ただ、新一の方が望まないのに、無理に押しかける積りはない。
図々しい女には、なりたくない。
だから、一緒に住みたいって気持ちは、あくまで願望のままに、留めて置こう。



食事を終えた後、それぞれお風呂に入り、わたしは新一に抱きかかえられて、新一の寝室へ入った。

「あっ……はっ……んんっ!」

彼にくまなく触れられ、わたしの全身は歓びにおののく。
わたしの足が両側に大きく広げられる。
彼のものがわたしの中心部にあてがわれ、圧迫感と共に奥深くに入って来た。

「ああ……っ!」
「蘭……蘭……っ!」
「しんい……んああっ!」

新一が激しく動き、わたしの内部は新一のモノでこすられる。
わたしの中から溢れ出た蜜で、粘着性のある水音が響き渡る。

「あはあっ!んああっ!」

わたしはあられもない声を上げ、新一にしがみ付いて背中を反らせる。
信じられない位に気持ち良くて、どうしようもない位に幸せで、何も考えられない。

新一がわたしの奥に熱いものを放って動きを止めた時、わたしは快楽の絶頂に達して高い声をあげた。


新一はわたしを抱きしめ暫く余韻に浸った後、ゆっくりとわたしの中から出て、わたしの隣に横たわった。
わたしの中から、新一に注がれたものとわたしから溢れたものが混じり合って流れだす。
新一にたっぷり愛されて。
新一にたっぷり注がれて。

幸せを噛みしめながら、わたしは新一にすり寄った。



夜中。
わたしは肌寒さを覚えて、目を覚ました。

新一に抱かれて、生まれたままの姿で、そのまま寝入ってしまったのだった。
傍を見ると、新一がいない。
トイレにでも立ったのだろうか?


わたしは、寝巻をまとい、そしてある事を思い出した。
今日はまだ、ピルを飲んでいない。
いつも、夜8時ごろに飲むようにしているのに。

でも、この程度の多少の時間のずれは許容範囲、今飲んで、明日からはまた、夜8時に飲めば良い。
わたしは起き上がり、バッグから、ピルのシートを取り出した。

今日の分のピルを飲んだ時、不意に、部屋のドアが開き、室内灯がつけられた。
部屋の入り口には、パジャマを着た新一が立っていた。

わたしは思わず、ピルのシートを取り落としてしまっていた。


「蘭?」
「し、新一?どうしたの?」
「……12時過ぎたから、ホワイトデー当日だって思って……」

新一の手には、小さな包みが乗せられていた。

「オレには手作りなんて器用な事、出来ねえから、市販品だけどよ」
「あ、ありがとう……」

新一の手から、包みを受け取る。
手作りなんかじゃなくても、関係ない。
ちゃんと、ホワイトデーのプレゼントを準備してくれてた事が、とても嬉しい。

新一が屈みこんで、わたしが落としたピルのシートを拾い上げる。

「あ……それは……!」
「……オレに、避妊具つけるようにって、言い出しにくかった?」

わたしは、息を呑んだ。
ただの薬のシートに見える筈なのに、一目でわかるなんて、新一の知識ってどこまで幅広いんだろう?

「ち、違う!わたしは……!」
「今、オレの子をはらむ訳にも行かねえもんな」

新一が少し悲しげにわたしを見た。
わたしは、胸を突かれる。

「オレは……蘭に子ども出来たら良いって、どこかで思ってたよ。そしたらずっと、蘭はオレから離れねえだろうって」
「そんな……!新一、わたしがそんなに簡単に心変わりするって思ってるの!?酷いよ!」
「うん、ごめん。オレはガキだよな、やっぱり」

新一がそう言って、わたしの胸に顔を埋めるようにして抱きしめて来た。


「……新一。子ども、欲しいの?」
「蘭?」

新一が顔をあげる。

「新一が望むなら、わたし、ピルを飲むの、やめる」
「違う。子どもは、出来ても出来なくても、どっちでも良い。ただ、蘭に傍にいて欲しい」


人に知られたら、スキャンダルになる関係。
それでも、離れられない。
離したくない。


「蘭が隣にいない夜は、とても不安なんだ。蘭、この家に来て、オレと一緒に暮らさないか?」


本当だったら。
断るのが、大人の態度なんだって思う。

でも、わたしは、思わず、頷いていた。


こうして、わたし達の、誰にも内緒の同棲生活が、スタートする事になったのだった。




Fin.……?


+++++++++++++++++++


このクソ暑い時期になって、今更、ホワイトデーのお話で、本当にすみません。
書きかけていたので、どうしてもアップしたかったのです。

シリーズにお付き合い頂き、ありがとうございました。
一応、web上ではこれでシリーズ終了、にしたいと思います。
予定は未定で、気紛れにアップするかもしれませんが。

何となくダークな終わり方になってしまいましたが、実は、「誰にも内緒」シリーズは、この「先」が本番で、決して暗い話ではありません。
ない、筈。多分。


本編に関しては、一応、オフラインで出したいなという意向がありますが。
もしかして、こちらでも、掲載する事があるかも、しれません。

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