もう一度、言って



byドミ



(2)プロポーズ



蘭は、酔ってはいたけれど。
状況は分かっていたし、受け入れたのは、相手が新一だったからである。

けれど、素面であればさすがに、新一を誘うような真似もしていないし、あっさりとこの状況を受け入れもしなかったであろう。
判断能力は少しばかり残っていたけれども、羞恥心や慎みや理性といったものが、今の蘭からははぎ取られていた。

蘭は新一に抱きしめられ、口付けられたまま。
新一の手が器用に動き、蘭の服が、1枚1枚取り去られる。

蘭の上半身が、胸を覆う下着一枚だけになった。
露わになった蘭の肌を、新一の手が滑って行く。

「あっ……ふっ……」

新一の手の感触が、くすぐったいが、心地良い。
蘭の息が上がり始め、新一の息づかいも荒くなっていた。

新一の手が、蘭の背中に回り。
ごそごそと動いたかと思うと、蘭の胸の下着が緩んだ。
蘭の胸の膨らみが、外気にさらされる。

「ああっ……やっ」

新一が息を呑む気配がした。
新一の手が、蘭の胸の膨らみを覆うように当てられ、その指先が、敏感な胸の果実を軽く撫でた。

「ひっ……あう……っ」
「すげえ……想像してたよりずっと綺麗だ……蘭……それに……柔らけえ……」

胸の果実の片方が、新一の口に含まれ、その先端が舌でこね回された。

「ああん!」

下腹部まで貫く快感に、蘭は思わず高い声をあげ、背を反らす。
蘭の大事なところから、何かがとろりと溢れ出す感覚があり、蘭は戸惑った。
自分で自分を慰めた事もない蘭にとって、全ては未知の感覚だった。

ただ。
アルコールでどんなに理性が飛んでいようとも、この感覚は、相手が新一であるからこそもたらされているのだという事だけは、分かっていた。

「あん……はあん……ああっ……」
「蘭、オメー、すげー感じ易いんだな」
「え……?か、感じ易いって……?はんっ!」

新一の言葉に、蘭は一瞬戸惑ったが、すぐに思考が白濁してしまう。

胸への刺激に気を取られていると、新一の手は、蘭の露になった太腿をさすり始めた。

「あっ……!」

新一の手が、蘭の大事なところを隠す最後の布にかかった。
生まれたままの姿になった蘭は、目をぎゅっと閉じ、ブルリと身を震わせた。

「蘭、寒いか?」

新一の言葉に、蘭はかすかに頷いた。
寒い、というのとは、少し違うと思っていたけれど。

「すぐに、熱くさせてやるよ」

そう言いながら、何故か新一の手が蘭から離れて行く。
新一の温もりがなくなった事で、蘭は本当に寒さを覚え、不安になった。

「新一……」

思わず、手を空に彷徨わせる。

「ん?どうした、蘭?」

新一が蘭の手を取り、ぎゅっと抱きしめられた。
いつの間にか、新一も服を脱いでいて。
蘭の胸と腹部に、新一の素肌を感じた。

「新一……」

逞しい胸板、引きしまった腹部、その感触が心地よく安心できて、蘭は新一にしがみつく。

「酔ったオメーが、こんなになるとは、思わなかったよ」

新一が苦笑混じりに言って。
蘭の唇が塞がれた。
新一の舌が蘭の口内を蹂躙し、蘭の舌に絡められる。

「んふっ……」

蘭が、その甘い感覚に酔っている間に。
新一の手が蘭の両足を、ぐっと押し広げた。

蘭の大事な場所に、新一の指が触れているのを感じて、蘭はビクリと体を震わせる。
新一が、蘭の唇を解放し、少し体を離して上から蘭を見下ろす。
蘭自身すら見た事がない、秘められた場所を、新一にじっと見詰められていた。

新一が屈みこみ、蘭のそこを指と舌で刺激する。

「あ……んああっ!」

敏感な花芽を刺激されて、蘭は思わず声をあげた。
蘭の中心部から、また、とろりと流れ出すものがある。

突然、蘭の内部に侵入してきたものがあった。

「やっ……やだっ!」

そこに何かの侵入を許すのは、それこそ、生まれて初めての事で。
蘭は思わず身をよじる。

「ホンモノは、こんなもんじゃねえぜ?少し慣らさないとな」
「うっ……ああっ……!」

蘭の中で蠢く物の正体も、今の蘭には分かっていない。
痛みまでは行かないが、強い異物感に、蘭は戸惑う。
けれど、徐々に別の感覚が、湧き上がって来た。

「ああん……はん……新一ぃ」

蘭は、シーツを掴んでのけぞり、声を上げ始めた。
すると、蘭の中に入り込んでいたものがずるりと抜け出て。

「あん!」

蘭は喪失感に、小さく声をあげた。
新一に、両足を抱えられ、大きく広げられる。


「蘭。口で息をして……」
「えっ?」
「力、抜いておけよ」

蘭が、新一の言葉の意味を訊き返すより先に。
灼熱の塊が、蘭の中心部を穿った。


「あっ!いたっ!やああああああっ!」

身を引き裂かれる痛みに、蘭は思わず悲鳴をあげる。
思わず痛みから逃れようと動く蘭の体を、新一の腕がしっかりと抱き留めていた。

気が遠くなりそうな、絶望的な痛み。
やがて、新一の動きが止まり、痛みが徐々に落ち着いて来た。

「蘭」

蘭の耳元で囁かれる声に、蘭はぞくりとする。

「蘭、大丈夫か?」
「う、うん……」

蘭は、かろうじて返事をした。
いつの間にかぎゅっと閉じていた目を、開けると。
新一の目が、すぐ間近にあった。

強く熱い中に優しさと労りがある新一の眼差しに、蘭はドキリとした。


「蘭。オレ達、今ひとつになってんだよ。分かるか?」
「えっ?」
「ホラ。ここで、繋がってる」

新一がそう言って、少し腰を揺らした。

「あっ……!」

蘭の秘められたところに、新一のものが根元まで埋め込まれていて、2人の体が繋がっている。
蘭は、ずっと好きだった新一と、今、セックスしているのだという事実を、今更のように実感して。
涙が一滴、零れ落ちた。

「蘭!?いてーのか!?」
「今は、大丈夫……」

新一の慌てたような言葉に、蘭は微笑んで返した。
新一がホッとしたような笑顔になり、蘭の唇に軽く口付けて来た。

「蘭。動くぞ、良いか?」

蘭が頷くと、新一はゆるゆると腰を動かし始めた。

「あっ……んっ……しんいち……」

再び強い痛みが蘭を襲い、蘭は新一にしがみ付きながらそれに耐えた。

「くっ……うお……蘭っ!」

新一の動きはだんだん激しくなり、隠微な水音と体がぶつかり合う音が響く。
そして、蘭の奥底から、痛みではない感覚が、湧き上がって来た。

「あん……はん……あああん……んあんあん……しん……いちぃ……」
「蘭……らんっ!くうっ……!」

痛みを凌駕する快感に、蘭は背を仰け反らせた。

「んんああっんああああああああっ!」
「くっはっ……蘭っ!」

蘭が、一際大きな嬌声をあげて果てるのと。
新一の激しい動きが止まり、新一のものが脈動し蘭の奥に新一の熱が放たれたのは、ほぼ同時だった。

「    」

蘭の耳に、新一が何事かを囁いたようだったが。
蘭はそれを聞きとる事なく、意識が遠のいて行った。



   ☆☆☆



そして。
蘭が目覚めた時には、すっかり朝になっていた。

酔いは勿論、すっかり醒めていたし。
現状認識が出来ると、恥ずかしさや諸々の感情が、沸き起こっていた。


「すまん!責任は取る!」

そう言って頭を下げた新一が、何を言いたいのか、何を考えているのか、蘭は見当もつかなかった。

「せ、責任って……?」

蘭は、震える声で、そう返した。
すると、新一が頭をあげ、蘭を真っ直ぐに見詰めて、言った。

「結婚しよう」
「えっ?」

蘭は、あまりにも驚いて、目をしばたたかせた。
新一の言葉の意味が、頭に入って来ない。

「な、何で?」

蘭は、思わずそう返していた。
新一が、苦虫を噛み潰したような顔になる。

「オメー、昨夜のこと、覚えてねえのか?」
「そ、それは……覚えて……いるけど……」

蘭が、消え入りそうな声で言って、身を縮めた。
穴があったらどころか、穴を掘って作ってでも入りたい位に、恥ずかしい。

「オレは、酔った勢いで、オメーのバージンを奪った」

新一の言葉に、蘭は胸を抉られた。
昨夜の事は、新一にとっても、酔った勢いの過ちだったのかと、思ったのだ。

「それに……オレは、避妊してねえ。一度の事で、子供が出来るかどうかは、分からねえけど。オレは、男として、昨夜自分がしでかした事に、責任を取りたい」

じゃあ、あなたにとって、わたしの意思は、わたしの感情は、どうでもいいの?
蘭の頭の中で出て来た言葉は、ついに、蘭の口から出る事はなかった。

「ふつつか者ですが……よ、よろしくお願いします」

蘭の口からは、蘭自身思いがけなかった言葉が、飛び出してしまっていた。

蘭はあまりにも新一の事が好きだったので。
たとえ、どういった事情であれ、新一の「プロポーズ」を蹴る事など、出来なかったのだった。


新一は、ホッとした様子で、柔らかな笑顔になった。

「ありがとう、蘭」

そして、新一の顔が近付いて来る。
素面の状態で、蘭は新一の口付けを受け止め。

そうして2人は、婚約者になった。




(3)に続く


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<後書き>

元々オリジナルで考えていたお話を新蘭変換するにあたっては、やっぱり色々変わっています。
オリジナルだと、ヒロインは他にほのかに惹かれている男がいたが、「抱かれてその気になる」んですよ。でも、新蘭でそれは絶対やりたくない。
たとえ体から始まる関係であっても、お互いに知らないだけで、やっぱり気持ちが先でないと。

その分……新一君が余計ヘタレの情けない男になってしまいましたが。

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