<はじめに:注>

このお話は、基本的には新蘭ラブラブで、ハッピーエンドです。
しかし前半に一部シリアスな部分があります。
「蘭ちゃんに冷たくあたる新一くん」や、「新一くんの寝込みを襲う蘭ちゃん」、そんなのは新一くんや蘭ちゃんじゃない、絶対に見たくない、という方は、迂回する事をお勧めします。
読んでからの苦情は一切受け付けませんので、あしからず。






<エースヘブン移転2周年プレゼント裏小説>





シンデレラ・ハネムーン



byドミ様



「阿笠博士、新一の家の鍵貸してくれる?」
「蘭くん・・・構わんが、どうしたのかの?」
「きっと近い内に新一が帰ってくるから、掃除しときたいの」

帝丹高校きっての美少女・毛利蘭は、3月に入ったある日、幼馴染の工藤新一の隣人・阿笠博士の所へやって来ていた。
阿笠博士は蘭に工藤邸の鍵を貸してくれたが、その時の博士の眼差しがもの言いた気な哀れむようなものであった事に、後になって蘭は気付くのである。
今の蘭は、新一が帰ってくる予感に幸福感で一杯だった。





数日前、蘭の家で預かっていた、蘭が弟のようにも思う男の子・江戸川コナンが、母親である江戸川文代に連れられて両親の元へと去って行った。
短い間だったけれど家族同然に過ごした子供との別れは寂しかった。

けれど、蘭は信じていた。
彼は姿を変えてじき戻って来ると、きっとまた会えると。
それを裏付けるかのように、別れ際コナンは言ったのだ。

「新一兄ちゃん、きっとすぐ帰って来るから。きっとすぐに会えるから」







「あ、いっけない!博士に鍵返すの忘れちゃった、どうしよう・・・」

広い工藤邸を時間をかけて掃除し、心地良い疲れを覚えながら家路を辿っていた蘭だったが、ふと工藤邸の鍵を阿笠博士に返し忘れた事に気付いた。
返すのは明日で良いか、と思い直して蘭は3階にある自宅への階段を上って行った。
そして結局その鍵は蘭のバッグの底に忘れられたままになったのである。







「ねえ蘭。新一くん、さっき職員室に入って行ったよ。いつの間に旦那帰って来てたの?」
「え?園子、それ本当なの!?」

蘭が工藤邸の掃除をしてから更に数日後、蘭は教室で親友の園子から思い掛けない話を聞いて仰天した。

『新一が戻って来てるのに、私に何も告げてくれないなんて、そんな馬鹿な筈ない!』

蘭は慌てて教室を出ようとしたが、その時チャイムと共に教室の前のドアが開き、担任の教師と共に新一が教室に入って来た。

蘭の動きが止まる。
新一は、蘭の方をチラリとも見ようとはしなかった。

思い掛けない人物の出現に教室がざわめき出す。

「静かに!」

担任教師の声が響いた。

「え〜、みんなに残念な・・・あ、喜ぶべきなのかも知れないが・・・知らせがある。長い事休学していた君達のクラスメートである工藤新一君が、この度アメリカ留学する事になった」

一旦静まり返った教室が再びざわめき出した。

「長期の留学で、大学もあちらに行くという事だ。工藤君に取って日本と言う舞台は小さ過ぎるのかも知れない。帝丹高校としても、喜んで送り出し、工藤君のあちらでの活躍を祈りたいと思う」

ざわめきは更に大きくなった。


帝丹高校側としては、ある意味渡りに船の話であったろう。
今はもう既に3月、本来なら学年末試験も受けていない工藤新一は、普通ならまず留年であるが、そうは行かない事情もあった。
成績優秀で東都大にも余裕で現役合格出来るだろうし、世間にも著名な名探偵である工藤新一を、長期休学を理由に留年させてもよいものかという声も一方であった。
彼位優秀だと大検という手もあり、杓子定規に「留年」と決定したら、下手すると「それなら学校辞めます」と言い出しかねないのだ。
しかし、新一が米国留学の道を選んだ事で、学校側ではその判断を避ける事が出来たのである。


蘭は、一体何の話があっているのか、理解出来なかった。
思わず新一を見詰める。
新一は蘭の視線に気付いたように蘭の方を一瞬見たが、すぐに視線を逸らせてしまった。



  ☆☆☆



「ねえ蘭、一体どういう事なの?あんた何も聞いてないの?」

園子が蘭を揺さぶって訊く。
担任教師も新一もとっくに教室を出て行っていた。

「・・・聞いてない。私何も・・・聞いてないよ・・・」

蘭は呆然として呟く。
その目には何も映ってはいなかった。

「蘭?蘭!?」

園子がなおも蘭を揺さぶる。
蘭は突然立ち上がった。
そして教室を駆け出して行く。
後ろで園子が叫んでいる声が聞こえたが、蘭はただ一目散にある場所へと向かって行った。



  ☆☆☆



「何だよ・・・オメーまだ授業中だろ?」

工藤邸の現在の主は、駆け込んで来た蘭をみとめると、呆れたようにぶっきらぼうな声で言った。

「し、新一・・・ッ!戻って来たんなら、何で教えてくれなかったの?そ、それに、アメリカに行くって、・・・急にそんな・・・!」

蘭は自分でもなにをどう言いたいのか解らず、もどかしそうに言葉を紡いだ。

「ああ・・・別に良いだろ?学校に行きゃあどうせ伝わるんだしよ。アメリカは、以前から考えてた事だ。親がアメリカに居るし、それにこのまま日本に居てもおそらく留年になりそうだし、なら思い切って新天地に行こうかと思ってよ」
「そ、そんなの、私・・・!」

聞いてない、と続けようとして蘭は言葉を呑み込む。
ふいに、新一から「何でオメーに教えなきゃなんねーんだよ?」と冷たい答が返って来そうな気がして怖くなってしまったのだ。
新一は困ったように蘭を見た。

「その・・・オメーには世話になりっぱなしで黙っててわりぃって思ってっけどよ。けど、俺の人生の問題だから」

「俺の人生の問題」と言われ、蘭は打ちのめされた気持ちになった。
つまるところ新一に、蘭は他人だと、関係ないと言われているも同じなのだ。

「し、新一・・・私、私ね・・・新一の事が・・・」
「ストップ!」

蘭が思わず口走りかけた言葉を新一が遮る。
新一は息を吐くと、真っ直ぐ蘭を見詰めた。
今までに見た事がない冷たい眼差し・・・けれどどこか悲しみを秘めているように蘭には思えた。

次に新一が言い放った言葉は文字通り蘭の胸を貫いた。

「それ以上言うなよ。俺達幼馴染では居られなくなっちまうだろ?」

暫らく時間が止まったような気がした。
やがて、新一が蘭の気持ちを知った上でそれを拒絶したのだとわかり、蘭は気が遠くなりそうになった。

「オメーは俺にとってこの先もずっと大切な幼馴染だ。それはきっと変わる事ねえから」

新一の言葉がどこか遠くで聞こえた。



  ☆☆☆



蘭は自室のベッドに突っ伏していた。
工藤邸からどうやって帰って来たものか、自分でも覚えていない。

涙が後から後から溢れてくる。
新一に自分の気持ちを知られ、そして拒絶される事がこれ程に辛いとは、想像もしていなかった。
無事で居てくれれば、そしていつか戻って来てくれればそれだけで良いと思っていた筈だったのに、と蘭は思う。

『私、いつの間にか期待してた?コナンくんが思わせぶりな事言うから、きっと新一も私の事をっていつの間にか自惚れてたの?』

コナンが新一だと信じていたのがそもそも馬鹿な思い込み、自分に都合の良い願望だったのだろうか?

新一はあと1週間もすれば日本を発ってしまう。
恋人でもない自分は、後を追う事も出来ない。

蘭の胸を自分でも信じられない位の絶望が覆っていた。
新一が居なくなってから今日までは、希望を持っていられた。
勿論、気を揉む事や心配事はたくさんあった。
(コナン=新一だと確信していたので)無事である事はわかっていても、無理していないだろうかとか、人知れず苦しんだり辛い思いをしたりしてないだろうかとか、解決への見通しはどうなんだろうとか、新一さえ苦戦するような大きな事件に関わって本当に大丈夫なんだろうかとか、そういった事はいつも心配だった。
けれど、新一ならいつかきっと事件を解決して戻って来る、また前のように一緒に過ごせる、そう信じている事が出来た。

なのに今は――ただ、新一がアメリカに行って物理的に離れてしまう、と言うだけではない。

新一は、蘭が秘めていた想いを知っていた。
その上で、それを拒絶されてしまったのだ。

蘭は、この先一体どうやって生きていけば良いのだろうと真剣に思い詰めてしまったのである。


蘭のバッグが椅子から滑り落ち、何かがチャリンと音を立てた。
それは、工藤邸の鍵。
それを見詰める蘭の目に、奇妙な色が浮かび上がっていた。



  ☆☆☆



しんと静まり返った工藤邸の中は、窓から差し込む月の光に照らされて結構歩き易かった。
蘭は、足音を忍ばせながら、勝手知ったる工藤邸の中を歩いて行く。

幼い頃からよく遊びに来ていた家だが、2階まで上るのは久し振りの事だった。



新一の寝室のドアを開ける。
新一はベッドで仰向けに寝ていた。
蘭の心臓は、自分の動悸で新一が目覚めるのではないかと心配する位に早鐘を打っていた。
蘭は数回深呼吸をして気を落ち着かせると、音を立てないように後ろ手にドアを閉めた。
そして・・・身につけていたものを脱ぎ始め、生まれたままの姿になった。
冷気が肌を刺すが、蘭はそれにすら気付かない。
蘭は新一のベッドに近付き、ベッドの上に乗って新一の傍に膝間付いた。

「新一、ごめんなさい・・・あなたにとって凄く迷惑だってわかってるけど・・・あなたが遠くに行ってしまう前に・・・私の体にあなたの存在を刻んで欲しいの・・・」

蘭は新一のパジャマに手を掛け、新一が目を覚まさないよう気を付けながら、それを脱がせて行った。

「でも・・・これからどうしたら良いのかしら?」

全裸になった新一を見下ろして蘭は途方に暮れていた。
未経験な上にその手の知識は殆どないのである。
男のアレが女のアソコに入るのがその行為、という位はわかるものの、今現在の新一のアレが勃起した状態なのか否かさえわかっていないのであった。

蘭はなるべく新一のアレを視界に入れないようにしながらも、どうも話に聞く「天に向かってそそり立つ」状態ではなさそうだと思う。

「刺激したら大きくなるって言うけど・・・刺激するって・・・どうするの?」

恐る恐る新一のアレに手を触れてみる。
蘭の指が触れた途端、アレはピクリと動いた。

「え・・・!?」

蘭は驚いて手を引っ込めたが、意を決して再びそれに触れてみる。
どのように刺激したら良いのかなど全く知識はないながらも、触れている内にそれはムクリと勃ち上がった。

「きゃっ・・・!」

思わず声を出してしまい、慌てて口元を押さえる。
新一のアレが勃ち上がった時の大きさは想像以上で、蘭は怖気づく。

しかし再び意を決して、新一の上にまたがり、自分のアソコを新一のアレの上に押し当て、挿入を試みようとした。

「・・・っ!いたあっ!」

当然の事ながら、まだ男性を受け入れた事がなく慣らしてもいない蘭のアソコに新一のアレが入る筈もなく、あまりの痛みに蘭は気が遠くなりそうになる。

「うっ・・・新一・・・」

意を決してここまで来たのに、これ以上事を進める事が出来ず、蘭は自分が情けなくて涙が出た。

「これ位・・・この位の痛さなんて・・・!」

しかし蘭がどう思おうと、現実に蘭のアソコにそんなに簡単に新一のアレが入る筈もなく、蘭の焦りを他所に時間が過ぎて行く。



「ら、蘭!?」

驚愕に満ちた声がして、蘭は新一が目覚めたのを知った。
新一が逃げようとする蘭の手をいち早く捕らえ、素早くサイドランプを点ける。

「オメー一体・・・」

言い逃れようのない状況に、蘭は全身が羞恥に震えた。
新一がパジャマの上着を蘭に着せ掛けて来ようとするのが惨めで堪らない。
しかし既にこの状況を知られてしまったのだから、蘭はもう開き直って腹を括るしかなかった。
新一が掛けてくれようとしたパジャマの上着を振り払って新一に抱きつく。

「新一、お願い・・・!迷惑なのはわかってる、私相手じゃその気になんかなれないのもわかってる。でも、1度だけで良いの、思い出が欲しいの。それ以上我侭言わないから、お願い・・・!」

新一は何も言わなかった。
ふいに何か生暖かいものが新一の胸板に押し付けている蘭の顔に触れた。
訝しく思って見るとそれは赤くどろりとした液体であった。
慌てて顔を上げると、真っ赤な顔をした新一が必死で鼻を押さえている。
赤いものは、ぼたぼたと滴り落ちる新一の鼻血だったのだ。

蘭の体には、結局新一から強引にパジャマの上着を着せかけられた。
ようやく鼻血が落ち着いた新一が、溜息を吐いて言った。

「オメーな・・・俺を出血多量で殺す気か・・・?」
「え?」
「オメーにこんな事されて、俺が冷静で居られると思ってんのかよ」
「新一・・・?」
「俺がオメー相手にその気になれないなんて、そんな筈ねーだろが。ホラ・・・」

新一が指差す方を蘭は不思議そうに見た。
そこには、先程新一が眠っている間に蘭が刺激した時よりもずっと大きく天を向いてそそり立つ新一のアレがあった。


「キャアアアアアアアアアッ!」


蘭は思わず悲鳴を上げてしまっていた。

「オメーな・・・ったく、さっきはあんな大胆な事しといて、その反応は何なんだよ!?」
「えく、うくっ・・・だってっ・・・!」
「オメーって、本当にスゲーよな・・・何仕出かすかわかんねえんだから」
「だ、だって・・・!うくっ、ひっく」
「泣くなよ。オメーに泣かれると俺は困るんだって」
「ご、ごめ・・・ヒック」

蘭とて出来るものなら泣きたくはなかった。
泣いたら迷惑を掛けると思い、止めたいと思うのに涙が止まらない。

何も考えられずにパニックになっていた蘭を新一が優しく抱き締めて来た。

「え?し、新一・・・?」
「ごめん・・・元はと言えば、オメーをここまで追い詰めた俺がわりぃんだよな。何も言わずに去るのが蘭の為だって・・・思ってた・・・」
「新一・・・?」
「愛してる」

蘭は息を呑んだ。
思いもかけない新一の告白に、空耳ではないかと思ってしまう。

「蘭。オメーを愛してる。誰よりも愛してる」
「だったら、何で・・・?」

蘭は新一の顔を見上げた。
新一が真剣な瞳で蘭を見下ろしている。
その瞳の色の深さに蘭は囚われる。
新一の顔が近付き、蘭は目を閉じた。
全てを奪い尽くすような激しい初めてのキスに、蘭は暫し何もかも忘れて身を委ねた。



「蘭。オメーは気付いてたんだろ?蘭の傍に居た眼鏡の坊主の正体に。俺がずっと、本当はどこに居たかって事に」

新一が蘭の肩口に顔を埋めて言った。
蘭は躊躇いつつも頷いた。
新一はかなりはしょりながらも、自分がある毒薬を飲まされて小さな子供の姿になった事、自分を小さくした組織をずっと追い、先頃そこを壊滅させ、そして解毒剤を手に入れやっと元の姿に戻った事などを全て話してくれた。

「ただ・・・俺は長くコナンの姿で居たのと、途中何回か不完全な解毒剤を使った所為で、色々と体にガタが来ちまっててさ・・・日本の医学ではこれ以上はどうにもならねえが、アメリカでなら治療の方法があるって事なんだ」
「だから新一、アメリカに留学って・・・」
「ああ」
「でも何で?何で私に何も言ってくれなかったの?私の気持ち知ってて・・・酷いよ!」
「ごめん・・・。治療は何年掛かるか判らないって言われた。不確かなもんにオメーを縛り付けたくなかった」
「だってそんなの・・・じゃあ新一は・・・私の事なんか忘れて新天地で新しく出発する心算だったの・・・?」
「俺が、オメーの事忘れるなんて事は有り得ねえ。何年掛かってでも、俺は必ずオメーのとこに戻って来るつもりだったさ」
「新一・・・?」
「オメーがその時もしまだ俺を忘れねえで居てくれたなら、その時こそは遠慮しねえ心算だった。もし他に誰か見付けて幸せになっていたのなら、ま、そん時は仕方ねえかと・・・」
「そんな・・・そんな事言われたって、嬉しくなんかないよ!私に相手が出来てたら諦めるなんて物分りの良い事言われたって!」
「いや、今こう言ってても、多分本当にそんな事になったらきっと・・・」
「え?」
「たとえ蘭が結婚してようが、俺きっと力尽くで蘭を奪うだろうな。ひょっとすると相手の男を殴り殺してしまうかも知れねえ」

新一の口調は冗談めかしていたが、蘭を抱き締めるその腕に力が篭り、その目は真剣で笑っていない。
蘭の心に凝っていたものが、ゆっくりと溶け出して行く。

「新一。それって犯罪じゃない。探偵がそんな事して良いの?」
「良い訳ない。けど俺は・・・オメーしか愛せない、生涯俺が愛するのはきっと、ただ1人だけだから」

蘭の頬を、今度は喜びの涙が伝って行った。

「ねえ新一。何年掛かっても、きっと帰って来る?」
「ああ。必ず」
「私がお婆ちゃんになってても?」
「そっちこそ・・・俺が皺くちゃの爺さんになってても待っててくれるのか?」
「待ってるよ。だからきっと・・・帰って来て・・・」
「ああ。たとえオメーが待ってなくたって俺の事を忘れてたって帰ってくるよ。そしてそん時は遠慮なんかしねえ。男作ってたって構わねえが、力尽くででもオメーを奪ってやっから、覚悟しとけ」
「え〜、そんな覚悟なんかしないよ、だって、男なんて絶対作んないもん!」

お互い冗談めかして言うが、真剣であった。
新一が再び蘭に口づける。

「蘭。ありがとう。オメーにはいつも・・・救われてるな」
「え?私、何もしてないよ?」
「オメーが居たから俺は、コナンになった日々を耐えて、いつか戻るんだっていつも考えて居られた。組織との戦いを最後まで諦めずに遣り遂げられたんだ。今だってそうだよ。オメーが待ってるって言ってくれるから、俺は絶対大丈夫、必ずオメーの元に帰って来るんだって思って居られる」
「新一・・・」

蘭の目から涙が一筋流れ落ちた。
ここへ忍び込んだ時とは打って変わって、蘭はこの上ない幸福感に酔っていた。


「やべ・・・」
「新一?」
「これ以上は俺の理性が保ちそうにねえ。蘭、その・・・後ろ向いてっから、服着てくんねえ?送ってくから」
「・・・新一。私が好きだって、いつか迎えに来てくれるって、本当?」
「当たりめーだろ、今更嘘なんか吐かねえよ」
「私を・・・少しでも抱きたいって思う?」
「・・・!バーロ!やべえって言ってんだろうが!惚れた女、抱きたいに決まってんだろ!」
「じゃあ・・・抱いて」

新一が驚愕の瞳で蘭を見た。
蘭は微笑んで新一を見上げる。

「お願い。約束の証に、今、私を・・・」
「蘭、だけど・・・」
「私の奥深くに、新一を刻み込んで。私、それを支えに待ってるから・・・」
「蘭・・・!」

新一が蘭を力一杯に抱き締め、蘭は一瞬息が詰まった。
新一の腕は振るえていた。

「蘭。本当に良いのかよ?オメーを俺のもんにしちまって・・・」
「うん。私、身も心も新一のものになりたい。だから・・・」
「蘭、蘭!」

新一は蘭の髪に頬を擦り付け、何度も蘭の名を呼んだ。



  ☆☆☆



蘭に掛けられていた新一のパジャマの上着が脱がされると、2人共に生まれたままの姿である。
新一は蘭をベッドに横たえ、覆い被さって抱き締め、口付けてきた。
蘭の額に、頬に、瞼に新一の唇が落とされ、やがて蘭の唇に重ねられる。

「ん・・・ふっ・・・」

新一の舌が蘭の口の中に侵入し、蘭の舌を絡め取ろうとしてきた。
蘭の方でも一生懸命に舌を絡めてそれに応えようとする。
触れ合う素肌が心地良い。
新一の肌は固く引き締まり、きっちりと筋肉が付き、胸板も服の上から見た感じよりずっと厚い。
けれど、その新一の体の中を病魔が蝕んでいるのだと思うと、蘭の胸は痛んだ。

「んん、あっ・・・」

新一の唇が蘭の首筋に落とされる。
唇と舌で首筋をなぞられ、蘭の奥にぞくりとした感覚が走った。

「蘭。綺麗だよ、可愛いよ」
「ああっ・・・新一っ・・・」

新一の両手が蘭の胸の膨らみを包み込むようにして揉みしだく。

「スゲー綺麗だ・・・それに柔らかくてスベスベして・・・気持ち良い」
「し、新一・・・ああ・・・ひあっ!」

新一の指が蘭の胸の頂を擦り、蘭は思わず悲鳴のような声を上げた。
そして更にそこを新一の唇と舌で捏ね繰り回すように愛撫され、強く吸い上げられる。

「はっ、はああああああん!」

生まれて初めて味わう感覚に、蘭は仰け反って声を上げた。
蘭が、感じ易い乳首への刺激に気を取られている間に、いつの間にか新一の右手は蘭の太腿をなぞり上げ、密やかな繁みに届いていた。

「あ、やっ・・・やだ!新一っ!」

秘められた場所を指でなぞられる感覚に、蘭は身を捩って逃れようとする。

「今更嫌だっつっても、もう止めらんねーぜ?」
「違う・・・嫌なんじゃ・・・っ、う・・・あっ・・・」

新一が指を蠢かせるたびに粘ついた水音が聞こえ、蘭はそれが自分の中から溢れて来たものが立てる音だと気付き、恥ずかしさのあまり気が遠くなりそうになる。

「蘭。指入れるぞ」
「え!?う、あ!ああ、やあ!」

蘭の入り口で蠢いていた指が、するりと蘭の中に侵入して来た。
その異物感と痛みに、蘭は思わず身を固くする。

「蘭・・・力抜いて・・・」
「だ。だって・・・どうやったら良いかわかんないよ・・・」

新一は蘭の中で指を蠢かせながら、再び蘭の胸の頂を舌で舐め、吸い上げた。

「ああっ、やあああああん!」

やがて、蘭の中の異物感と違和感が、少しずつ別の感覚へと変わって来た。

「蘭の中・・・スゲーよ・・・熱くて・・・俺の指に絡み付いて来て・・・」
「あ・・・あ・・・」

新一の指が2本から3本へと少しずつ増やされ、蘭の中をかき回す。

「ああ、新一・・・私・・・何か変・・・」
「蘭?」
「あ、ああっ、・・・はっ、ひあああああん!」

蘭の体の奥深くで何かがはじけ、蘭は仰け反って声を上げた後ぐったりとなった。
荒い息の中で、蘭は呆然としていた。

『な、何、今の?』

考える間もなく、新一が再び蘭に口付け、新一の舌が蘭の舌に絡まって来た。

「蘭。オメー、スッゲー可愛い」
「新一・・・」
「可愛くて・・・たまんねえよ・・・」

新一が蘭の両膝の裏を抱え、足を大きく広げる。

「ああ、やっ・・・!」

サイドランプの明りの元、蘭の秘められた場所が新一の目に晒された。

「み、見ないで・・・」
「今更だろ、さっきあれだけ触りまくったのに」
「馬鹿っ!あんたって本当にデリカシーな・・・ひゃん!」

新一は蘭の秘所に顔を近付けると、唇と舌を使って愛撫し始めた。

「やあ、駄目ッ!そんな・・・とこ・・・きたな・・・」
「蘭の体できたねーとこなんてある訳ねえだろ。蘭のここも、スゲー綺麗だよ」
「あん!・・・っくっ、あ・・・あ・・・」

新一が蘭の突起を探り当て、そこを指でくりくりと捏ね繰り回す。
蘭の入り口からも舌をねじ込んでくる。
蘭の体の奥で再び何かがスパークした。
両手にシーツを掴んで仰け反る。

「はあっ・・・あああああああっ、はあああああああんん!!」

そして再び蘭はグッタリとなってベッドに沈み込んだ。
半ば朦朧となって、肩で息をする。

新一が蘭を強く抱き締めた。
そして上体を起こすと、何かが蘭の入り口に押し当てられる。
蘭はその熱さにハッとした。

「蘭。挿れるぞ。良いか?」

蘭は覚悟を決めて頷いた。
新一のものが蘭の中に入ってくると同時に、想像以上の痛みと重量感が蘭を襲う。

「う・・・あ・・・くっ・・・」

蘭は必死に痛みに耐える。

「蘭。力抜いて・・・」
「う、うん・・・う・・・」

蘭は必死で力を抜こうとするが、痛みの為にうまく行かない。
まだ男性を受け入れた事がない蘭の中は、蘭の意思とは裏腹に、新一を受け入れるのを拒んでしまうのだ。

「新一・・・新一・・・」

痛みの為でなく、新一を受け入れる事が出来ない自分の体に、焦れて涙が溢れてくる。

「蘭、蘭、蘭。愛してる、愛してるよ」

新一が優しく囁き、蘭に口付け、舌で蘭の舌を優しく突付く。
蘭は必死で新一の背中に手を回してしがみ付いた。
次の瞬間、体が引き裂かれるような灼熱感と共に、新一が蘭の内部に一気に入って来た。


「蘭・・・大丈夫か?」

蘭の中に入った後、動きを止めたまま新一は蘭を抱き締めて問うた。

「うん。新一・・・終わったの?」
「終わったって訳じゃ・・・でも、俺たち無事結ばれたんだよ。ホラ」

新一が蘭の手を取り、蘭の秘められた場所に埋め込まれた新一自身の根元に触れさせた。

「ここで俺達は繋がってんだ」
「新一と私・・・繋がってる?ひとつになってるの?」
「ああ、そうだよ」
「嬉しい・・・」

ようやく落ち着いてきた痛みの中で、蘭は喜びの涙を流した。
新一が優しい目で蘭を見詰め、触れるだけの口付けをする。

「俺も嬉しいよ。こうやって蘭とひとつになれて・・・」
「新一・・・」
「蘭。俺の蘭。オメーはぜってー誰にも渡さねえ。俺のもんだ、俺だけの・・・」
「さっきは男作っててもいい、って言ってなかった?」
「前言撤回。オメーにこんな事しようなんていう不埒な男が現れたら、どんなに離れてたってそいつの命は保障しねえ」
「馬鹿ね。男なんか作んないって言ったでしょ?新一以外の人とこんな事、死んだって嫌」

蘭が新一の頬に手を当ててそう言った。

「蘭・・・愛してるよ」
「私も・・・新一・・・愛してる」

そしてどちらからともなく唇を寄せ合い、お互いを固く抱き締めた。

「ねえ新一。絶対戻って来てね。でも、『死んでも』なんてのは無しよ」
「蘭?」
「生きて戻って来てくれなきゃ、絶対嫌だからね」
「ああ。わーってる。その覚悟がなきゃ、オメーにこんな事はしねえよ」
「新一・・・」

再び流れ落ちる蘭の涙を、新一が唇で拭う。
そしてまた唇が重ねられ、舌が絡まりあった。

「あ、あの、・・・新一・・・これで終わったんでしょ?この後、どうしたら良いの?」

蘭がおずおずと新一に訊いた。
新一がガックリ来たように脱力し、蘭の肩に顔を埋めた。

「オメーって、ほんっとに、何も知らねーんだな・・・」
「な、何よ!?だって・・・初めてなんだもん、仕方ないじゃない!」
「初めてって言うなら、俺だって初めてだけどさ・・・今日日、情報源は氾濫してっだろ?クラスの女子にも経験ありの子それなりに居るんじゃねーか?女同士ではそんな話しねえのかよ?」
「う・・・だって・・・」

クラスメートがその手の事を話題にしている時、蘭には全くちんぷんかんぷんだったので、話を殆どまともに聞いていなかったのだ。

新一は蘭を抱き締めたまま、顔を見ないようにして説明を始めた。

「えっとな・・・中に入れた後、男が腰を前後に動かしてピストン運動すんだよ。そうしている内に、男のアレから精子の入った液が女の中に放射される。そしたら男のものは小さくなるから、引き抜いて終わり。・・・ああ、何が悲しゅうて、合体してる真っ最中に性教育のイロハから教えなきゃなんねえんだよ?」
「ね、ねえ・・・その・・・前後に動かすって・・・そしたら、あの・・・摩擦しない?」

蘭が恐る恐る問うと、新一がますます脱力したので、蘭は少しばかり重いと感じた。

「あのなあ・・・その摩擦が、お互いに快感を与え合って男が射精する原動力になんだよ。もっとも女の方は慣れない内は痛いだけらしいけど、慣れたら女の方もかなり気持ち良いもんらしい。ったく・・・そんな無知でよくあんな事しようと思ったよな。充分濡らして慣らしてからでも、挿れんのにあんだけ大変だったんだぞ、よくもまあ予備動作もなしに俺のをくわえ込もうとしたもんだ」
「だ、だって、だってっ!知らない、新一の馬鹿あ!」

蘭は恥ずかしさに真っ赤になって新一の背中をポカポカと叩いた。
新一が蘭を抱き締める。

「オメーってホント、スゲーよな・・・敵わねーよ、ホント」
「・・・新一・・・?」
「ものすごく勝手な話だってわかってっけどよ、オメーがあそこまでの事しようとしたってのが、嬉しかった・・・そこまで俺の事思ってくれてんだって・・・」
「新一・・・」
「愛してる・・・」

新一の唇が蘭の唇に触れ、舌が優しく蘭の唇をなぞる。
その感触に蘭は身を震わせた。

「ねえ、新一?」
「ん?」
「あの・・・これで終わりじゃないんでしょ?動かなくって良いの?」
「ああ・・・今夜は、このままで・・・オメーの中に入ってこうしているだけで、充分だから」
「だ、だって・・・男の人はその・・・動く事で気持ち良いんでしょ?それに私、新一にちゃんと最後まで抱いて欲しい」
「オメーの中に居るだけで、スッゲー気持ち良いよ。たったこれだけでも、油断したらいきそうになるくれえだ。それに・・・まあ挿れただけでも、可能性ゼロじゃねーんだけどさ・・・オメー、困るだろ?」
「え?」
「そのさ・・・俺、動いたりしたら、まず間違いなくオメーん中で出しちまうぞ?初めてでも、たった1回きりでも、出来る可能性はある。オメー、1人で産んで育てられるか?」
「新一・・・」
「正直言って、動いてオメーん中をかき回して突き上げたくってたまんねえ。でも、俺の欲望だけでオメーを苦しめたくねえからよ」

蘭は、新一がそこまで考えてくれたのが嬉しかった。
実は思い詰めていた蘭は、もし子供が授かったなら、1人でこっそり産んで育てようとまで思い定めていたのである。
けれど冷静になって考えれば、それが現実にはかなり困難である事はわかる。

「俺は、オメーとこうやってひとつになれたのが何よりも嬉しい。だから、このまま暫らくひとつになっていたい」
「新一・・・」
「それに、あと1週間あっから。蘭、明々後日から春休みだろ?その・・・明後日、うちに泊まんねえか?そん時は遠慮せずフルコースで抱いてやっからよ」

新一が悪戯っぽい目で蘭を覗き込んで言う。

「もう、だから何でそんなデリカシーのない事・・・!」

蘭が真っ赤になって抗議するのに、新一は楽しそうな笑い声を立てた。









蘭は夜明け前、新一に送られて自宅に帰って来た。
夜中に自宅を抜け出して新一の家に向かったので、小五郎は何も気付いていない。
蘭は忍び足で自室に入り、そっと息を吐いた。

つい先程まで新一とひとつになっていたのである。
新一のものになったのだと思うと、自分の体が今迄以上に愛おしい。
新一が蘭に触れる指と唇の感触、蘭を抱き締めた逞しく引き締まった腕や胸板、そして蘭の中に押し入って来た新一自身の熱さと重量感・・・それらが今も蘭の中に残っており、蘭の体の奥底がうずく。
まだ痛みの方が強く、充分にセックスの快感を味わったわけではない。
それに、結ばれはしたものの、最後まで行ってないので、蘭も新一も不完全燃焼のままである。

あのまま新一と共に居たかった。
痛くても構わない、あのまま蘭の奥を突きあげて思う様貪って欲しかった。

新一は明後日また泊まりに来るようにと言ったが、蘭はそれまで待つのが辛かった。



  ☆☆☆



「おい!誰か毛利を起こしてやれ!・・・まったく、毛利が居眠りなんて珍しいな」

授業中、教師が苦笑いしながら言って、慌てて園子が蘭を突付いて起こそうとする。
蘭は文字通り机に突っ伏して寝ていた。
寝つきが良い蘭は、授業中といえど園子に突付かれた位では中々目を覚まさなかった。



  ☆☆☆



「蘭。一体どうしたのよ?昨日は結局学校を飛び出してそのまま帰って来なかったしさ」

昼休み、屋上で御飯を食べながら、蘭は園子に尋ねられていた。

「うん・・・」

蘭はこの親友に隠し事をする心算はなかったが、何をどう説明したものかと思い、なかなか話し出せないでいた。

「新一くんとやっちゃった訳?」

いきなり園子に核心を突かれ、蘭は飲みかけていたお茶を噴き出しそうになる。

「園子!?なななんで!?」
「へっ?かまかけたら当たっちゃった?」

蘭は真っ赤になった。

「昨日と違って今日は幸せそうだし、だけど睡眠不足らしくて蘭には珍しく授業中居眠りしてるし、もしやと思ったらしっかりビンゴか」

園子が楽しそうに言って、蘭は暫らく言葉が出て来なかった。

園子に促されるままに、蘭は新一が病気治療の為にアメリカに行く事、その為、蘭に黙って行ってしまおうとしていたが、思い詰めて工藤邸に押しかけた蘭に全てを話してくれ、そして将来の約束を交わし2人は結ばれた事・・・(新一がコナンであった事と蘭が新一の寝込みを襲った事を除いて)蘭は園子に全てを話した。

「そっか・・・蘭、新一くんと結ばれたのはお目出度い事なんだろうけど・・・あと1週間?辛いね・・・」
「うん。辛くないって言ったら嘘になるけど、でも、幸せ」

蘭はそう言って笑った。

「ったく、新一くんも果報者よね、蘭にここまで思われるなんてさ。でも、残り僅かなら、蘭、それこそずっと一緒に居たいでしょ?明日まで待つのなんて、嫌でしょ?」
「うん・・・」
「OK、OK。この園子さんに任せなさいって。せっかくのハネムーン、目一杯楽しみなさいよ」
「は、ハネムーン!?」

蘭が真っ赤になってどもった。

「あら、だってそうじゃない、実質的には。・・・でしょ?」



  ☆☆☆



工藤新一は、数日後に控えた渡航の為、荷物をまとめて準備をしていた。
けれど、作業は中々進まない。

「参ったな・・・」

新一の脳裏に、昨夜結ばれたばかりの幼馴染の、白く柔らかな体が浮かぶ。
浮かぶというより、ずっと付きまとって離れない。
白く柔らかい豊かな胸、赤く色付き固く尖った胸の頂、くびれ引き締まったウエスト、細過ぎず大き過ぎずの見事な曲線を描いたお尻から太腿、まさしく花としか形容しようのない美しい鮮紅色に色付いた秘められた場所・・・。
夢で見たり想像したりしていた体よりも実物の方がずっとずっと美しかった。
蘭の顔も体も、客観的に見て素晴らしいものであろうが、惚れぬいた女の顔と体だからこそ、どれひとつをとっても新一を魅了してやまないのだ。

新一にとっては至上の存在である蘭が、身も心も全てを委ねてくれたのは、本当に嬉しくて幸福で堪らなかった。
昨晩は妊娠の可能性を考え、蘭の中に挿れただけで、蘭の奥を思う様突き上げ貪りたくなるのを必死に我慢したが、それにはかなりの忍耐力を必要とした。
蘭の中に入りその熱さを感じながら、自分の熱を吐き出さなかった事で、ずっと新一の中に荒れ狂う欲望は燻り続けている。

「蘭・・・」

新一は自分で自分の昂りを静めようとして思い止まった。
明日の夜、また蘭をこの腕に抱くのだ。
どれ程欲望が荒れ狂おうとも、その時まで熱はそのまま持っていよう、と新一は思った。



「新一!」

突然、新一の頭の中の幻が新一を呼んだ。
いや、現実に、昨晩新一の恋人となった幼馴染が玄関から飛び込んで来たのだった。

「蘭?今日、大丈夫なのか?」

新一は玄関まで蘭を出迎え、一緒にリビングに向かいながら訊いた。

「うん!明日終業式には出るけど、それ以外はずっと・・・新一の傍にいるから」

蘭の思い掛けない言葉に、新一は驚く。

「あのね・・・私はその・・・今夜から園子んちに泊まって、終業式が終わってすぐ2人で旅行に行く・・・事になってるの」
「そうか・・・園子に借りを作っちまったな」

基本的に嘘が苦手な蘭が、そうまでして新一の傍に居てくれようとしてくれた事が嬉しい。

「けど、旅行に出た事になるんだったら、買い物にも行けねえな」
「もう、ある程度買って来たし・・・後は、新一、お願いね」

そう言って蘭は大きな買い物袋を見せた。

「し、新一・・・?」

新一は思わず蘭を力いっぱい抱き締めていた。
一緒に居られる時間は後僅か。
その一瞬一瞬を大切にしたいと新一は思った。



  ☆☆☆



「ん・・・はああっ・・・」

新一が蘭の滑らかな肌に唇や指で触れる度に、蘭は甘い声を漏らす。
白く透き通った肌が、赤く色付いて行く。
昨晩知ったばかりの、蘭が感じている時の甘い声も、眉を寄せた切なそうな表情も、何もかもが愛おしい。

『この表情も、眼差しも、声も・・・全部、俺のものだ』

蘭を一旦この腕に抱いた事で、より独占欲が増した事を新一は自覚していた。

「蘭、蘭。愛してる・・・」

全身隈なく愛撫しながら、まだ足りないと感じてしまう。

まだこの行為に慣れない蘭の為に、時間をかけて蘭の快感を引き出し、体を開かせて行く。
新一は蘭の足を大きく広げ、既に充分に蜜を滴らせている蘭の秘められた場所に、怒張した自分自身を埋め込んで行った。

「うっ・・・あ・・・つっ・・・」

蘭が眉根を寄せ、新一の背中に回した手でしがみ付く。

「ごめん。まだ痛えだろ?」
「少し。でも、昨日より大分楽」
「じゃあ、動くぞ。良いか?」

蘭が頷いたのを確認して、新一は腰を動かし始めた。

「うわ・・・!」

ただ挿れただけの時とは比べ物にならない、想像以上の快感が新一を襲った。

「はあ・・・スゲー」

まだ慣れない蘭の為にゆっくり動こうと思っていたのに、たまらず激しい動きになってしまう。

「蘭・・・スゲー・・・いい・・・最高・・・」
「んん、あう・・・新一・・・っ」

蘭の中が変化し始めていた。
熱く柔らかな蘭の内部が新一のものに絡みつき始める。
溢れる蜜が量を増し、隠微な水音が響く。

「はあ、んふっ・・・ああ・・・新一ぃ・・・」

蘭の顔に今迄と異なる艶やかな表情が浮かび、声の甘さが増す。
蘭の変化を見て取り、新一は夢中で腰を動かす。

「蘭、蘭・・・っ!」
「あああん、新一ぃ、あはっ・・・はああっ」

新一の動きが激しさを増し、蘭の奥を何度も突いた。

「あああっ・・・新一・・・私、ああっ・・・!あん、ああん、新一・・・っ」
「蘭、蘭!っくっ・・・!蘭!!」
「あっはっ・・・ひああっ、はあああああああんん!!」

蘭が仰け反って高い声を出すのと同時に、新一は蘭の中で熱いものを放った。



  ☆☆☆



昨晩と違い今夜は2人共に充分満たされて、抱き締めあって短い眠りに落ちる。
けれど勿論、まだまだ夜は終わらない。
短い眠りの後には、また熱い時間が待っているのだ。
その夜2人は何度も高みに上り詰め、飽く事なくお互いを求め合った。









新一が出発するその日まで、新一と蘭はずっと一緒に過ごした。
何度もひとつになりお互いの気持ちを確かめ合い、短いが幸せな蜜月を過ごした。
ただ単に一線を越えたというだけではない。
2人にとっては、この先生涯を共に生きて行く誓いの契りであり、お互いの存在を身にも心にも深く刻み込んだ日々であった。









新一がアメリカに向けて発った次の日、蘭は久し振りに園子と出掛けていた。
ショッピングの後、喫茶店でケーキセットを突付きながら久し振りのお喋りに花を咲かせる。

「新一くん、とうとう行っちゃったんだね・・・やっと帰って来たと思ったら、今度は病気治療でアメリカなんて・・・蘭、寂しいでしょ」
「うん、そうね。寂しくないって言ったら嘘になるかな」

今迄にない蘭の素直な言葉に、園子は半目になって言う。

「蘭ったら、新一くんとえっちした途端に素直になっちゃって。この先何年掛かるかわかんないのに、ずっと新一くんを待ち続けるんでしょ?」
「待つ・・・そうね・・・でも私、今回はそんなに長く待たないよ」
「ええ?蘭、それってどういう・・・!?」
「ふふっ、内緒」

そう言って笑った蘭の顔には全く無理している様子も翳りも見られず、園子は首を傾げた。





園子が蘭の言葉と笑顔の意味を知るのはもう少し後である。
新学期になってすぐの帝丹高校で、アメリカの姉妹校に派遣される交換留学生の名が発表された。

その中に、3年B組・毛利蘭の名があったのだった。







Fin.



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後書き



予告していた「愛人(!!!?)生活」番外編でも、「The Romance of Everlasting〜異聞・白鳥の王子〜」の裏番外でもなく、どうしても書きたくなって、突発でこのお話を書いてしまいました。
一応、エースヘブンのプロバイダ移転とURL変更2周年記念のプレゼント裏小説だったりします。こんなんでプレゼントになったかどうかわかりませんが(汗)。

新一くんの体にアポトキシンの副作用で何らかの異変が起き、その治療で何年も外国で過ごさないといけない・・・というのは同人界でよく見るネタですね。
自分では絶対書くまいと思っていた筈のこのネタを、何故敢えて使ったかと言いますと・・・早い話が、「思い余って新一くんの寝込みを襲う蘭ちゃん」を書きたかったんです〜。(←おい)

ああ、でもこんなに長くなるとは・・・実はこの話、まだ終わってないんですが、かなり長くなった為に、一旦ここで区切りました。実は、表のスカイ・ハイがこれの続編・・・本当は合わせてひとつのお話だったのです。
長くなった原因のひとつは、私の拘りで「避妊」について曖昧にしたくなかったから、っていうのがありますね。
この話を書く為に、「男の人は、はたして挿れるだけで我慢できるのか」と知り合いに訊いてみたりしましたが(笑)、現実にはかなり無理らしいです(核爆)。



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