始まりの夜 〜First night in London〜
byドミ
このお話は。
本家本元、名探偵コナンの、待望のロンドン編に、萌えに萌え、燃えに燃えたドミが、その妄想の赴くままに綴った、「ロンドンの夜アフター妄想捏造編」です。
少年サンデー2010年46号掲載の、名探偵コナン本編FILE752「厄介な難事件」の、回想シーンの直後から、始まります。
このお話は、そのネタばれ……というよりは、それを既読である事前提で綴っている為、前振り説明が全くなしという、大変、不親切設定となっております。
また、当然の事ながら、原作を前提としながらも、絶対に原作では有り得ない、完全捏造話です。
それらをお含みおきの上、この先にお進み下さい。そういうのはダメという方は、回れ右で。
どうぞ、宜しくお願い致します。
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蘭は、言葉もなく立ちつくしていた。
新一の言葉が、頭の中でリフレインしている。
『好きな女……新一……わたしの事を……好きな女?新一はわたしの事……』
奥穂村から東京に帰る途中の、高速道路で。
新一は、蘭に「お互いに、言いたい事も聞きたい事も、きっと同じ」だと言った。
蘭が聞きたかった事、それは、新一が蘭の事をどう思っているかだったけれど。
今、確かに、新一は、その時の答をくれたのだと……蘭は思った。
だったらきっと、新一は、蘭の気持ちを解ってくれている筈だと、蘭には思える。
だから、敢えて、蘭から何かを言う必要があるようには、思えなかった。
新一は、真っ赤な顔で、蘭を真っ直ぐ見詰めていたが。
不意に目を反らし、くるりと背を向けた。
「し、新一?」
「もう、遅い。帰るぞ」
「え?か、帰る……って?」
新一が、頭だけくるりとこちらを向く。
「オメーの泊まってるホテル。送ってくから」
「え……?」
新一が、またも背中を向けて、すたすたと歩き。
蘭は慌てて、後を追った。
隣に並んで手を繋ぎたい、そんな気持ちが起こったけれど、新一の歩く速度は微妙に速く、蘭は多少小走りになりながらも、新一の横に並ぶ事が出来なかった。
「新一、待っ……あっ!」
石畳のヘリに、うっかりつまずき、バランスを崩しそうになった蘭の前に、手が差し伸べられる。
「何やってんだよ?」
呆れたようなぶっきらぼうな声。
けれど、その眼差しは……少し照れているようにも見える。
「だって……新一、歩くの速いんだもん」
蘭が、差し出された手に、自分の手を出しながら、嬉しくて、でも思わず照れ隠しに悪態をついてしまうと。
新一も、いつものように憎まれ口を叩くかと思いきや、ふと申し訳なさそうな表情になって、言った。
「わりぃ」
「え……?」
「余裕なかった。ごめん」
余裕って?と聞き返そうとしたが、止めた。
新一が、困ったような表情をしていたからだ。
『もしかして。新一も、いっぱいいっぱいだったり、したのかな?』
いつも、余裕綽々に見える新一だけれど。
今回の「告白」では、彼も必死だったのだろうか?
だとしたら嬉しいと、蘭は思う。
新一が、蘭の手をグッと握る。
手を握るのは初めてではないけれど。
今迄に感じた事のない甘やかな衝撃が、繋いだ指先と掌から、蘭の全身に広がって行く。
蘭の心臓は、壊れてしまうんじゃないかと思う位に、ずっとバクバク言い続けている。
蘭と手を繋いだ新一は、今度は、少し速度を落として、歩きだした。
いつまでも、この道が続けば良いのに。
蘭が思うもむなしく、思いの他すぐに、蘭達の泊まっているホテルに辿り着いた。
「そう言えば、新一。どうして、ここ、知ってたの?」
新一が一瞬、言葉に詰まって焦ったような雰囲気があった。
「……探偵だから」
「は?」
「オメー、泊まるホテルの名前、メールに書いてただろ?それが分かれば、調べるのは造作ねえ事だし」
「あ、そうか」
蘭は単純に、感心していた。
新一自身が別の姿でこのホテルに泊まっているなど、今の蘭には窺いしれない事だった。
「あのさ……蘭、オレ、仕事でこっちに来てんだ」
「え……え?仕事?」
「関わってる事件が、こっち絡みの部分があって、時々、海外に行く事もある。だから。オレがロンドンにいる間に、蘭がこっちに来るって知って、スゲー驚いた。嬉しかったし、会いたかったけど……」
「そう、だったの……」
新一は、海外にいる事もあったから余計に、なかなか連絡が取れない事もあったのかと、蘭は単純に納得していた。
探偵の仕事だったのだから仕方がないとも、考えていた。
新一には決して、蘭を「丸め込む」意図があった訳ではないけれど。
蘭にとって新一の「探偵活動」は、それだけで納得してそれ以上の追及をさせない、聖域なのである。
けれど、納得しても、寂しさが癒える訳ではない。
新一は蘭の事を好きだと言ってくれたけれど。
でも、蘭が日本に戻ればきっとまた、離れ離れになってしまう。
蘭が泊まっている部屋の前まで送って来た新一が、蘭の手を離した。
その瞬間、寂しさと喪失感が蘭を襲った。
行ってしまう。
新一が、行ってしまう!
「じゃあ。お休み」
新一は、名残惜しそうにしながらも、手を上げて背を向け、去って行こうとする。
蘭は咄嗟に、新一のシャツの裾を掴んでいた。
☆☆☆
「もう少し……一緒に……」
蘭が俯いて。
不覚にも、涙が零れ落ちそうになるのを堪えながら、言った。
「蘭……」
振り向いた新一の顔も、歪む。
何かに耐えるかのような表情をしていたが、振り払うように、頭を横にひと振りした。
「新一……?」
「オレも……一緒にいたいよ、蘭……」
「じゃあ。来て?」
蘭には、自分が「引き金を引いた」自覚は、なかったけれど。
蘭の事を好きだと告白してくれた新一を部屋に入れて、二人きりになるという事が、どういう意味を持つのか、それが全く分かっていなかった訳ではない。
とは言え、意図していた訳ではなく、ハッキリその積りだった訳でもなく。
全ては、何かに突き動かされての、無意識の行動。
部屋のドアを閉めると、新一に強く抱きしめられた。
「し、新一……」
「蘭……」
蘭も、おずおずと、抱き締め返す。
新一の温もりに包まれて、ドキドキして、全身が甘く痺れて、幸せで。
待たせているダイアナと小五郎の事も。
探しに行った筈のコナンと阿笠博士の事も。
何もかも、既に蘭の頭にはなく。
蘭の頭を占めるのは、ただただ、新一の事ばかり。
「もう、止められねえよ……蘭」
「新一……?」
新一が、蘭の耳元で苦しそうに言うと。
少し、蘭の体を離して、顔を覗き込んで来た。
新一の顔が近付いて来る。
窺うように、ゆっくりと。
蘭が嫌なら、避けられるだけの余裕を与えて。
蘭は勿論、嫌じゃなかったから、避けなかった。
頬を染めながら、目を閉じる。
その唇に、柔らかく温かく湿った感触があり、蘭の体をまた新たな甘やかな衝撃が貫いた。
初めての口付けは、かすめるように、すぐに離れて行ったけれど。
蘭が寂しく思うより前に、今度は深く口付けられた。
「ん……ふっ……」
蘭の吐息ごと奪うように。角度を変えながら、何度も繰り返し、口付けられる。
新一の舌が蘭の唇の隙間から侵入して来た時、蘭は身震いし、新一の背中に回している手で、新一のシャツをギュッとつかんでいた。
蘭の舌に新一の舌が絡められる。
嫌ではないけれど、その生々しい感覚に、蘭の思考力ははじけ飛んでいた。
蘭の足から力が抜け、崩れ落ちそうになる。
新一は、蘭を抱きとめると、そのまま抱え上げた。
「え?し、新一……?」
蘭はそのまま、ベッドの所まで連れて行かれ、ベッドの上に優しく降ろされた。
新一が、蘭の上に覆い被さるようにして……けれど、蘭の肩の上の方に手をつき、腕で自分の体を支え、蘭に直接触れないまま、蘭の顔を覗き込んで来た。
その眼差しに、蘭が初めて見る、灼熱の彩りがある。
「新一……」
「今夜は、オレ達の、始まりの夜だ」
「……!」
新一の言葉は、先程の「ゼロは全ての始まり」に呼応している事が、蘭には分かった。
今夜は、二人の「愛」が成就し、そして新たな始まりを迎える、夜。
「蘭……いいか……?」
新一の問いの意味が分からない程に、子供ではない。
蘭は、震えながら、コクリと頷いた。
新一はふっと優しく微笑むと。
そっと蘭の上に覆いかぶさり、蘭の唇に優しく触れるだけの口付けをおとした。
一旦離れた新一の唇が、今度は首筋に降りて来る。
「んっ!」
新一の触れた首筋から、ゾクリと全身に痺れるような甘い衝撃が走る。
新一の手が、服の上から、蘭の胸の上に置かれ、柔らかくまさぐる。
恥ずかしいし、戸惑いもあるし、けれど、嫌ではなかった。
というより、新一に触れられるのが気持ち良い。
この行為が初めての蘭には、「気持ち良い」と感じる感覚すらが、恥ずかしくて怖くてたまらなかったけれど。
大好きな新一に求められ、誰よりも傍にいるという歓びの大きさが、それを上回っていた。
少しずつ、服を脱がされながら、新一の指が唇が、蘭の体を辿って行く。
その度に甘やかな痺れが全身を貫き、蘭はいつの間にか、甘い声を上げていた。
蘭の胸の下着が外され、豊かな膨らみが外気に触れ。寒い訳ではないが、蘭はブルリと身を震わせた。
「すげえ、綺麗だ……蘭……」
新一の声が熱を帯び。
やはり熱を帯びた掌が、蘭の胸の膨らみに直接触れる。
その頂を、新一の指がこする。
「ああん!」
蘭は思わず、高い声を上げた。
それを恥じらうより前に、新一の唇が蘭の胸の頂きの片方を捉え、舌先でチロチロと刺激され。
今迄感じた事のない、全身を貫く快感に、蘭は新一の後頭部を抱えるようにしながら仰け反って、更に高い声を上げていた。
胸への刺激に、蘭が気を取られている間に。
新一の空いた方の手は、蘭の太腿を撫であげ、蘭を覆う最後の布に手を伸ばし。
ハッと気付いた時には、蘭は生まれたままの姿になっていた。
新一が体を起こして、蘭の全身を舐めるように見る。
蘭はギュッと目を閉じていたが、新一の視線を痛い程感じていた。
それが死ぬほど恥ずかしく、同時にどこか嬉しくもあった。
「すげ……オメー、本当に綺麗だよ……蘭……」
「な、何、バカな事……」
「誰にも、渡さねえから」
「え……?」
蘭が思わず目を開けると。
そこには、どこか狂おしい光をたたえた新一の目があった。
「新一……?」
「オレのものだ。蘭!」
新一は、蘭を強い眼差しで見詰めると。自身の服を脱ぎ捨てて行った。
服を着た上からは細身に見えるが、意外とキッチリ筋肉がついた胸板と腕が現れ。
そして、ズボンと下着を脱いだ後に現れたのは、蘭が初めて目にする、そそり立つ男性のシンボルだった。
「あ……!」
蘭は、正視するのが恥ずかしくて、思わず顔を横に向けた。
新一が蘭を抱き締めて来る。
固い胸板と逞しい腕が直に当たる感触が気持ち良く。
そして、蘭の下腹部に当たっている熱くて固いものが何であるかに思い至り、蘭は思わず身をこわばらせていた。
「蘭」
お互い裸で、強く抱きしめられて。
蘭も、新一を抱き締め返す。
直接肌が触れ合う感じが心地良く、安心できて幸せで。
このままでずっと過ごしたいと、蘭は思う。
また、深く口付けられたかと思うと。
口付けたままに、新一の手は蘭の胸をまさぐっていた。
「ん……ん……!」
胸の頂きを指で刺激されて、蘭は思わず、身悶えていた。
蘭の唇を解放した新一の唇は、そのまま、蘭の胸の頂きを捉え、強く吸われる。
「あ……はああん!」
「蘭……ココ……コリコリになって……すげえ」
「あ……や……っ!」
蘭のふわりと柔らかい胸の膨らみの中で、頂きだけは新一の愛撫を受けて固く勃ちあがっている。
そして、蘭の秘められた場所からは、トロリと何かが溢れ出る感触があった。
蘭は、自分自身の体の変化に、戸惑っていた。
新一の唇はそのまま下の方へと移動し、蘭のなめらかな腹部を辿って行く。
そして、蘭の両膝の裏に、新一の手がかかり、グッと押し広げられた。
新一の眼前に、蘭の秘められた場所がさらされる。
「やっ!見ないで……!」
勢いのままに体を重ねている為、部屋の灯は煌々と点いたままで。
蘭は、自分ですら見た事のない、誰にも見せた事のない、その場所が、明るい中で、大好きな新一の目にさらされるのが、恥ずかしくて堪らない。
新一以外の人になんて、勿論、見せられない。
新一だから、見られて嫌ではない。
嫌ではないが、死ぬほど恥ずかしい。
「何だよ、蘭。さっき、オレのは見たクセに」
「なっ……!あれとこれとは……!それに、見たくて見たんじゃないもん!」
蘭は、顔を覆いながら言った。
「蘭。オレに、オレだけに、見せてくれよ、オメーの全部」
「し、新一……」
「オレの全ては、オメーにやる。だから、オメーの全部、オレにくれ」
「な、何、そんな勝手な事……」
「好きだ、蘭」
「……!」
好きだと言われてしまうと、それ以上、何も言えない。
言葉を交わしている間にも、新一の目は蘭のその場所に注がれ。
そして、手が蘭の突起に触れた。
「あ……ひゃんっ!」
その場所が、女性の最も敏感な場所のひとつだと知らない蘭は、突然訪れた強い快感に、驚いて声を上げていた。
新一の顔がその場所に寄せられ、息が吹きかかったかと思うと、新一の舌が蘭のその場所を舐め始めた。
「やっ!新一、ダメ……っ!ああん……っ!」
「何が、ダメなんだよ?」
「だ、だって、そんなとこ……汚い……」
「蘭の体は、全部綺麗だ。汚いトコなんて、ない」
「そ、そんな……ひゃああん!」
新たな刺激に、蘭のその場所から溢れる蜜は量を増し、蘭のお尻の割れ目を辿って零れ落ち、シーツを濡らす。
蘭の入り口から何かが入って来た。
新一の指のようだ。
蘭は異物感に身をこわばらせる。
「うっ……!」
「ごめん。痛いか?」
「う、ううん……痛いんじゃないけど……」
「そっか……オメーん中、すげえよ……熱くて……」
新一の息遣いが荒い。
蘭の中に早く入りたくて、けれど自制している事など、蘭には想像もついていない。
新一の指が蘭の中に抜き差しされる。
正直、異物感が気持ち悪い。
けれど、少しずつ、その感覚にも慣れて来る。
段々と、変な感じになって来た。
それが、快感の入り口だなどと、今の蘭に知る術もない。
「ん……ん……っ!」
「大分、ほぐれて来たみてえだな。……そろそろ……」
新一の指が引き抜かれる。喪失感と、なおも続く異物感に、蘭は戸惑っていた。
「新一……?」
新一が体を起こし、蘭の足を抱え直す。
蘭の入り口に、灼熱の塊が押しつけられて、蘭はビクリと身を震わせた。
「ごめん。まだ多分……痛えだろうけど……」
「し、新一……」
「挿れるよ、蘭」
「え……あ……つうっ……痛い……っ!」
それまでの快感全てを打ち消してしまう程の、身を貫かれる痛みと、圧倒的な質量感。
蘭は思わず悲鳴を上げ、蘭の体は無意識の内に痛みから逃れようとずり上がる。
しかし、新一の腕が蘭の腰をしっかりと捉え、離そうとしなかった。
二人とも初めての事とて、新一のモノは蘭の入り口で引っ掛かり、なかなか中に入って行かない。
新一は強引に腰を進めようとするが、蘭のそこはキツク締まり、新一のモノを受け付けなかった。
「やあっ……!痛い……止めて……嫌あ……!」
蘭が思わず、苦痛の声を上げる。
「くっ……蘭……力、抜いて……」
「やあっ!出来ない……っ!」
蘭が嫌々と首を振ると。不意に、新一の動きが止まった。
新一が大きく息をつく声が聞こえ。
そして、新一の温もりが離れて行く。
「し、新一……?」
「……ごめん。無理させちまって……」
「えっ?」
新一がくるりと背を向け。
蘭は驚いて起き上がる。
新一は、蘭の方を見ないまま、ボソボソと言った。
「ちょっと、急過ぎたよな……」
「し、新一……」
「オレは……ガキの頃から、オメーの事が好きだったし。その。そういう欲望に目覚めてからは、ずっと、オメーの事、抱きてえって、思ってたから、すぐにでもオメーの全部を、オレのもんにしちまいたいけど。オメーは女だし。もっとその、覚悟を決める時間っていうか、余裕が要るだろ?」
「新一……わたしは……」
「この続きは、今度、帰って来た時な?」
新一が、苦笑の表情で振り返って言った。
蘭は、立ち上がろうとする新一に必死で抱きついた。
「ちょ……蘭……オレ、必死で理性かき集めてんのに、それは……」
「イヤ!やだ。新一、止めちゃ嫌!続きは今度、なんて、嫌!」
「ら、蘭、だけど……オメー、嫌がって泣いてたじゃねえかよ」
「あれは……本心じゃないもん!痛いからつい、言葉が出ちゃったけど……でも、でも……わたしの事、全部あげられるの、新一だけなんだから!」
「蘭……」
「そ、それに……新一、次、いつ帰ってくるか、分からないじゃない!」
「そ、それは……」
「だから。今、わたしに、新一の存在を刻み込んでよ……わたしが、新一を待ってられるように……!」
新一が、おずおずと蘭を抱き締めた。
蘭が新一を抱き締め返すと、新一が蘭を抱く腕に力が籠もる。
「蘭……好きだ……」
「新一……」
「オメーが欲しい。オレのものに、なってくれ」
蘭は、涙を溢れさせながら、頷いた。
新一は蘭を再びベッドに横たえた。
蘭の上に覆い被さって、囁く。
「今度は……オメーが嫌ってどんなに泣いても、止めねえから」
「うん……」
新一は再び、蘭の体中に、唇と指とで触れて行く。
蘭の体は再び熱くなり、蘭の中心部から再び蜜が溢れだす。
新一のモノが再び蘭の入り口にあてがわれ、中に入ろうとする。
蘭のそこはやはりキュッと締まり、新一のモノを受け付けようとしない。
「う……つ……ん……っ!」
蘭は、苦痛を堪えようとするが、どうしても苦しげな声が漏れてしまう。
「蘭……好きだよ……」
「新一……んっ!」
新一は、蘭の入り口に自身をあてたまま、蘭の唇を自分のそれで覆い、蘭の胸を掌と指で揉みしだき、頂きを指の腹でこすった。
蘭の唇が解放された時、蘭は空気を求めて大きく喘いだ。
その瞬間、蘭の入り口が緩み、新一のモノがグッと蘭の中に入り込んだ。
「アウ……ッ!」
蘭が思わず苦鳴を漏らし、新一の背に爪を立ててしがみ付いた。
「……はあっ……蘭……分かるか?蘭とオレ、今、繋がってひとつになってる……」
「新一……新一とわたし、ひとつに……?」
「ああ。ホラ。ここで、繋がってる」
新一が、蘭の手を導いて、その場所に触れさせる。
蘭の入り口に、新一のモノの根元があった。
「新一……嬉しい……」
「ああ。蘭、オレも、幸せだ……この上なく、幸せだ……蘭……」
新一が、蘭をギュッと抱きしめ。頬ずりし、そして顔を上げて、蘭の唇に触れるだけのキスをした。
蘭の痛みが、段々と落ち着いて来る。
蘭は、新一と今、結ばれているという実感に、歓びの涙を流した。
「ら、蘭?」
「新一。嬉しいの……今、新一が、わたしの一番深い所に、いるのね……」
「ああ。そうだよ」
新一が優しく微笑み、蘭の唇に、今度は深い口付けをおとす。
「オメーん中……熱くて、すげー、気持ちイイ……」
「新一……」
「ごめん。そろそろ、限界」
「え……?」
新一が少し眉根を寄せたが。
蘭は、一体何が限界なのか、意味が分からなかった。
「ごめん。また、痛えだろうけど。動くぞ、蘭」
「え……?あ……うっ……!」
新一が、少しずつ腰を動かし始め。
蘭は、おさまっていた痛みがぶり返して、思わず声を上げて、新一の背中にしがみ付いた。
「ごめん……!蘭、加減、出来そうにねえ……っ!」
「ん!んん!あっ……あっ……!」
新一の律動に、蘭も自然に声が漏れる。
ベッドがきしみ、粘着性のある水音と体のぶつかり合う音、2人の息遣いと嬌声が、部屋の中に響く。
夏の夜だが、ここはロンドン、涼しい筈なのに、部屋の中は熱気が充満していた。
「蘭……蘭……好きだ……好きだ……っ!」
「しん……いちぃ……ああ……んああん……っ!」
痛み以外の感覚が次第に体の奥から湧き上がり。
蘭の出す声も、段々、艶のあるものにと変化して行く。
「ああん……んはあん……やあ……っ……新一ぃ……わたし……何か……変だよう……」
「蘭……イイぜ……おかしくなれよ……っ!」
蘭の頭は朦朧とし、やがて、白くはじけた。
「あ……はああ……んああん……んやああああああっ!」
「くぅ……ッ!蘭……っ!」
蘭が背中を反らし、手足を突っ張らせて昇り詰めると同時に、新一の動きが止まり。
いきなり、蘭の中から新一のモノが引き抜かれたかと思うと、蘭のなめらかな腹部に、生温かい液が、かかった。
「はあっはあっ……蘭!」
「……新一……」
新一が、荒い息をつきながら、昇りつめた後に弛緩した蘭の上に倒れ込むように脱力し、蘭をギュッと抱きしめた。
そのまま、そっと、蘭の隣に横たわり、蘭を抱き寄せ。
蘭の顔中に、優しい口付けの雨を降らせた。
新一が、体を起こす。
そして、蘭の腹部と、秘められた場所を、ティッシュでそっと拭った。
「血が、出てる……」
「新一……」
新一が、蘭に申し訳なさそうな目を向けた。
「ごめん……痛い思いをさせて……」
「それは……だって、初めてだから、仕方ないもん……」
「その、ゴムの持ち合わせなんかねえから、蘭のお腹にかけて、汚しちまったし。無理させちまって……色々、ごめん」
「やだ。謝らないで。わたし、無理なんか、してない。……新一とひとつになれて、嬉しかったの……」
「蘭……」
「すごく、幸せだから。謝らないで……」
新一は、目を丸くした後、微笑んで、蘭の額にそっと口付けた。
「……ありがとう、蘭……」
「新一……」
「オレ、本当に、幸せだ……」
「わたしも……」
「オレ、まだ暫く、帰れねえけど」
新一の真剣な眼差しと言葉に、蘭の体は強張る。
「いつ、帰れるか、分からねえけど……」
「うん……」
「今夜の事を心の支えに。蘭の元に、早く帰れるよう、頑張るからさ」
「新一……?」
「待ってて、くれよな?」
「……うん……待ってる……」
蘭の口から、素直に言葉が出た。
蘭こそ、今夜の事を心の支えにしようと、思っていたのに。
新一も、同じように考えてくれているのがすごく嬉しい。
また暫く会えないのは寂しいけれど、新一の言葉と、ひとつになれた歓びを胸に、きっと待てると、蘭は思う。
「浮気、しないでね?」
「ああ。蘭も、浮気すんなよ」
「しないよ!バカッ!」
蘭が手を振り上げると、新一はハハッと笑ってそれを避ける。
蘭が降りあげた手を抑えるようにした新一は、そのまま、ギュッと蘭の手を握り締め、熱い眼差しで蘭を見詰める。
「新一……?」
「蘭。……いつになるか、分からねえけど……」
「……」
蘭は、「いつになるか分からない」のが、てっきり、新一が帰って来る時期かと思い、言葉に詰まる。
「もし、おっちゃん達の許しを受けたら、オレが十八になった時。許してもらえなかったら、蘭が二十歳になった時」
「え……?」
「結婚、しようぜ?」
「え……え……?」
「嫌、か?」
蘭は、言葉を出せずに、首を横にブンブンと振った。
「だって……良いの?わたし達、まだ高校生なのに、安易にそんな約束、しても」
「安易な約束なんかじゃねえさ。オレは……ずっと気持ちが変わる事ねえって自信があるし。蘭を、他の男に取られたくない」
「新一……」
「オレと、必ず、結婚して欲しい」
「うん。わたしも……新一のお嫁さんに、なりたい」
「じゃあ、決まり」
新一は、蘭の左手を取り、その薬指に口付けた。
「そう遠くない未来に、ここに……約束の印を、贈るからよ」
「うん……うん……」
蘭は、溢れ出た涙を止められなくて、俯いた。
新一が、蘭の顎に手をかけ、上向かせると。
蘭の涙を、唇で拭い。
そのまま、蘭の唇に己のそれを重ねる。
新一の口付けは、蘭の涙で、少し、しょっぱかった。
触れるだけの口付けは、やがて、深くなり。
蘭の胸に当てられた新一の手が、蘭の胸の感触を楽しむように蠢き始める。
「ん……ん……?」
蘭の唇が解放されたかと思うと、新一の唇は蘭の首筋に移動していた。
「きゃ……!?し、新一……っ!?」
「婚約が調った所で、もう一度、契の儀式を……」
「ちょ……さっき、したばっかりじゃない……!」
「ああ。でも、また、やりたい……」
「ちょ……あん……!」
快楽を知り始めたばかりの蘭の体は、新一の愛撫に敢え無く陥落し、甘い声を上げ始めた。
一旦、蘭を知った新一は、タガが外れてしまったらしい。
蘭とて、決して、嫌な訳ではなく。
若い二人の火は再び燃え上がり、また、愛を交わすのだった。
「ん……ああっ……!」
新一のモノが蘭の中に入る時、やはり少し痛みはあったが、最初の時程ではなく、挿入もスムーズだった。
新一も二度目で遠慮が無くなったのか、今度は最初から激しく動く。
「や……はああっ!」
「蘭……蘭……!」
一度目とは比較にならない快感の波が蘭を襲う。
蘭は何が何だか分からなくなり、新一にしがみつきながら、抑える事も出来ずに高い声をあげていた。
「んやあっ……ああああぁああん!」
蘭が高い声を上げ果てると。
新一は再び、蘭の中から己を引き抜き、そしてまた、蘭の腹部に生温かい体液をふりかけた。
激しい息遣いと、心臓の音が、少しずつおさまって来る。
新一は、再び、蘭の腹部と局所を、丁寧に拭ってくれた。
新一は、蘭を抱き締め、優しく微笑み、また、顔中にキスの雨を降らせた。
蘭は、くすぐったそうに、それを受ける。
幸せだと、思った。
蘭の隣に横たわって蘭を抱き寄せた新一は、おもむろに、とんでもない事を口にする。
「帰って来た時は、ゴムの準備して置くからさ……」
「え……?」
「蘭の中で、イクよ」
新一の言葉は、どうしていつもこう、デリカシーがないのだろうと、蘭は思った。
ハッキリ言って、男性で、デリカシーある者の方が少ないのだが、新一以外に比較対象がいない蘭には、そんな事、分かる筈もないのだった。
「でも、好き」
「ん?蘭、何だ?」
「ううん、何でも……」
蘭の小声は、新一には届かなかったようである。
デリカシーがなくても新一の事が好きだなと、蘭は思う。
俗に言う、「つける薬がない」というヤツである。
少し経って。
新一が起き上がり、蘭に口付け。
三度、蘭の胸をまさぐり始め、蘭も三度、気分が盛り上がりかけた時。
ドアの鍵が、ガチャガチャと音を立てた。
☆☆☆
「おーい、蘭!何だ、先に帰って寝てやがったのか……灯も消さないままでよ……ったく、コナンを連れて来るって言ったきり、オメーまでいなくなるし……」
小五郎のだみ声を、蘭は、ドキドキしながら、ベッドの布団にもぐりこんで聞いていた。
ちなみに、新一は、蘭のベッド脇の床の上に、横になっている。
きっと新一も、心臓バクバクものだろう。
ドアの鍵が音を立てた時。
一瞬の驚愕の後、新一が素早く動いた。
ベッド脇に散らばっている二人の服を蘭のベッドに押し込んで、蘭の上に寝具をかぶせ、自分は玄関から死角になる方のベッド脇の床に転がって横たわり、息を潜めたのだ。
先程までの甘いムードはあっという間に消え去り。
蘭は、新一の対応の素早さに、妙に感心すると共に、呆れもしていたし、少しばかり悲しかった。
二人が何をしていたのか小五郎にバレてしまえば、色々と大変だろうし、新一もタダでは済まされないだろうから、無理もないのだけれど。
それでも、情事を交わし合ったばかりなのに、冷静に動ける新一が、少しばかり恨めしかった。
元はと言えば、小五郎がいずれ帰ってくる事など分かり切っているのに、スッカリ忘れ果てて、新一を招き入れてしまった自分自身が、悪いのだが。
蘭は、ビクビクしていたけれど、小五郎は、何も気付かない様子で部屋の灯を消し、寝間着に着換えると、ベッドに潜り込んだ。
やがて、イビキの音が響き始める。
どうやら小五郎は、程良いアルコールで良い気持ちになり、深い眠りに落ちてしまったようだ。
隣の床から、新一が起き上がる気配があり、蘭も身を起こした。
新一が服を身につけ。
蘭も、服を着る。
新一がそっと足音を忍ばせて、部屋の入り口に向かう。
蘭も、足音を忍ばせて、その後を追った。
一旦、部屋の外に出て、音を立てないように、ドアを閉める。
新一が、蘭を抱き締めた。
蘭も、新一を抱き締め返す。
「蘭……」
「新一……」
「おっちゃんがいずれ帰ってくるだろうって事、分かってたのに、スッカリ忘れてたぜ」
新一が苦笑して。
蘭は、新一にもそんな事があるのかと、少しビックリした。
「いずれ、オメーを嫁さんに貰おうってのに、あの場面を見つかっておっちゃんの心象を悪くする訳にも、いかねーしな」
「うん……」
新一が、咄嗟に蘭とのこれからを考えて、素早く動いてくれたのだと思うと、先程ちょっとばかり悲しかった蘭の気持ちが、一気に浮上した。
「一緒に、モーニングコーヒー……いや、モーニングティは、また、この次な」
「……」
半分冗談めかしたように明るく言う新一の言葉に、蘭は笑おうとして、失敗した。
「蘭……?」
「……ごめん……新一……」
新一とひとつになって。待てる強さを貰ったと思ったけれど。
今、別れがこんなに辛い。
ずっと、離れたくない。
新一が蘭の顔を上げさせ、唇に優しい口付けが降りて来た。
「蘭。いつって約束は出来ねえけど、そう遠くない内にぜってー帰るから……待っててくれよな」
「新一がいつまでも帰って来なかったら、浮気しちゃうんだから……」
「それは、困る」
新一が、妙に真剣な声で言った。
「自分の都合で待たせてるクセに、こっちの都合はお構いなしなの?」
「もし、蘭が男を作っていたら。名探偵工藤新一、殺人犯に転落。なあんて事に、なるかもな」
「え……?」
「ハッキリ言って。蘭に触れた男を、殺さないでいられる自信、ねえ」
「バカ……」
新一が、本気で殺人などする事はないだろうけど。
言葉の中に秘められた蘭への想いは、真剣なものだと感じられて。
蘭の気持ちも、また浮上して行く。
新一は推理バカだけれど、蘭を一途に想ってくれている気持ちはホンモノだと、感じられたから。
「待ってる。だから……なるべく早く、帰って来て」
「ああ。少しでも早く、事件を解決して、帰って来っからよ。約束、忘れんなよ?」
「約束?」
「この次帰って来た時は。ここに、約束の印と……一緒に、モーニングティな?」
新一が、蘭の左手の薬指を指しながら、言った。
蘭は、何かを言おうとしたが胸がいっぱいになって言えず、ただ、コクコクと頷く。
「それじゃ」
新一は、蘭をもう一度ギュッと抱き締め、その唇にキスを落とすと、振り切るように背中を向けて、去って行った。
蘭は、その後ろ姿が廊下の曲がり角に消えるまで、見送っていた。
新一の姿が見えなくなった時。蘭の目から涙が幾筋も溢れて、転がり落ちた。
また暫く新一と会えないのは、寂しいし、辛い。
けれど。
新一と結ばれた事は、ひとつになれた事は、蘭の心の芯を温め、何があっても負けない強さを産んでいた。
新一の言う通り、LOVE=ZEROは、全ての始まり。
蘭は、新一の愛を知って、より強くなる。
☆☆☆
新一は、一旦曲がった廊下から、そっと覗き込み。
蘭の姿が部屋の中に入るのを確認すると。足音を忍ばせて、蘭達の泊まっている部屋の隣、阿笠博士と「江戸川コナン」が宿泊している部屋へと入って行った。
勢いのまま、蘭のバージンを奪った事に、少しばかりの罪悪感はあっても、後悔はしていない。
今の自分は、本来の姿であるが、同時に、仮初めの姿でもある。
24時間経たない内に薬を飲んだ為、おそらく、丸一日この姿を保っている事はないだろう。
やがて、この身はコナンに戻る。
「でも。ぜってー、組織をぶっ潰して、元の姿に戻って、オメーの元に帰って来っから!待っててくれ、蘭」
新一が蘭に言った「オレが十八歳になったら結婚しよう」という言葉には、新一自身の「それまでには絶対、カタをつけて蘭の元に戻ってみせる」という、時限の誓いも含まれていたのである。
新一が、あのAPTX4869を飲んで、6〜7歳の子供の姿になってしまった時。
いくら前向きでポジティブな新一であっても、本来であれば、状況の深刻さに押し潰されてしまっていたかもしれない。
たたかう強さなど、持てなかったかもしれない。
そんな新一を支えて来たのは、幼い頃から育んで来た、新一の蘭への想い。
思いがけず知った、蘭から新一への想い。
そして、「蘭の元にいずれ必ず帰る」という、誓いだった。
「LOVEは、ZERO。ZEROは、全ての始まり。蘭……オレにとっては、オメーが……」
新一にとって、蘭こそ全てであり、始まりであった。
蘭の全てを手に入れて、新一は蘭の為に、そして自分自身の為に、更に強くなる。
始まりの夜 〜 First night in London 〜 :完
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<同人誌版後書き>
初めまして、あるいはこんにちは。ドミです。この本をお手に取って下さった皆様、ありがとうございます。
何年待ったよなロンドン編。萌えました、燃えました〜!待った甲斐が、ありました!
告白だけでいっぱいいっぱいな、そして返事する余裕もないような、手を握るのすらドキドキな、初々しい、甘酸っぱい二人。お互いが、自分の命より大切という、世紀の大恋愛をしていながら、同時に、ウブでピュアで純粋な、あの二人が、私は大好きなんです。
ま、チュウ位はとも、思っていたけど、それは最終回、新一君本当の帰還の暁には、にお願いしたいかなと。
今も、サンデーを引っ張り出して、あのシーンを見ながらニヤニヤニヨニヨ。怪しさ全開で、転げ回ってます。
そう、大満足したんですよ。決して、原作の展開に不満だったから、こういう本を作った訳では、ござんせん。
ですが、腐女子の悲しいサガとして、ヨコシマな妄想がモヤモヤと湧き起こってしまうのも、如何ともし難く。チュウを飛び越えて、二人のお初の夜を、書いてしまいました。
次回は東京のスパコミ、新一君のお誕生日。予定している本は、何故かパラレルものです。正直、ロンドン編に大満足したせいか、今は、原作ネタでの新たな妄想は思い浮かびませんが。もし、原作ネタで、何かポンと浮かんだら、せっかくの新一君のお誕生日ですから、何か書くかもしれません。
それでは、機会がありましたら、いずれまた。
2011年1月9日 ドミ拝
<サイトアップに際しての後書き>
7月2日は、新蘭の告白記念日だったらしいのですが、何も思い浮かばず。
そうだ、せっかくだから、以前同人誌に書いたロンドン編を元にした妄想アフター話をサイトアップしようと思い立ちました。
実際のところは、現在に至るまで、蘭ちゃんのお返事もまだな状況ですが。
このお話では妄想炸裂、あの晩実はそのまま結ばれていたというとんでもない妄想アフター話です。
2015年7月2日 サイトアップ版脱稿戻る時はブラウザの「戻る」で。