むらさきの にほえる……



byドミ



(陸)ちぎり



 新一の舌が蘭の口腔内に侵入して、蘭の舌を探り、絡めると。蘭はぎごちなくそれに合わせて来た。角度を変えながら口付けを続け、蘭の口内を犯す。荒い息遣いと微かな水音が響いていた。
 新一は、蘭の甘い唾液と舌の感触をたっぷり味わいながら、浴衣の合わせ目から掌を滑らせ、蘭の胸に直に触れた。その感触を感じてか、蘭が身震いする。
 新一がようやく唇を離すと、二人の唾液が混ざり合ったものが銀の糸のように二人の唇を繋げていた。蘭の唇は濡れて紅く光り、その瞳は情欲の色を湛えている。
 新一は蘭の首筋に唇を落とし、蘭の胸をはだけさせ、掌で揉みしだき始めた。蘭の全身がぶるりと震え、蘭が大きく喘ぐ度に、豊かな胸が大きく上下してふるふると揺れる。

「あ……ん……」

 蘭の唇からは吐息と共に甘い声が漏れる。
 白くきめ細かく滑々とした肌、胸の膨らみは弾力がありつつも柔らかく、その頂は赤く色付いている。想像以上の美しさと、掌に感じる感触の気持ち良さに、新一は脳髄が痺れ、新一のものはその存在を誇示していた。
 蘭の赤い果実を指の腹で擦ると、そこはつんと固く立ち上がった。

「ハア……ん」

 蘭が甲高い声を上げ、慌てたように手で口を押さえた。その恥らったような動作に、新一は自分の熱がますます高まるのを感じていた。
 新一は蘭の首筋から胸にかけて、唇で触れていき、胸の膨らみに赤い印を残す。
 新出に見られてしまえば蘭が詰られるかも知れないが、新一は蘭を手に入れる為に、自分が愛した跡を敢えて残そうと、小ずるい事も考えていた。
 蘭の体はシミ一つない。新出は所有の印を蘭の肌に残さないのか、それともここ最近蘭の肌に触れていないのか。そう考えた後新一は頭を横に振った。蘭が新出に抱かれる姿なぞ、想像したくもなかった。

「あ……はん……」

 新一の指や唇が蘭の肌を滑って行くと、蘭は甘い声を上げ、体がピクピクと反応する。感度は非常に良いようだ。
 考えたくはないけれど、蘭の体に最初の印を残し、感覚を呼び覚ましたのが新出だと思うと、新一の胸は嫉妬にキリキリと痛んだ。立場としては自分が「間男」である事は重々承知の上だが、それでも蘭が他の男を受け入れていたというのは、耐え難い現実であった。
 蘭は、初心な娘のように体を震わせ恥らっている。ともすれば嫉妬のあまり乱暴な行為に及びそうになるのを、新一は必死で押し止め、蘭の体を優しく愛撫して行った。

「あ……子爵様……」
「……オレの腕の中で、その呼び方は止めてくれよ、蘭」
「ハア……何と……お呼び、すれば……」
「新一、と。名前で呼んでくれ。蘭、オメーとオレとは、今ここではただの男と女。子爵だの伯爵令息だのといった立場じゃなくて、オレ自身を見て欲しい」
「ん……ああん……し、新一様……」

 新一は、「様」も余計だと思ったが、蘭にこれ以上を強いるのは無理であろうとも分かっていた。
 蘭の甘い声で自分の「名」を呼ばれる、それはゾクゾクするほど官能を刺激する。

 蘭が淫らに身をくねらせる。新一は蘭の浴衣を全て取り去ると、自身も浴衣を脱ぎ捨てた。
 そうして、改めて蘭の生まれたままの姿を見た。蘭の胸の膨らみは、豊かなだけでなくお椀を伏せたような綺麗な形をしており、腰はきゅっとくびれ、適度な大きさを持つ臀部から足に至るまで、完璧なラインを描いている。新一はその美しさに息を呑んだ。

「あ、あんまり見ないで下さいまし……」
 蘭が両手で胸と秘所を隠すようにして懇願した。
「蘭、すげー綺麗だよ……」
 そう言いながら、新一は蘭の両手を取り脇にどける。新一は猛った己を蘭の太ももに押し付けた。蘭がその感触を感じてビクリと身を震わせた。

「あ……ああっ」
「分かるか?オレがオメーを欲しがっているのが」
「し、新一様……」

 蘭の肌は白く透き通り、きめ細かで滑々としていながら、手にしっとりと吸い付くような感触で。新一の愛撫にほんのり赤く染まった様は、溜め息が出るほど綺麗だった。
 新一が蘭の淡い茂みの奥を探ると、その泉は既に蜜を溢れさせていた。
 新一は、蘭の体を充分鑑賞した後、抱き締めた。柔らかく滑々した感触を直接肌に感じて、新一の男性自身が更に固く屹立する。
 蘭の手が、新一の背中と頭に回され、喘ぎながらしっかりと新一にしがみついてきた。新一は再び蘭に深く口付け、新一の舌が蘭の口腔内を深く侵した。

 新一は一旦体を離すと、蘭の両足を抱え上げた。蘭の秘められた花は、赤く色付き蜜を湛えてぬめぬめと妖しく光っていた。
 新一はそこに顔を寄せ、舌で蘭の秘められた花を丹念に愛撫し始めた。

「あ、ああ……新一様……そんな……トコ……っ」

 蘭が身をくねらせ、両足に力が入るが、新一が蘭の両足の間に入り込んでいるので、足を閉じる事は叶わなかった。新一は、太ももの内側にも唇を這わせ、紅い印を残す。

「蘭。オメーは身も心も全部、すげー綺麗だけど……ここも、蘭の『花』も、本当に綺麗だよ……」
「いや……お願い、あまり見ないで下さいまし」

 新一の言葉に、蘭が羞恥の為か更に頬に血を上らせた。

 既に一度、他の男に手折られてしまった花。
 けれど、奪い取って自分のものにして、この先は他の男には触れさせない。

 蘭の花は蜜を溢れさせ、入り口を開いて芳香を放っていた。新一は、怒張した自身を蘭の入り口にあてがい、一気に突き入れようとした。

「う……っ……あ……つうっ……」

 蘭の入り口は、予想以上にきつく閉まり、新一の侵入を許さず。蘭の体は無意識にだろうが、新一の侵入から逃れるように寝床の上の方にずり上がって行く。蘭は苦痛の声を上げ、きつく閉じた瞳から涙が頬へと零れ落ちた。

「何っ……!?蘭、オメー……!」

 新一は、思いがけない事態に愕然として息を呑む。
 蘭の体は、新一の愛撫に反応してスッカリ準備を整えている筈だった。なのに……。新一は驚愕の中でようやく、蘭の体がまだ男を知らないという事実に、思い当たったのであった。

「新一……様……?」

 動きを止めた新一に戸惑ったように、蘭が目を開ける。
 蘭の慄きも恥じらいも、全ては「不倫の罪」に対してのものではなく、純潔の乙女であったからだったとは。

『駄目だ……止まらねえ……』

 蘭が処女である事に気付いたものの、ここに至って理性で踏みとどまろうとしても、最早ブレーキが利かない。ここまで来て、後戻りは不可能だ。少々強引にでも、蘭の中に入ってしまいたかった。
 けれど、蘭に全く痛みを与えないのは無理にしても、なるべく苦しめたくはなかったから。新一は宥めるようにそっと蘭の太腿の内側を撫でる。

「蘭……力を抜いて……」
「は、ハイ……うっ……!」

 蘭は素直に答えるが、蘭とてどうしたら良いのか、分からないのだろう。
 新一は蘭に深く口付け、蘭の胸の飾りと、蘭の入り口近くにある花芽を指で撫でる。

「あ、ああ、やあっ!新一……様ぁ」

 新一が、指を蘭の中に差し入れると、蘭は身を硬くして、入り口がキュッと閉じた。
 新一は、ゆっくりと指を侵入させて、抜き差しを始める。

「あああっ、んっんっんあっ、ふうん」
「蘭、気持ち良いか?」
「はあ……そんな……こと……ああんっ!」

 やがて、蘭の内部は熱く新一の指に絡まり始め、次から次へと蜜が溢れて行く。新一は、目眩がしそうになった。

「あっ……はああああああん!」

 やがて蘭が背中を反らせてひときわ高い声を上げ、果てた。

 新一は、肩で大きく息をしている蘭の、両膝の裏に手を入れて抱えあげ、広げると、再び自身を蘭の入り口に当てた。
 そこから滴り落ちる蜜に絡めるように、先端をこすり付ける。

「ああっ!」

 蘭がぶるりと震えた。

「蘭、行くぞ」

 蘭は震えて目をギュッと閉じたまま、コクリと頷く。今度も、新一のものはなかなか蘭の中に入って行けない。
 新一は、息を詰めている蘭の唇に唇を重ね、舌でちろちろと蘭の唇を突付き、蘭の口を開かせる。蘭の舌に自身の舌を絡め、蘭の口腔内の甘さを味わうように舌をうごめかせた。
 新一が蘭の唇を開放すると、蘭の口の端から二人の唾液が混じったものが流れ落ち、蘭は空気を求めるように大きく喘いだ。

 新一は、蘭の口の端と首筋に舌を這わせ、溢れた唾液を拭い取る。
 新一が腰を進めようとすると、蘭が無意識の内に体を強張らせてしまう。

 新一は蘭の胸の飾りを口に含み、ちろちろと舌で刺激した。

「あああん!」

 蘭が仰け反って嬌声を上げると、蘭の入り口が僅かに緩んだ。その瞬間に、新一のものは一気に蘭の奥深くに入り込んだ。

「……!!」

 蘭は、声にならない悲鳴をあげ、新一の背中に爪を立てた。

 たった今。
 新一が蘭を女にした、新一が蘭に破瓜の痛みを与えた、その事実に。
 新一の心にどうしようもなく歓喜が湧きあがる。少しばかり罪悪感を伴ってはいたけれど。

 必死で痛みを堪えている様子の蘭と対照的に、新一は蘭の熱い内部に自身を包まれて、天にも昇る心地良さを味わっていた。惚れた女性の中に入るというのが、これ程に気持ちの良いものとは。想像を遥かに超える感覚に、新一は酔った。

 新一は、このまま蘭の奥深く突き上げたくなるのを必死で我慢して、蘭が落ち着くのを待った。蘭の唇を開放し、蘭の耳元に囁く。

「蘭。オレがオメーの中に居るの、分かるか?」

 蘭は、声も出せない様子で、頷く。蘭の目尻から涙が溢れて流れ落ちるのを、新一は胸痛む思いで見つめ、そっと唇を寄せて吸い取った。

「蘭、大丈夫か?いてーだろ?」
「だ……大丈夫……です……」

 蘭が痛みを堪えてそう答えるのが、いじらしくて。新一は、蘭を愛しく思う気持ちが更に膨れ上がるのを感じていた。

「蘭っ!」

 新一は、蘭をギュッと抱き締める。蘭は自分のもの、自分だけのもの。蘭への愛しさと歓喜のあまり、目が眩んで息が止まりそうだった。

『オメーは、過去も今も未来も、オレだけのもんだ。ぜってー誰にも、渡さねえ。オメーの身も・・・心も』

 ようやく痛みが引いてきたらしい様子を見て取って、新一は言った。

「蘭、動くぞ、良いか?」

 蘭は、かすかに頷いた。

 この時代、良い家柄の男女は、将来に備えて「夜の営み」についても教育を受けている。蘭も、新一がこれから「動く」というのがどういう事なのか、頭では分かっている筈だ。
 蘭に更なる苦痛を与えるのは、新一にも心苦しい事であったが、生涯誰とも添い遂げない尼などではない限り、いずれはこの苦痛を味わう事になるのだから。新一は、自分に対してそう言い訳した。

 新一は、緩やかに律動を開始した。

「うっ……ふっ……ああっ!」

 新たに与えられる痛みに、蘭が苦痛の声を上げる。新一は、激しく突き上げたくなるのを捻じ伏せ、緩やかに動きながら蘭の痛みが落ち着くのを待った。

「蘭。スゲーいいぜ……」
「う……あ……しんいち……さま……」

 やがて、蘭の表情と声に少しずつ変化が生まれ、蘭の内部が新一自身に熱く絡み始める。

「あ……はあん……ああ……新一……さまぁ……」

 蘭の愉悦の表情と甘くねだるような声に、新一は自制の最後のたがが吹き飛んだ。そして、激しく腰を打ちつけ始めた。
 二人の激しい息遣いと喘ぎ声、嬌声、隠微な水音、寝台が軋む音が部屋の中に響く。やがて二人共に上り詰めた。

「ああああああっ!!……新一様ぁっ!」
「くうっ……蘭……くああっ……!」

 新一のものが脈動し、蘭の奥深くに熱いものを放ち、蘭はピクピクと痙攣するように身を震わせた。
 やがて新一は深く息を吐き出して弛緩し、蘭の中から自身をゆっくりと引き抜いた。

 蘭は、初めての激烈な感覚に耐えられなくなったのだろう、意識を手放してしまっていた。

「蘭……」

 新一は、そっと愛しげに蘭の髪を撫でた。

「それにしても……処女だったくせに、あの感じ易さは反則だろ」

 新一は思わず苦笑した。
 新一が挿入のその時まで、蘭が処女だと思わなかったのは、元々人妻であるという勘違いがあったからだが、蘭の感度が非常に良かった所為もある。
 純潔を失ってから「開花」までは、時間がかかる女性が多い。新一は、女性体験は皆無だったが知識は豊富だったから、そういった事も知っていた。
 ずっと焦がれていた蘭が、新一に純潔を捧げたのみならず、新一の腕の中で花開いたという事実は、とても喜ばしい事だった。

 人妻であっても手に入れたいと焦がれていた存在だった。それが思いがけず、純潔の乙女だった蘭を手に入れた事で、新一は有頂天になっていた。


 新一は、蘭が純潔を失った印を大量に流しているのを見て。丁寧に布でそれを拭った。
 箪笥から新しい布を取り出して、蘭の腰の下にそれを敷く。

 蘭の純潔を失った印は、布団に染み込んで簡単に落ちるものではない。貧しくもないが特別裕福という訳でもない新出家の布団を汚してしまった事にも、新一は罪悪感を覚えていた。

 そして新一は、蘭の隣に横になり、蘭を抱き寄せて目を閉じた。
 気持ちは昂っていて、眠るどころではなかったし。たった今、蘭の中に欲望を吐き出したばかりだというのに、既に新一のものは固く勃ちあがっている。


 新一は、蘭を抱き締め無上の幸福感に浸りながらも、色々と考えていた。
 蘭が、「新出医師の妻」でない事は、流石に既に分かっている。

 これまでの事を振り返り、ひかるが新出氏の妻である事、蘭が新出家の客人であるという事は、理解出来た。
 ただ、どうして蘭が長きに渡りひっそりと新出家に預けられているのか、それが分からない。

 以前、英理が有希子に漏らしていた意味不明の言葉。園子が新一に対して見せた剥き出しの敵意。新一の知らない裏事情が、そこにはありそうだった。


 そして。
 蘭を今夜思いがけず自分の手で「女」にしてしまった事への喜びと罪悪感が、新一の中でひしめき合っている。
 もしも、新一の勘違いがなく、蘭が純潔の乙女であると知っていたのなら。新一は今夜、おそらく自分の欲望を抑え、雷を怖がる蘭を、ただ腕に抱き締めて眠る事が出来ただろうと、分かっている。
 蘭が既に男を知っていると思い込んでいたからこそ、新一は自分を抑えられず強引に蘭を我が物としたのだ。新一は、蘭に申し訳ないと思い、自分を恥じていた。

 蘭が「人妻なのに流されてしまう女」だとは、最早思っていないが。
 今はすっかり止んでしまった嵐がなければ、果たして蘭は新一に体を許しただろうか?逆に、今夜ここに巡り会わせたのが他の男であっても、蘭は流されてしまったのではないか?その疑問は拭えていない。
 つまるところ新一は、こういう関係になってさえ、「蘭の気持ちが新一にある」という確固たる自信がなかったのだ。


「なあ、蘭。オレに純潔を捧げた以上、他の男に嫁ぐってのは無理だよな?だから……もう、他に道はねーぞ?どうせオメーもいつかは、親の命令でどこかに嫁がなきゃいけねえ立場。だったら、オレんとこに来い。ずっと……生涯、大切にすっから」

 新一はいまだ意識のない蘭にそう言って、その甘く柔らかい唇に自身のそれを重ねた。




(漆)に続く

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<後書き>

初夜を迎えた女性の反応ってのも個人差あって、初めてでも痛くない人出血しない人ってのも、稀にいます。
でも、流石に、新ちゃんが蘭ちゃんを抱いた後も、蘭ちゃんが初めてって事に気付かないのは、どうかと思うんで。

新一君の「蘭ちゃんが人妻」という思い込みは、初夜を迎えた事で終わりを告げる、最初からそれは決まっていました。
そこら辺で、「愛人(!!!?)生活」の完全男女逆バージョンは、無理がありますね。


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