もう一度、言って



byドミ



(6)二度目の交わり



初めて入る、新一の部屋。
蘭はベッドに横たえられ、圧し掛かって来た新一にきつく抱きしめられ、深く口付けられた。

新一の手が、服の上から、蘭の胸をまさぐる。

「んっ!」

思いがけず、甘い痺れが体を突き抜けて、蘭は口付けられたまま、くぐもった声を出した。

「蘭……蘭!」

蘭の唇を解放した新一が、狂おしく蘭の名を呼び、蘭の首筋に唇が落とされる。

「あ……!」

新一に触れられて、眠っていた蘭の快感が呼び覚まされる。
新一は荒い息をつきながら、少しずつ蘭の肌を露わにし、蘭の全身に口付けの雨を降らせた。

「あ……ん……ああっ!」

新一に触れられて、蘭は身もだえする。
電流のように、蘭の全身を快感が走った。


「すげ……オメー、最初の時よりずっと、感じやすくなってるな……」
「新一……ああん!じらさないでえ……!」
「ああ。行くぜ!」


蘭の泉からは、際限なく蜜が溢れていた。
新一のモノが入って来たとき、久しぶりの事だったのでさすがに痛みが走った。


「……っ!」
「ごめん。痛かったか?」
「だって……新一が早く抱いてくれないから……!」
「蘭?」
「わたし……わたし、ずっと、新一が抱いてくれるの、待ってたのに!新一が抱いてくれないから、処女返りしちゃったじゃない!」
「へえ。そうだったのか。そりゃ、勿体ないことしたなー」

新一が薄く笑い、蘭の唇に唇を深く重ねてきた。

「じゃあ、今度から遠慮せずにいただくことにするよ」
「ホント?」
「ああ。毎晩、思う存分、可愛がってやる」

そう言って、新一は突き上げを開始した。
最初は少し痛みがあったものの、すぐにおさまり、代わりに快楽の波が襲い始める。


「あん……ああん!新一ぃ……もっと……もっとぉ!」
「蘭……蘭……スゲー……お前のここ……オレのを締め付けて……」
「あああん!すごい……いい……っ!」

アルコールの所為で、蘭の慎ましさや羞恥心はすっかりはぎ取られ、普段はとても口にできないようなはしたないみだらな言葉が、蘭の口から飛び出す。

久しぶりだったためか、蘭がまだ高みに登りきる前に、新一の動きが止まり、蘭の中に大量の熱が放たれた。

「新一……もう終わりなの……?」
「いや。まだまだだよ。ちょっと待ってな」

新一が少し腰を揺らす。
すると、蘭の中の圧迫感がまた重量を増してきた。

「オメーん中、気持ち良過ぎ。何度でもやれそうだ」
「新一ぃ」
「しばらく禁欲生活だったから、オレもまだまだ足りねえ」

そして、新一がまた腰を動かす。

「あ……ああん!」
「結婚したら、毎晩、やりまくろうぜ」
「うん!いっぱい、して」


その晩、新一は、高みにのぼる寸前で一旦動きを止めて蘭を焦らしたりなどして、緩急をつけ、体位も色々変えて、時間をかけて蘭を抱き続けた。
実際に放出したのも、5〜6回はあっただろうか。

最後の辺りはさすがに蘭も、満足を通り過ぎ、快楽か苦痛か分からないような状態になり、お互いの体液まみれでベトベトになった状態で、気絶するように眠りについた。





蘭が目が覚めた時。

二日酔いの頭痛と、全身のこわばり・節々の痛みがあり。
体中がベトベトしていた。

「おはよう、蘭」

たった今、シャワーを浴びた風情の新一が、生まれたままの姿で寝室に入ってくる。

昨晩、散々やりまくった筈なのに、新一の局所は元気にそそり立っていた。


「きゃああああああっ!」

蘭は悲鳴を上げて、シーツを体に巻きつけ潜り込んだ。
昨夜の恥ずかしい言動の数々がよみがえってくる。

「蘭!?」

新一がシーツの上から蘭に触れると、蘭は激しく体をよじってそれを拒絶した。

「いやああああっ!お願い、新一!昨日のことは、全部、忘れて!」
「ら、蘭……オメー……」
「お願い!忘れて!」

新一が大きな溜息をついたのが聞こえた。

「わーったよ。オメーがそう言うんなら、昨夜のことは全部忘れる」

蘭は、羞恥心のあまりいたたまれず、シーツを頭からかぶったまま、すすり泣いていた。

新一の声が不機嫌そうになったのも、溜息をついたのも、昨夜の蘭のはしたない言葉に新一が呆れてしまったものだと、蘭は勘違いしてしまっていた。


酔った勢いで出してしまった本音が、蘭は恥ずかしくてたまらず。
蘭が新一に忘れて欲しいと願ったのは、蘭のはしたない言動だったのだが。

新一が蘭の言葉をどういう意味で受け取ったのか、新一が何故不機嫌になったのか、蘭には考える余裕がなかったのである。


「酒を飲ませなきゃ、まともに夫婦生活もできねえのかよ?」

新一のつぶやきは、蘭に届くことはなかった。





次に会った時、新一の態度が今までと変わりなかったため、蘭はホッとした。
けれど、やがて気付く。

新一の態度はどこかよそよそしく、蘭に全く触れようとしない。
キスどころか、手を握ろうとすら、しない。

『やっぱり、新一に呆れられて、嫌われちゃったんだ……わたし……』

蘭は、悲しかった。
それでも、新一は最初の約束通り「責任を取って蘭と結婚しようとしてくれている」と、蘭は思っていた。

『わたし……自分から、婚約を解消しようって、言った方が良いのかな?新一を……わたしから解放してあげた方が……』

そう思いながらも、蘭は自分から別れを言い出すこともできずにいた。

2人はギクシャクしながらも、日々は過ぎ、結婚式の日が近づいてきた。



   ☆☆☆



蘭も新一もお互いを何となく避け、デートらしいデートもないまま日が過ぎていたが。
結婚式の打ち合わせがあまりにも進んでいなかったので、蘭は勇気を振り絞って、新一に、会えないかと尋ねてみた。

新一が待ち合わせの場所に指定したのは、以前、蘭が新一に連れて行ってもらったバーだった。
蘭が酔い潰れて新一の家に泊まり、一線を越えることとなった、バー。
ある意味、思い出の場所とも言えたが、新一に愛されていないと思い込んでいる蘭にとって、そこは、辛い場所でもあった。

「ひょっとしたら、遅くなるかもしれねえ。もしオレが閉店までに来られねえ時は、タクシーでオレの家まで行って、泊まってくれ」

新一からは、家の鍵とタクシーチケットを渡されながら、そう言われた。
蘭は頷きながら、蘭が泊まるなら新一はまた抱いてくれるだろうかと、少し考えていた。
今度こそは、素面のまま、醜態をさらさないようにして、新一に抱かれようと……蘭はそういう風に思っていた。

『だけど、わたし……新一から嫌われているみたいだし……新一はその気になってくれないかも、しれない……』

蘭はそう考え、新一に拒絶される様々なパターンを妄想してしまい、落ち込んだりもした。

そして、蘭は、待ち合わせのバーに向かったのだが。


新一も蘭も、忘れていた。
蘭は強度の方向音痴、酔っ払って一度連れて行かれただけのバーに、蘭がたどり着けるはずがなかったのだ。

蘭はスマホで検索してみたが、店の名前で検索してもうまくヒットしなかった。


街中をグルグル回りながら途方に暮れている蘭に、声がかかった。

「毛利じゃないか。どうしたんだ?」

そこにいたのは、新一と蘭がいたミステリーサークル代表の塚本だった。
蘭は何となく気まずい思いで曖昧な返事をする。

「こんな時間に、女ひとりで街をうろついて……工藤は?」
「……新一は、何だか用があるみたいで……一応、待ち合わせ、してるんだけど……」
「ヤツも忙しいよなあ」

塚本は、気まずい「婚約祝い飲み会」など、なかったかのように、屈託なく声をかけてくるが、蘭は何だか居たたまれなかった。

「ま、いいや。待ち合わせまで時間があるんだろ?その間、ちょっと一杯だけ、付き合ってくれよ」

蘭は逡巡した。
新一以外の男性と二人で飲みに行くなんて、抵抗があったのだ。

けれど、バーを探してウロウロしていたため、疲れてしまった事情もあり。
サークル代表の塚本は、今まで紳士的だったこともあり。

ちょっとだけ休憩する積りで、塚本と共に近くのバーに入ったのだった。

「あ、あの……わたしは、ノンアルコールで……」
「なんで?毛利は飲める口だし、一杯くらい、良いだろ?」
「でも……」
「あー。わかったよ。ノンアルコールビールな?」

塚本は、トイレついでに注文をしてくると言って席を立った。
蘭は、わざわざ席を離れたところで注文しようとする塚本に対し、特に疑問に思うことなく、待った。


蘭の携帯が震える。
表示を見ると新一からだった。

『蘭?どこにいるんだ!?』
「新一……道に迷っちゃって……」
『あっちゃー……そうか、オメー、方向音痴だったな……で、今、いる場所、分かるか?』

蘭は、店に入るときに見た店の名と、表示してあった住所を、新一に告げた。

『そこって、バーだよな……一人で入ったのか?』
「ううん。たまたま会った塚本さんと……」

一瞬沈黙が下りた。
少し経って、新一が言った。

『わーった。迎えに行くから、待ってろ』
「うん……」

蘭が電話を切ると、手にグラスとジョッキを持った塚本が戻ってきた。


「ほら。ノンアルビール」
「あ、ありがとう……」

蘭は、何の疑問も持たずに口を付ける。
喉が渇いていたので、半分くらい、一気に飲んだ。

「え?これって、本当にノンアル?」
「ああ。最近の技術はすごいよな。ノンアルでも、味に遜色ないだろ?」
「でも、何だかすごく苦いよ……」
「え?そう?」
「うん……」

蘭はさすがに、それ以上口を付ける気にならず、色々話しかけてくる塚本に適当に返事をしていたが。
強烈な睡魔に襲われ、意識を手放した。




(7)に続く


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<後書き>

ええっとお。
オリジナル話では、ヒロインが、憧れていた男に誘われ飲みに行き(ただ飲みに行っただけ!何も無し)ほわわんとした気持ちで帰ったのだけど、それを婚約者が見ていて……という展開だったのですが。

蘭ちゃんの初恋は新一君!サークル内に憧れの男がいるなんてとんでもない!
けれど実は、この「飲みに行く」というのが物語のキーでもあるわけで……色々こねくり回したら、更に極悪なトンでも展開になってしまいました。

寝ている蘭ちゃんに不埒なことをする気満々な塚本ですが、もちろん、そんなことにはさせませんとも!ええ、けして!
そこだけは譲れないドミです。

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