誰にも内緒



byドミ



(2)内緒のクリスマス



オレは、高校生探偵・工藤新一。
高校2年の17歳。

小さい頃から、探偵になって、親父を超えるのが夢だった。
ま、前半部分は、一応、目的を達成したと言えるが。
後半部分は、いつになる事やら。


オレは、女性の事は、特に好きでも嫌いでもなく。
年頃になっても、特別、特定の女性とお近付きになりたいとも、触れ合いたいとも、思う事がなかったんだが。

探偵デビューとほぼ同時に、生まれて初めて、気になる相手が出来た。

綺麗で可愛くて優しくて、気が強くて腕っ節も強くて、涙もろい、妙ちくりん。
たまたま、現場で行き合わせ、隙をついて逃げ出した犯人を、一撃で昏倒させた、女性。

一瞬で、オレの心を捕えた女性の名は、毛利蘭。


初対面から、年上なのは、分かっていたけど。
オレが入った帝丹高校の入学式で、新任教師として壇上で挨拶したのには、正直、参ってしまった。

教師と生徒。
年齢差以上に、立場の違いがある彼女とでは、とても無理だろう、相手にされないだろうと思いながらも。
オレは、どうしても、想いを抑える事も出来ず。
ずっと、悶々と、片思いをしていたってワケだ。

あー、情けねえ事は、自分が一番よく分かってるよ!
けど、まあ……今のオレが告白しても、子供の戯言だとあしらわれるのがオチだろうし。
なるべく早く一人前になって、とか、考えていたんだが。


その毛利先生が、お見合いをするってんで、頭真っ白になって焦っちまった。
そいつが、個室を予約していたのは、チェックしてたんだが。
真昼間からホテルの部屋に連れ込むなっての!

先生が乗り気ではなさそうなのをイイ事に、オレは、そいつが先生を個室に連れ込んですぐに、部屋に乗り込んじまった。
いや……毛利先生が乗り気だったとしても、邪魔してたかもしれねえ。


毛利先生にはきっと、呆れられてる。
詰られるかもと思いながらも、オレは……気持ちを伝えずには、いられなかった。



そしたら。
思いがけない事に。
毛利先生も、好きだって言ってくれて。

毛利先生……いや、蘭とオレとは、恋人同士になった。



   ☆☆☆



「はあああんん!しんいちぃ……すごい……イイ!もっと、もっとぉ……あああああっ!イクイク〜〜!!」

オレは、蘭の腰を持ちあげる。
その場所は、何故か、霞が掛かったようによく見えない。

オレは、蘭の中に己を突き立て、オレの熱をぶちまけた。



……良いところで、目が覚めちまった。
オレは溜息をつく。

夢や想像の中では、幾度となく蘭を犯して来たが。
現実には、ごく稀に、軽いキスを交わした程度だ。


そりゃ、愛しい女と、あれこれしたくないと言えば嘘になる。
現実に蘭を抱きたい、その欲望がすげえ強くある位の事は、自覚している。

しかし。
夢の中とは言え、何て台詞だよ、安っぽいAVじゃあるまいし。

いくら経験はなくても、AVと現実とが違うって事位、分かっている積りだ。

とは言え。
ベッドの中では、女は変わるって言うし。
……蘭は、どうなんだろう?


18歳未満のオレがAVを見るのは、勿論、違法だ。
だが、オレの年頃の男達は皆、あれこれの方法でAVやエロ本を入手して見ているものだ。
オレも、それなりには……見た事位、ある。
けど正直、あの手のものに殆ど興奮する事はなく、どちらかと言えば、冷静に観察してしまう自分がいた。

そして。
蘭と出会ってからは、頭の中で蘭に置き代えてからでないと、興奮出来ないって事に気付いた。

普通の男なら、恋愛感情とは別に、性欲が湧き起こる事もあるようなんだが。
オレの場合、ほぼ重なっているらしい。

正直、蘭以外の女では、勃たない。
触れたいとも、思わない。

蘭に対してだけは、触れたい、抱きたいって、ものすごく思うし。
蘭の事を思い浮かべただけで、勃っちまうけれど。


だけど、強がりでも何でもなく、そういう事は、まだ、先で良い。
今すぐと、焦っている訳じゃない。
蘭が、オレの傍にいてくれるなら、オレの恋人でいてくれるなら、それだけでオレは満足出来る。
いずれは深い仲になりたいと思うけれど、待つ事位、どうって事ない。


問題は、だ。
一応、恋人同士になった筈なのに、あの後、何にもない……って事なんだよな。


蘭に、教師という立場があるのは、分かっている。
だから、オレ達は、あれ以来、デートもしていない。

オレ達の恋人らしい部分と言えば、蘭と個人的に携帯の番号とメルアドを交換して、個人的にやり取りしているって事位で。
後は本当に、殆ど、何もなかった。


2人で一緒の時間を過ごしたい。
深い仲はともかくとして、抱き締めたり、キスしたり、したい……。


オレは、蘭を思い浮かべながら、自分の局所を自分の手でしごいて、熱を解放した。
放出したモノを、ティッシュで拭いながら、ふと思う。


「蘭は……大人の女性なんだから……未経験じゃないかも、しれないよな?」

かもしれないじゃなくて。
むしろ、経験があって当たり前か?

今や、高校生での処女率は、かなり低いものらしい。
付き合ってて、体の関係がないヤツらは、そうそういねえようだし。

蘭は……あんなに綺麗で可愛いんだから、きっと昔から、もてただろう。
今迄、付き合った事がないなんて……まさか、ねえよな。
そして、付き合ったとしたら、相手の男が、あんなに綺麗でナイスバディの蘭に、手を出さねえ筈、ないよな……。


そういう事を考え始めちまうと、落ち込んで来た。
今時、蘭が処女でない事にこだわる気はねえけど。
他の男に触れられた事があるってのが、やっぱりすげえ悔しいし。
それに……未経験のオレが、蘭を満足させられるんだろうか?

蘭はきっと、テクニックが未熟な事をどうこう言うような女じゃないって思う……思いたい……けど。


しかし、蘭を手放した男は、バカだよな。
オレだったら絶対、蘭のような素敵な女、何があっても、手放さないのに。

まあ、バカな男のお陰で、蘭がオレの恋人になってくれるって幸運が、巡って来たワケだけど。
だから。
ぜってー、手放さないように、頑張らなきゃな。


その為には。
エッチはともかく、2人の「交流」の時間をどうにか捻出しなきゃ。
お互い忙しいのは事実だが、まともにデートもした事がない今のままだと、自然消滅になりかねない。


もうすぐ、冬休みだ。
教師である蘭は、休みではないけど、どこかで時間は出来る筈。

オレ達は一応、恋人らしく、お互いの個人連絡先は、知っている。
蘭を誘って、どこかに行こう。
知り合いに会う事がねえ位の所に、遠出しよう。



   ☆☆☆



電話をかけた時の蘭は、色々と忙しく、いつ時間が出来るか分からないという事だった。
けど……気の所為か、素っ気なかったような気がする。

やっぱり、デートもろくに出来ない日々の中で、蘭の気持ちは冷めてしまったんだろうか?
そんな事はない!きっと忙しいんだ!と、自分自身に言い聞かせる。



時はクリスマスイブ。
華やかなイルミネーションが街を彩る中。
オレは……殺人事件の捜査に駆り出された。


まあ、その事自体は、想定外でもなかったし。
一応、恋人はいても、恋人との予定もないオレには、イブが事件で潰れたところで、どうって事もない。

事件を無事解決して、家路に着く頃には、日もとっぷり暮れ、その上雪もちらついていた。
捜査一課の高木刑事が、オレを自宅まで送り届けてくれる事になったが、イブの上に雪が降っている状況でかなり渋滞し、帰り着いた時は、かなり遅くなってしまっていた。


送ってくれた高木刑事に礼を言い、門扉を開いて、敷地内に入る。
家は、親父名義の大きなものだが、今、両親はアメリカにいる為、1人で暮らしている。
今日は、帰りがいつになるか分からなかったから、エアコンは付けていない。
家に入ったら、まず、エアコンをつけて、風呂に入って温まろう。

あ。
今になって、空腹感を思い出した。
とは言っても、家にろくなものはなかったよなあ。
取りあえず温まってから、コンビニに向かうか。


などと考えながら玄関の所までたどり着いて、オレはギョッとした。
誰かが、玄関ドアの外で、うずくまっていたのだ。

長い髪の女。
僅かな明かりに照らされて見えた顔に、オレは息を呑んだ。

「ら……蘭!?」
「あ、新一。お帰りなさい……」

蘭が、顔を上げて言った。
その肩にはうっすらと雪が積もっていて、顔色も白い。
触れると、その頬はとても冷たかった。

オレは、色々聞きたいのを我慢し、玄関ドアを開け、蘭を連れて家に入り、リビングのソファに座らせてエアコンをつけた。
部屋が暖まるまで時間が掛かるのが、もどかしい。
こんな事になると分かっていたら、エアコン付けっ放しで出かけたのに。

オレはまず、風呂場に行って、バスタブに湯を溜め始めた。
今日は、先に風呂掃除をしていて、良かったぜ。
帰ったらすぐ、風呂に入りたかったからな。

そして、台所に行き、冷蔵庫を開けると、牛乳があったので、それを取り出した。
本当はミルクティかココアにしたいところだが、残念ながらウチにはない。

コーヒーメーカーをセットしてコーヒーを淹れながら、牛乳をレンジで温める。
コーヒーと温めた牛乳を混ぜ、砂糖を少し多めに入れ、出来上がったカフェオレを、蘭の元に運んだ。

リビングに戻ると、蘭は荷物をごそごそしている。

「何、してんだよ?」

思わず声が荒いものになってしまい、蘭はビクリと身を震わせた。

「ごめん。怒ってんじゃねえんだ。取りあえず、これ」

そう言ってオレは、カフェオレを置いた。

「あ、ありがとう……」

蘭は、微笑むと、そっとカフェオレを手にとって飲んだ。

「美味しい……」
「そっか。良かった。飲み終わったら……今、風呂にお湯入れてっから、温まって来いよ」
「……何も、聞かないの?」
「聞きてえ事や言いてえ事はいっぱいあるが、取りあえず、蘭が温まってから、な」
「……ごめんなさい……」
「別に、謝って欲しい訳じゃない」
「うん。ごめん……」
「……」

くそー!
普段、弁が立つ自信があるオレだが。
こういう時、惚れた女に、何をどう言ってあげたら良いのか、全然、分かんねー!

「ねえ、新一」
「ん?」
「ちょっと……台所と冷蔵庫、借りて良い?」
「蘭?」
「新一と一緒に、ご飯を食べたいなと思って、作って来たの」

って事は。
蘭の手料理を食えるって事か?
マジかよ。
すげー、嬉しいんですけど。

「けど、蘭、台所はまだ寒いし……」
「うん。お言葉に甘えて、作業は、お風呂頂いてからにするから。今は、ちょっと冷蔵庫を貸してね」

蘭を案内して台所に向かい、冷蔵庫に色々と仕舞い込んだ後、オレ達は再びリビングに戻った。

間が持たねえので、ついつい、テレビのスイッチを入れてしまう。
テレビの画面では、各地のクリスマスイルミネーションが映し出されていた。
せっかくなら、蘭をこういうとこに連れてってあげたかったな。
ウチは今年、クリスマスツリーもリースも、何も飾ってねえし。


なんて事を考えていたら、突然、画面に、オレが映った。

「げ!」

『クリスマスイブの今日、高校生探偵工藤新一君が、鮮やかに殺人事件を解決しました!』
『工藤君、お手柄でしたね』
『ありがとうございます』

そう言えば、マスコミが来てて、インタビューされたような気がするが。
どうもそこら辺、気もそぞろで、あんまり覚えちゃいねえ。

ふと横を見ると、蘭がテレビ画面に見入っている。

『しかし、花の高校生である工藤探偵、イブにも仕事とは大変ですね。彼女さんは大丈夫でしょうか?』
『オレには、恋人なんていませんよ』
『ええっ!?ホントですかあ?イケメン高校生探偵工藤新一君は、女性はよりどりみどりのような気がするんですが』
『今のオレは、探偵の仕事の方が大事ですし。いずれ恋人を作るとしたら、そこに理解ある女性が良いですね』


蘭が、大きく息をつく。

「あ……蘭……その。恋人がいないってのは、えっと……」
「仕方がないよ。新一の立場だったら、まさか教師と恋愛中だなんて、言えないでしょ?」
「ら、蘭……」

蘭がこちらを見る。
別に、怒っている訳でも、気を悪くしている訳でもなさそうだ。
ただ、何か言いたげな感じなのが、気になる。


その時。
お風呂のお湯はりが終わったお知らせの音楽が鳴った。
オレは、頭をひと振りして言った。

「蘭。お風呂が沸いたみてえだから、まず入って来いよ」
「えっ?」
「タオルは脱衣所に置いてあるし。着替えが必要なら……」
「あ。それは、持って来てる」
「そうか。冷えただろ、まずは体をあっためて来いよ」
「……うん。ありがとう」

オレは蘭を浴室まで案内し、タオルなどを取ってあげた。


リビングに戻り、テレビを見たり、新聞を取り出したりして、蘭を待つ。
女性だから時間が掛かるだろうなと思いきや、蘭は20分位でリビングに戻って来た。
多分、寝巻代わりにもなるのだろう、ワンピース型の部屋着を、身につけていた。

湯上りの蘭は上気して色っぽく、良い匂いを漂わせていて、オレものぼせそうになる。

「お風呂、ありがとう」
「イヤ……その。結構早かったよな。女性にしては」
「あら。女性の長風呂を知っている位、名探偵さんは女性におもてになるの?」

蘭が、ちょっと眉根を寄せて言った。
冗談じゃない!
蘭は一体、オレにどんなイメージを持ってんだ!?

「いっ!?いや、んなんじゃなくて!いつも、母さんが……!」
「……もう、家で、入って来たから。今は、温まるだけにさせてもらったの」
「そ、そうか……」
「新一も、お風呂に入って来たら?わたし、その間に、ご飯の準備をして置くから」
「あ、ああ。わかった……」

オレは、風呂場に向かった。
湯船につかる。
蘭の残り香だろうか、ふんわりと、良い香りがした。
さっきまで蘭が裸になってここに入っていたのかと思うと、オレはのぼせそうになった。

まだ見た事などない、蘭の裸体を思い浮かべてしまい、オレの局所が、その存在を誇示し始める。
オレは、1回、自分の手で自らの熱を放出した。
そして、体を洗い、浴室から出る。

パジャマを羽織って脱衣室から出ると、美味しそうな匂いが鼻に飛び込んで来た。
ダイニングに行くと、ローストチキン、グラタン、温野菜サラダ、ミートローフ、シチューなど、クリスマスらしいご馳走が並んでいた。

「すげえ……美味そう……それにしても素早いな」
「家で殆ど作って来て、温めたり盛りつけたりするだけだったから。どうぞ、召し上がれ」
「いただきます」

蘭はワインで。
オレは未成年なのでノンアルコールのスパークリング葡萄ジュースで。
乾杯をして、ご馳走に手をつける。

正直、見た目以上に美味しかった。
母さんが外国に行った為、長い事家庭料理とは無縁だったから、尚更なのかもしれないけど、本当に美味い。

「すげえ……うめえよ」
「ホント?」
「ああ。1人暮らしになって簡単なものばかりしか食べねえようになったから、余計に嬉しい」
「ダメよ。探偵は、体が資本でしょ?ちゃんと食べなきゃ」
「ああ。分かってんだけど、1人だとつい……」
「まあでも、高校生男子の1人暮らしにしては、良くやってると思うけどね。ご両親は、海外にいらっしゃるんでしょ?」
「思春期の1人息子を置いて、いい気なもんだぜ」
「新一は?一緒に行こうって、言われなかったの?」
「……それも、考えたんだけど。取りあえず高校までは、日本の学校に行こうと思って……」

探偵としての勉強をするなら、親父達について、アメリカに行った方が、何かと良かったかもしれない。
言葉に不自由はしないし、あちらでの学校生活で問題があるとも思えなかったし。

けれど、オレは1人日本に残った。
経済的にはまだまだ脛かじりだけど、1人で生活して、頑張ってみたかった。
探偵になるという夢を叶える為にも、親父の傍にいたままではダメだと、何となく思っていた。


「じゃあ。もしかして、大学はあっちに?」
「行かねーよ」

蘭がオレを窺うように言った事に、オレは、即答した。
確かに、以前は、アメリカの大学に行こうと思っていた。
大学に行きながら本式に探偵の勉強をしようと思っていた。

けど今は。日本を離れる気は全くない。
何故なら、蘭と出会ってしまったから。
なるべく早く一人前になりたいと思うが、蘭と離れて過ごすなんて、ぜってー出来ない。

蘭は、複雑な表情をしていた。
オレは少し苛立った気分になる。

何だよ。
蘭は、オレがアメリカに行っても平気なのかよ?


何となく、気まずい沈黙が流れた。

オレ達は黙って、食事を続けた。

すごく美味かったけど、量も沢山で、どうしても残ってしまった。
蘭は、余ったものをタッパーなどに詰めた。

「ごめんな。残しちまって」
「気にしないで。とても食べきれる量じゃなかったのは分かっているし、これから数日分の食料にする積りで持って来たんだから」
「蘭……」

蘭が笑顔で言う。
このやり取りで、先程の気詰まりなのがなくなって、ホッとした。

蘭が冷蔵庫にご馳走の残りを仕舞っている間に、オレは、汚れた食器を食器洗浄機に放り込んでスイッチを入れた。
母さんの置き土産の一つだが、これのお陰で1人暮らしのオレでも、流しが悲惨な事にならずに済んでいる。

「新一っちって、すごいわね。わたし、今日は洗い物の山を覚悟してたのに」
「母さんは、家事に掛かる労力で手間が省けるモノは省くって信条だったからな。父さんも母さんにベタ惚れで、そういう事に金を使うのには全く文句を言わなかったから」
「そう……仲が良くて素敵なご両親なのね」
「でも、もし、食器洗い機がなかったら。いくら何でも、蘭1人に洗い物をさせようなんて思わないぜ、オレは」

基本的に、家事は一通り何とか出来ても、苦手なのは確かだ。
けれど、せっかくご飯を作ってくれた蘭に、洗い物まで任せるなんて、そんな事、出来るわけがない。

蘭がお茶を淹れてくれている間に、オレは、もし蘭に会えたら渡そうと思っていたクリスマスプレゼントを、部屋まで取りに行った。
リビングに戻ると、コーヒーと一緒に、クリスマス用のプチケーキが待っていた。

「2人だから、ホールケーキだと大き過ぎるかなと思って。本当はケーキも作りたかったけど、暇がなくて」
「……蘭。ありがとう。今年、クリスマスを恋人と一緒に過ごすなんて出来ねえんだって思ってた。だって電話した時、蘭は予定あるような事、言ってただろ?」
「うん。だから、これが予定」
「へっ?」
「サプライズ企画にしようと思って」
「……確かに、驚いたよ。嬉しかった。でもな……蘭が寒空にずっと待ってたって思うと、オレ……たまんねえ」
「……新一……」
「そうと分かっていたら。事件に呼ばれて行く事になっても、蘭が困らねえよう、鍵の隠し場所も教えておいたし、暖房も付けておいたのに」
「うん。ありがとう。ごめんね……」
「風邪、引かなきゃ良いけど」
「大丈夫よ。多分。それに……明日から旅行に行くからって、有休取ってるし」
「え?旅行?どこに」
「……休む為の、口実。特に予定はないわ、今のところはね」

蘭が悪戯っぽく微笑みながら、オレを見る。

もしかして。
蘭はオレと一緒に過ごしたいと思ってくれてるって、期待しても良いのか?

オレの心臓はドクドク音を立て始めていた。

それを誤魔化すように、オレは蘭に包みを渡した。

「蘭。これ。クリスマスの……」
「まあ。プレゼント?嬉しい」
「そ、その……高校生のこづかいだから、大したもん、買えなかったけど」
「素敵な手袋。ありがとう、新一」

蘭が、自分の手にはめて見せて、にっこりと笑った。
ブランド物には手が出せないが、一応イタリア製で品質の良い、柔らかい皮手袋だ。
母さんがヨーロッパ旅行に行った時に、買って来たものを、ほぼ原価で譲ってもらった。

「新一。わたしからも……」

そう言って蘭が伸びあがり、オレの首に白いマフラーを巻き付けた。

「もしかして。蘭の手編み?」
「うん」
「マジ?すげー嬉しい」

蘭が、頬を染めてオレを見上げる。
オレは、そのまま蘭を抱きしめたくなる衝動を、かろうじて抑えた。
ここで抱き締めてしまったら、オレの理性は確実に飛ぶ。


……蘭は、親が近くに住んでいるけど、今は1人暮らしをしている。
だから、門限などはない。
こんな寒い夜に、夜道を歩いて帰れと言うのも、酷だろう。
たとえ、オレが送って行くにしても。


オレの家はかなり大きく、蘭を泊めようと思えば、部屋は沢山あるが。
客間は長い事使っていない。
後で掃除しなくちゃと、オレは考えていた。


お互いにプレゼントを贈り合った後、オレ達は腰掛けてケーキを食べた。

「それにしても、蘭は、料理上手だよな」
「いつでも、お嫁に行ける?」

蘭の、冗談めかした言葉に、オレは食べかけのケーキを喉に詰まらせ、咳込んだ。

「だ、大丈夫、新一?」
「お、お嫁にって……どこに、行く気だよ?」
「どこにって……」

蘭が、困惑した顔をしている。
オレは何だか、無性に腹が立って来た。

オレとの事は「割り切った関係」で、結婚相手は別だって思っているのかよ?
オメーは20代の前半じゃねえか、まだ、焦る事はねえだろ?

「オレが……必ず、迎えに来るから。だから待っててって、言っただろ?」
「新一……」

蘭が、目を見開いた。
もしかして蘭は、あの時のオレの言葉を、本気に取っていなかったのか?
世間知らずの子供のたわごとだって、思ってたのか?

オレは、席を立って、蘭の方へ回り込み。
蘭の肩に手を置いて、言った。

「なるべく早く、一人前になっから!だから……」
「新一は、いずれわたしを、お嫁さんにしてくれる気があるの?」
「そりゃあ……!」
「でも。新一が一人前になった頃って、わたしもう、三十路に足突っ込んでるよね。その時になって、新一がもっと若くて可愛い子に目移りしてしまったら、わたし、どうしたら良いの?」

蘭が、オレを見詰める眼差しが、思い詰めたもののような感じがして。
オレは、胸を突かれた。

「んな事、絶対、有り得ねえ!オレは……!」

オレは、蘭をギュッと抱きしめた。

少しだけ、だけど。
何となく、わかったような気がする。

別に蘭は、オレに愛想を尽かして、他の男と結婚を考えているとか、そういう事ではなくて。
蘭が、オレの気持ちを信じていないとか、そういう事でもなくて。

オレが「蘭から見てまだまだ子供のオレでは頼りないのだろうか」と不安になる以上に、蘭にとっては不安だったのだろうか?
いずれオレが心変わりするかもしれない、同年代の女性に目を向けるようになるかもしれない、そういう不安があったのだろうか?

けど。
蘭の次の言葉に、オレは凍りついた。

「新一。わたしは、もう待てない」
「……え?」

待てない?
待てないって……まさか、他の男と!?

「ら、蘭!」

オレは、少しだけ蘭の体を離して、その顔を覗き込む。
蘭の眼には、思い詰めたような色がある。


オレは、後悔していた。
この数カ月、お互いに忙しかったからとか、人目についてはやばいとか、色々な理由があったにしろ、オレ達は殆どまともに、恋人同士としての時間を過ごしていない。
メールと電話のやり取りと、たまに、ごくわずかな隙を見つけての、短いハグと軽い口付けだけ。

それで、蘭の気持ちを留めて置けるなんて思う方が、間違いだったんだ!

蘭は、ふっと微笑んで、オレの頬に手を当てた。
そして、蘭の顔が近付いて来て……気がつくと、唇に心地良い柔らかな感触。

それは、すぐに離れて行ったけど。
蘭が、下から、オレの目を覗き込んで、言った。


「わたし、これ以上、待つのは嫌なの。待てないの。だから、今夜、わたしを、新一のお嫁さんにして」
「……え……?」

意味が分からず、呆けたような声で、オレは返した。

「遠い未来の約束は、要らない。式とか手続きとか、一緒に生活する事とか、そういう事も必要ないの。ただ、わたしは……新一との確かな繋がりが欲しい」
「蘭……」

蘭の目が潤み、オレを見詰めて来る。
オレはようやく、蘭が何を望んでいるのか、理解した。



   ☆☆☆



蘭を抱きあげて、オレの部屋のベッドに連れて行って、そっと降ろす。

蘭は決して重くない。
オレは一応体を鍛えているし、普段なら大した作業ではない筈なのに。
緊張のあまり、たったそれだけの事で、オレは大汗をかいていた。


横たわってオレを見上げる蘭の潤んだ瞳が、妙に色っぽい。

「蘭……」

喉がカラカラに乾き、かすれた声しか出て来ない。

「新一……」

蘭がささやくようにオレを呼んで目を閉じた。


蘭から、誘って来た、って事になるんだよな?

……多分……初めてって事は、ねえよな?


オレは、過去への嫉妬に狂いそうになる頭を、ひと振りした。
蘭が、オレのようなガキを相手にする筈がない、きっと片思いだと思っていたのに、思いがけず想いが通じた、それだけで幸せな事じゃねえかと、自分に言い聞かせる。


この行為が初めてのオレが、蘭を満足させる事など、出来るのだろうか?
でも、他の女で予行演習なんて、そんな事、出来る訳もない。

蘭を知る前なら、他の女性を抱く事も、不可能ではなかっただろう。
けれどオレには、自分の欲望を満たす為の道具として、女性を扱うなんて事は出来ねえし。
淡白でもあったので、自己処理をすればそれで済んでいた。

蘭を知ってからは……蘭にだけは年頃の男らしい強烈な欲望をいだくようになったけれども、他の女性では欲情しない自分に気がついた。
色々な意味でオレには、蘭以外の女性を抱くなんて事は、不可能だ。


蘭がオレを好きだと言ってくれて、身を委ねてくれるのだから。
自信はねえけど、それを信じて、頑張るしかない。


オレは、上から覗き込み、蘭の頬に両手で包むように触れ、ふっくらとした唇に、そっと自分の唇を当てた。
柔らかくて、気持ちが良い。
いつもは、触れるだけで終わるけれど。
今回は、深く口付ける。
気付けば、甘く柔らかい蘭の唇を、夢中で貪っていた。

蘭の唇の隙間から蘭の口腔内に舌を侵入させる。
蘭は一瞬ビクリとしたが、オレの舌に自分の舌を絡ませて応えた。

「ん……」

鼻にかかった吐息が漏れて、その声の色っぽさにまた、ゾクゾクする。
オレの右手は、無意識の内に、蘭の胸の膨らみの上に乗せていた。
そっと手を動かして、服越しに、胸の感触を味わう。

柔らかい……早く、直に触れたい。

オレが蘭の胸を揉みしだき始めると、蘭は一瞬、ビクリと体を震わせたが、拒みはしなかった。
胸の膨らみの頂きが、固く勃ちあがっている感触がある。
もしかして、胸の下着は、着けてねえのか?
やべ。
鼻血が出そうだ。


蘭の唇を解放する。
その瞳は潤み、頬は上気し、すげー色っぽい。


オレは、蘭の首筋に唇を押しあてた。

「あっ……!」

蘭が小さく声を上げる。
本当は首筋を思い切り吸いたいところだけど、ここにキスマークをつけるとやっぱ拙いだろうと、自重する。
蘭も成人女性だし社会人だし、そういう相手がいても不思議じゃないけれど、教壇に立つ時首筋にキスマークがあると、どんな風に言われるか、分かったもんじゃねえからな。


オレは、理性のタガが外れそうになるのを懸命に宥めながら、なるべくゆっくりと事を進める。
蘭のワンピースは前ボタン式だった。
オレは震える手でボタンを外し、中に手を滑り込ませた。

「あんっ!」

直に胸の膨らみに触れると、蘭は喉を反らして声を上げた。
すげえ……ふわふわでモチモチでスベスベで……感触が、めっちゃ、気持ちイイ……!

オレは、ただでさえ殆どないに等しい余裕が、更になくなり、性急に蘭の服をはだけた。
露わになった上半身に、思わず見とれて息を呑んだ。

透き通った白い肌。
華奢でウェストはキュッとくびれているのに、胸の膨らみは大ぶりで。
ただ大きいだけじゃなく、お椀を伏せたみてえな綺麗な形で、その頂きはピンク色をしている。

興奮のあまり鼻血が出そうになる。
オレは夢中で、蘭の胸にむしゃぶりついていた。
固くとがり始めた果実を舌で転がすようにしながら吸い上げる。

「ああ……はぁん」

蘭の声が艶っぽい。
ここ、そんなに感じるんだ。

もう片方の乳房を揉みしだきながら、指先で果実をこする。


「あああん!新一ぃ!」

蘭が仰け反って高い声を上げる。
オレは、空いた方の手を下に動かし、蘭のめくれ上がったワンピースの裾から侵入させた。
太腿もまた、スベスベでモチモチで、すげー良い感触で。
足の付け根に手が当たると、そこは布で覆われていた。
気の所為かそこは、湿り気を帯びている。


オレは、蘭の胸を吸っていた口を、下の方にずらし、手で蘭のワンピースとパンティをずり下ろしながら、腰からヒップのラインを撫でて行った。
蘭の全身が露わになったところで、オレは一旦体を起して、改めて蘭の生まれたままの姿を、を目で堪能した。


「あ……!」

蘭が、目を閉じ、頬を染め、震えながら、胸と秘められた場所を隠すように、両手を動かす。
オレは出来るだけ優しく、その腕を取って横にどけた。

「綺麗だ……蘭……」

口をついて出るのは月並みな言葉。
気の利いた事なんか、言えやしねえ。


オレは、淡い茂みに隠されている、蘭の秘められた泉に手を伸ばした。
そこは、既にかなり潤っているようだ。

もう、挿れても大丈夫なのかどうか、オレには判断付かない。
けど、いきなりじゃなくて、ここも愛撫する事は必要なんだろうな。

オレは、蘭の足を抱えて押し広げた。
女性のその部分は、当然ながら、初めて見るもので。

以前、医学書で目にした時と、構造は同じなんだろうけど、目の前にあるそれは、赤く潤い、とても綺麗だった。
そこから、何とも言えない芳香が立ち上っている。

オレは、吸い寄せられるようにそこに顔を近付け、口を寄せた。
途端に蘭が身をよじる。

「ひゃんっ!な、何、新一、そんなトコ……っ!」
「は?」
「何で、そんな事するの?」
「えっ?」

ええっと……こういう事って、割と普通にする事じゃねえのか?
オレは、体を起こして、蘭を見た。
蘭は、泣きそうな顔で真っ赤になって、フルフルと震えている。

「ご、ごめん!蘭、こんな事されるの、嫌だった?」
「ち、違うよ!でも……あ、あんな汚いとこ……新一の口が汚れるでしょ?」
「そんな……蘭の体で汚ねえとこなんて、あるワケねえだろ!」
「だ、だって……!」
「以前の時、こういう事、やらなかったのか?」

オレはつい、言ってはいけない事を、口にしてしまった。

「え……?以前……って?」

蘭が、目を丸くしてオレを見る。
オレは後悔したが、一旦口に出した言葉は取り消せない。

「前の恋人との時」

蘭は、暫く目を見開いて固まっていた。
それから。
蘭の顔がくしゃっと歪み、その目から涙がボロボロと溢れだす。


突然、目の前に火花が散って、オレは一瞬、何が起こったのか、分からなかった。
頬が熱くてジンジンする。
少し経ってようやく、蘭に殴られたんだって分かった。

そりゃ、殴られても仕方ねえよな。
過去の体験の事を聞くなんて……やっちゃいけねえ事なんだから。

蘭は、真っ赤になって怒鳴った。

「酷い!最低!」
「ご、ゴメン!蘭、オレが悪かった!過去の事聞くなんて……」
「わたし、わたし!バージンなのに!」
「……へっ?」


今度は、オレが固まる番だった。

「……マジ?」
「新一は、わたしの事、すぐに体開く女だって、そんな風に見てたの!?」
「ち、違う!けど……蘭は……前に付き合った男に、迫られたりしなかったのか?」
「わたしは、わたしは!好きじゃない男の人と付き合ったり触れ合ったりなんて、出来ないよ!」
「ら……蘭……だけど……」
「初恋……なんだもの。新一に会うまでは、わたし、男の人に恋する心なんてないのかもしれないって、思ってたんだもの!」


蘭は、オレに背を向けてベッドにうつ伏せ、ヒクヒクと泣き始めた。


オレはしばし呆然とし。
それから、驚き。
次第に、震える程の歓びがオレの体を満たして行った。


オレは、そっと蘭の背に手を伸ばした。

「蘭……」
「やっ!触らないで!」
「オレは……触りたいけどな。蘭が好きだから」
「な……!」

蘭が、泣きはらした顔を上げてオレを見る。

「蘭は、こんなに綺麗で素敵で……きっと、どんな男もほっておかないだろうって。オレなんかの手の届くような女性じゃねえだろうって。高嶺の花だって……ずっと、思ってた」
「わたしは……そんな大した女なんかじゃないわ……」

蘭の声と表情は、まだ少しふてくされた感じだったけど、激情は少しおさまって来たようだった。

「オレは……初めて会った時から、ずっと蘭の事が好きだったし。蘭にも好きだって言ってもらえて、夢のようだった。蘭の事……キスしたい、触れたい、そして抱きたいって……ずっと思ってたけど……でも、オレの欲望をぶつけて、嫌われたくなかった。だから、今夜、蘭がオレとそうなる事を望んでくれて、すっげー、嬉しかった」
「新一……」
「でもさ。蘭の方から誘って来たのに、まさか蘭も初めてだなんて、思わなかった」
「だって!不安……だったんだもん!」
「不安?何が?」
「新一は、いつも紳士的で……ちっともそんな素振り、見せないし……もしかして、わたし、新一から見て全然魅力がないのかな……やっぱり年上過ぎるから、その内、同年代の女の子の方が良くなるかもしれないとか……」
「蘭?」
「だ、だから。新一がわたしの事、好きでいてくれる間に、い、一度だけでも良いから、わたしを新一のものにして欲しいって……わたし……」

蘭の顔が再び歪み、その目から涙がポロポロと零れ落ちる。
オレは、蘭の両頬をそっと手で挟み込んで、顔を覗き込んだ。

「オレは、蘭が好きだから。蘭にどんな過去があっても構わないって、受け容れるって、今とこれから先オレを見てくれればそれでイイって、思ってたよ。けど。蘭がその……初めてをオレにくれる積りだって知って……滅茶苦茶嬉しい。すげー、嬉しい!」
「新一……」

蘭がようやく、恥ずかしそうにほほ笑んでくれた。
オレは、そっと蘭の口に口付けた。

「赤くなってる」

蘭がそっと、オレの頬に触れた。

「ごめんね……叩いたりして……」
「何て事ねえよ、この位。オレが無神経な事、言っちまったんだから」
「だって……誤解されても仕方なかったって思うし。わたしだって、新一の事、色々誤解してた。今迄女の二人や三人、いただろうって思ってたもん」
「何だって?オレは今迄、女とは無縁の生活を送って来たってのに、ちょっと、それは酷くねえか?」
「うん……ごめんね……」
「お互い様、かな?」
「そうかな……でも、叩いた分、わたしが酷いよね」

蘭がオレの頬を撫でる手を取って、オレはその手の甲に口付けた。
そして、顔を上げ、蘭を真っ直ぐに見詰めて言った。

「……オレには、生涯、蘭ただ1人だけだ。口では何とでも言えるって蘭は思うかもしれないけど……信じて欲しい」
「新一……」
「蘭。今ここで、オレの嫁さんに、なってくれないか?」

蘭の目が見開かれ……新らしい涙に、オレの心臓は一瞬凍りつきそうになったが。
次いで蘭は満面の笑顔になって、頷いた。

「……うん!」

オレは、蘭を強く抱きしめて、深く口付けた。



   ☆☆☆



それから、改めて。

オレの方も全部服を脱ぎ、初めからやり直しをした。
何しろ、この間に、蘭のあそこは乾いてしまっていたし。
蘭が初めてなら、時間をかけてほぐす必要があると思った。


オレの体は、早く蘭の中に入りたくてウズウズしているが、蘭の切ない気持ちを、その覚悟を知った今は、無理矢理性急に事を運ぶ気がしない。


とは言え。
多分、その内、オレの余裕は、全くなくなるだろうって気はしてた。


蘭の全身に隈なく触れて行く。
蘭のその部分から再び蜜が溢れ始めた頃、オレは、再び蘭の足を抱え上げて開いた。


秘められた泉の手前にある突起に、そっと触れてみる。

「あん!」

そこはすごく感じ易いらしく、蘭は仰け反って声を上げた。
オレはそっとそこを舌で愛撫しながら、指を蘭の秘められた穴に差し込んでみた。

「あ……んんっ……!」

すげえ。
蘭の中はトロトロで、熱くオレの指を締めつけて来る。
ここに、オレのものを入れたら、どんなに気持ち良いだろう。

オレの息は上がり、既に余裕なんてなくなりかけてる。


指をゆるゆると抜き差しすると、蘭の内部が少しずつ変化して来た。
粘着性のある水音がして、蜜が量を増す。
男を誘う芳香が、立ち上る。


「蘭……いい?」
「新一……」

蘭が、コクリと頷いた。
オレは、蘭の入り口にオレのものを当てがい、一気に入れようとした。

が。


「……っくっ……!」
「ったあっ!」

蘭の入り口はきつく閉じ、オレのものは入って行かないし、蘭は痛がって無意識の内に体をずりあげる。
ほんの先っぽが入っただけで、オレはすげえ気持ち良くて、ついつい強引に蘭の奥に入ろうとする。

「ら、蘭……力、抜いて……」
「やあ……どうしたらイイか、わかんない……」

オレは、蘭の胸や突起を愛撫してみたり、一息ついてまた蘭の中に入ろうと勢いをつけたり、色々してみるが、なかなか上手く行かない。
蘭自身も望んでいた事とは言え、痛みがハンパじゃねえんだろう。
蘭があまりにも痛々しいので、残念だしオレの体の方は止まりそうもねえけど、いっその事、無理してでも止めようかとすら思う。

「新一……ごめん……ごめんね……」
「蘭?」
「わたしから誘って置きながら、こんな……」
「バーロ。蘭が謝るな!」
「で、でも……」
「蘭。さっきも言ったけど。オレは……これから先もずっと、蘭だけだ。今夜、焦って無理するこた、ねえし。今夜はその……これで止めねえか?」
「……イヤ!」
「だ、だけど……」
「新一。だって、今夜止めたら、先送りになるだけでしょ?先送りしたら、痛くなくなるの?」
「い、いや、それは……!」
「痛くても、イイよ……だって……新一とひとつになれた証、なんだもん。だから、お願い……最後まで……」
「蘭……!」

オレは、蘭を抱き締め、頬擦りした。
愛しい女にここまで言われて、本当に、スゲー幸せだ。

オレは、蘭の唇を求め、舌を侵入させて蘭の舌に絡ませた。
同時に、胸を掌で包み込んで揉みしだく。

「ん……ふうっ……」

蘭の唇を解放すると、息をつめていた蘭が大きく息を継いだ。
その時、期せずして蘭の入り口が緩み、そこにあてがっていたオレのものが、スルリと蘭の中に入り込んだ。

「う……ああっ……!」
「く……は……っ!」

蘭は苦痛の声を上げたが、オレは蘭の熱い内部に包まれて、天にも昇る心地よさを味わっていた。
オレは、蘭を抱き締めてその顔を覗き込んだ。
蘭は、目をギュッとつぶり、小刻みに震えていた。

「ら、蘭……大丈夫か!?」
「新一……」
「全部、入ったよ……今、オレ達、ひとつになったんだ……分かるか?」
「ひとつに?新一と?」
「ああ」
「嬉しい」

蘭がうっすらと目を開けて、微笑んだ。
すっげー痛いだろうに、こんな風に言うなんて。

蘭が寄せてくれる想いに、胸が痛くてたまらない。
魂を揺さぶる程の歓びと、蘭への愛しさが湧きあがってくる。


オレ、蘭と結ばれたんだ。
繋がったまま、オレは蘭をしっかり抱きしめ、深く口付けた。
少しも、隙間がないように、ピッタリと引っ付いていたい。


蘭の内部が蠢き、オレのモノに絡みつくように締めつけて来る。
すげー、気持ちイイ。

オレはたまらず、腰を動かし始めた。

「ん!ふっ!あっ!」

蘭が、苦しげな声を上げる。

「蘭……蘭……愛してる……愛してる……っ!」
「しん……いち……あっ……」

蘭がオレの背中に回した手で、ギュッとしがみつく。
オレは昇りつめ、蘭の中に熱を放っていた。

暫く蘭の中で余韻を楽しんだ後、弛緩したオレは、蘭の中から己を抜いた。
蘭の中心部からは、オレが放った白濁した液が混じった、赤いものが、流れ出している。
ああ、本当に、蘭の純潔を、オレが貰ったんだな。
その実感が湧きあがる。

蘭は、ギュッと目をつぶっていた。

「は……はあ……はあ……っ!蘭……大丈夫か?」

オレの声に、蘭が目を開ける。

「だい……じょぶ……新一……」
「ゴメン。全然、加減、出来なかった……」
「謝らないで。新一……わたし、とても幸せ……」

蘭が、弱々しく微笑んだ。

「オレも、すげー幸せだ、蘭……」

オレは、蘭を抱き寄せて、その耳に囁いた。



雪降る寒い晩。
世間ではキリストの聖誕祭で賑わう日に。

オレ達は、誰にも内緒の初夜を、過ごしたのだった。




(3)に続く


+++++++++++++++++++


はあはあ。やっと書き終わった。
イブには間にあわなかったけど、クリスマス当日には、何とか。

このお話、何が苦労したかって、新一君一人称のエロ。
どう引っくり返っても私は女なので、男性の感覚が分からん!

ずっと蘭ちゃん視点にするなり、三人称にするなり、すれば良かった事ですよね。
はい、すみません。

(1)と(2)との間は数ヶ月の時間がありますが、次の(3)は、ほんの数日後の予定です。

(1)が蘭ちゃん視点、(2)が新一君視点、(3)はまた蘭ちゃん視点の予定。


そして。
web上で(4)があるのかどうかは、分かりません。


このシリーズの本当のタイトルは、実は、「誰にも内緒」ではなかったんですよね。
でも、本来のタイトルでは、先がスッカリ読めてしまうという。

そして、これ、別の新蘭パラレルの対になっているんです。
そちらは、閉鎖した某ブログに掲載していたもので、まだ、ラブ天の方には載せていませんが。


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