魔探偵コナン番外編:男女10人創世記物語



byドミ



プロローグ・人類の誕生


昔々。

いと高き所に、神はおわしました。


そして。
神が作られた水の惑星地球、通称「エデン」には、生命が満ち溢れておりました。
天使と魔族は、それぞれに、天界と魔界に住んでおりましたが、それぞれにエデンに行き来しておりました。


神様は天上界に住み、地上界であるエデンに、直接働きかける事はありません。
神の御姿を見たものは、天使を含めて誰もおらず、天使達も、たまにそのお言葉を聞き、満ち溢れる光を垣間見るだけでした。

そして、エデンの管理は、天使達に任されていました。
天使族と魔族は、時にいさかいもありましたが、大きく対立している訳ではなく、まずまず均衡を保ち、平和に過ごしておりました。


けれど。
その平和が乱される日が、やって来ました。

神が天使達に命じ、神の従順な僕であり地上の獣達の長となるべき種族・人間を、お造りになったのです。


炎の熾天使ミカエルが、炎を束ねて命を吹き込み作り出した人間の男性は、炎のアダムと呼ばれました。
風の熾天使ラファエルが、風を織って命を吹き込み作り出した人間の男性は、風のアダムと呼ばれました。
水の熾天使ガブリエルが、水を固めて命を吹き込み作り出した人間の男性は、水のアダムと呼ばれました。
土の熾天使ウリエルが、土をこねて命を吹き込み作り出した人間の男性は、土のアダムと呼ばれました。
そして、光と闇の熾天使ルシフェルが、光と闇を編んで作り出した人間の男性は、光と闇のアダムと呼ばれました。

しかし、みんながみんな、アダムでは、とってもややこしいので。
お互いに、別の名前で呼び合っておりました。

炎のアダムは、ヘイジ。
風のアダムは、マコト。
水のアダムは、ワタル。
土のアダムは、ニンザブロウ。
そして、光と闇のアダムは、シンイチ。

そういう通称を使っていた・・・というのは、後に神話として語り伝えられる中で、抹消されてしまった史実です。


そして、それぞれの熾天使は、それぞれのアダムに、対になるべき女性イヴを、お造りになりました。
そしてやっぱり、みんながみんなイヴでは、とってもややこしいので。
お互いに、別の名前で呼び合っておりました。

炎のイヴは、カズハ。
風のイヴは、ソノコ。
水のイヴは、ミワコ。
土のイヴは、スミコ。


けれど、光と闇のイヴは、作られる事はありませんでした。


何故ならば・・・。



   ☆☆☆



「リリムちゃ〜ん。ほ〜ら、リリムちゃんの食糧だぞ〜」


光と闇の熾天使、第1級天使のルシフェルは、妻リリスと娘リリムの待つ家に帰り、眠っている娘相手に相好を崩しながら、言いました。
そう言いながら、彼がマントを開くと、そこにいたのは、眠っているひとりの男の子でした。

「え?ルシフェル、その子って・・・」
「どうだ?神の意を受けて、俺が作った、『人間の男の子』だよ」
「人間?聖と魔双方の力を持ち、けれどどちらにも属さない、神の僕?」
「まあ、こいつがどういう性格になるかは、こいつ次第だ。オレ達は、ただ器を作って命を吹き込んだだけ。どうも、それぞれに一筋縄では行かない奴ばっかりのようだけどな」
「ルシフェル。あなた、もしかしてリリムの為に、そのプロジェクトに参加したの?」
「まあ、そういう事になるかな。今、生まれている新しい種類の魔族達は、どうやら、人間という存在が現れる事を感知して、それに先駆けて生まれて来た者達らしいから」
「そうね。わたしはリリムの為に、魔界の奥つ城エクリプスに、わたしの気を吹き込んで作った、ドライアードの木を植えた。今まではまだ、リリムの糧となる存在が、天界魔界エデンを含めて、どこにも存在していなかったから」
「人間という種族も、世代を重ねれば、脆弱な者達が増えるだろうが、オレや他の天使が作った第一世代は、強い力を持つ。リリムの配偶者として、ずっと傍にいる事も可能だろう。ただ、問題は・・・」
「お互い、その気になるかって事でしょ?」
「ああ。まあな」
「でもまあ、配偶者になれるかはともかく、リリムちゃんの餌には、なれるんじゃない?」
「・・・う〜ん。リリムは淫魔に属するから、どの道、成長すれば多くの男とまぐわう事になるんだろうし・・・」


父親として、可愛い娘がいずれ、どこぞの男とそういう関係になるだろうというのは、考えたくない事実ではありましたが。
何しろ、ルシフェルとリリスの娘・リリムは、淫魔という性質上、食事の為には多くの男性とまぐわう必要がある訳です。
父親の感傷で一々妬いていたのでは、始まりません。


ルシフェルが光と闇を編んで作りだした男の子は、ルシフェルによく似た容貌を持っていました。
その子どもが、パッチリと目を開けます。

「まああ!ルシフェルの子どもみたいで、可愛い・・・♪」

思わず、子どもの顔を覗き込んで、ニッコリ笑うリリスに。
その子ども、光と闇のアダムは、最初きょとんとした後、にこりと笑い返しました。


「こいつ・・・女たらしの素養がありそうだな」

ルシフェルが顔をしかめて言いました。

「あらあ。そんなとこまで、ルシフェルに似せなくても、ねえ」
「おい!オレがいつ、女たらしだったと!」
「い・つ・も、じゃない。この間も、袂を分かった筈のミカエルと、仲良くしてたみたいだしー。確か、サリエルにも言い寄られてたわよねー」

リリスが、目を眇めてルシフェルに言いました。

「オレは!そりゃ、軽いのは認めるよ!けどな、浮気なんかした事ねえだろうが!」
「どーだか」



その時。


「誰?」

女の子の声がして、夫婦喧嘩に夢中になっていたルシフェルとリリスは、ハッと我に返りました。
2人の娘であるリリムが、ルシフェルが連れ帰って来た男の子をじっと見つめています。

男の子の頬は、見る間に真っ赤に染まって行きました。
女の子の傍に駆け寄り、その手を取って言います。

「ぼくは、光と闇のアダム。呼び名は、シンイチ。君は?」
「わ、わたしは・・・リリム。でも、これは種族の名前で・・・親しい間柄での呼び名は、ランっていうの」
「じゃあ、ぼくも、君の事、ランって呼んでいい?」

リリムことランは、頬をほんのり染めて頷きました。


「・・・心配するまでもなく、お互い一目ぼれしたようね」
「こらー!うちの娘をナンパするなんざ、百万年早い!離れんか〜〜〜〜!!」

ルシフェルの怒鳴り声は、全く効果がなかったばかりか。
怯えたように身をすくませた子ども達は、ますます、寄り添い合うばかりだったのです。





(1)に続く



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<後書き>


次のお届けは、いつになるか分かりませんが。
とりあえず、「魔探偵コナン」の全ての始まりの物語、です。

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