幻影の魔術師



byドミ



(2)誕生日の夜



時間を少しさかのぼる。
6月20日の放課後、快斗と青子は、一緒に河原の道を歩いていた。

ふいに、青子が、快斗に訪ねて来た。

「ねえねえ、快斗。明日、誕生日でしょ?誕生日のプレゼント、何が良い?」
「は……?」

今迄、あらかじめ聞かれた事はなかったので、快斗は驚いて青子を見る。

「リクエストしたら、何でもくれるのか?」
「う、うん……あんまり高いのは無理だけど、青子があげられるものなら……何でもあげるよ」

ふと、快斗の心にいたずら心が生じた。
青子はきっと、困った顔をするか、怒るか、どちらかだろうと考え、軽く出しただけの、言葉だったのだ。

「じゃあ、青子のバージンが欲しいっつったら、くれるのか?」

青子が、大きく息を呑んだ。
快斗が、「バーカ。冗談だよ」と言いかけると、青子が言った。

「いいよ」

その返事に、快斗が固まる。

「いいよ。それが本当に、快斗が欲しいものだって言うなら……快斗にあげるよ、青子のバージン」
「ま……マジ?」

青子は、快斗の方を見ようとしなかったが、その頬は赤く染まり、表情は真面目なもので。
冗談では、なさそうだった。

そして、快斗には、今更「プレゼントを辞退」するなんてもったいない事をする気は、全くなかった。



   ☆☆☆



6月21日。
黒羽邸に、クラスメート達が集まり、快斗の誕生日パーティがあった。

江古田高校の生徒達は、こういうノリの良さがある。

楽しく過ごし、午後8時にはお開きとなった。

「あら?青子、帰らないの?」
「うん、青子は、片付けのお手伝いをしてから、快斗に送ってもらうから」

青子に声をかけた恵子も、その後の展開を予測できていた訳ではなかった。


片付けが終わった後、快斗の部屋に入る。
快斗の母親の千影は、外国に出かけていて、留守である。


快斗は、青子を抱き締め、唇を重ねた。
2人には、口付けも、初めてである。

舌を絡めながら、青子のワンピースの背中のジッパーを下す。
ワンピースは下に落ち、青子は下着だけの姿になった。
ブラジャーの留め金も外して、取り去ると、青子は恥ずかしそうに胸を覆って隠した。

快斗は青子を抱え上げると、ベッドの上に下す。
胸を隠している手を取り去って、青子の小ぶりな胸の膨らみに手を這わせた。

初めて触れる女性の体。
青子は華奢でメリハリに乏しい体つきであるが、どこもかしこも信じられない程柔らかく、象牙色の肌は、すべすべしていながら快斗の手に吸い付くような感触で、快斗のモノは更に固く勃ちあがる。

「あ……や……あんまり見ないで……小さいし……」
「青子、綺麗だよ。それに、やわらけー」

色づいた胸の頂を口に含み、舌先で転がすと、青子は甘い声を上げた。
女は全身が性感帯というが、青子の体のどこを触れても、青子が好ましい反応を返すので、快斗は有頂天になっていた。

青子の大切なところを覆う布を取り去ると、その泉は大量の蜜を溢れさせていた。
快斗はそこに口を寄せ、蜜をすする。

「あ……やあ……っ!」

青子がのけ反って声を上げた。
その場所にも十分に愛撫を施し、快斗は体を起こすと、青子の秘められた場所に自身をあてがう。

「あ……」
「青子。もらうぜ」

初めての行為は、きっとこの少女に痛みを与えるだろう。
それが分かっていても、もう、止まれない。

快斗はグッと腰を進めた。
青子の中は温かく……予想以上の力で快斗を締め付け、押し出そうとする。

「くっ……きつっ……」
「……っ……痛……っ!」

青子の苦痛の声を聞きながら、快斗は強引に青子の中に自身を押し込んでいく。
やがて全部が、青子の中に納まった。

青子の入り口から溢れ出るものがあった。
それはきっと赤い色をしている事だろう。

「青子……わかるか?全部、入ったぜ」
「か、快斗……」
「青子のバージン、いただいたよ」

青子が、固く閉じていた目を開け、快斗を見る。
その眦に溢れている涙に、快斗の胸は少し傷んだ。

青子が、弱々しく微笑んで、言った。

「ハッピーバースデイ、快斗。18歳の誕生日、おめでとう」
「青子……」

痛みの中で、痛みを与えている男相手に、微笑んでお祝いの言葉を述べる少女相手に。
快斗の奥底から、狂おしい程の愛しさが溢れていた。

「ぷ、プレゼント……気に入ってもらえた?」
「ああ。今迄で最高の誕生日プレゼントだぜ」

快斗は、愛しい少女の唇に、口付けを落とし。
腰を動かし始めた。

少女の顔にまた苦痛の色が浮かぶ。
快斗は、あまりの気持ち良さに、少女への配慮も吹っ飛んでしまい、夢中で動いていた。

「う……く……ああ……っ!」
「青子……青子……っ!」

やがて、快斗は上り詰めようとして、その瞬間、慌てて少女の中から己を引き抜き、欲望を少女のなめらかな腹部の上にぶちまけた。


初めての情事で十分に満足した快斗は、少女の腹部に散った自身の欲望と、少女の秘めた泉から太ももにかけて伝わる、純潔を失った印とを、綺麗に拭い去ると、少女を抱き締めて横になった。
初めて出会った時から、ずっと想いを寄せ続けていた少女を手に入れて、幸せだと思った。

その時の快斗は、青子の目の奥にある昏い色に、青子と自分の認識の違いに、全く気付いていなかったのである。



   ☆☆☆



「青子。いい?」

青子の返事を待たずに、快斗は青子をベッドに運び、押し倒す。

快斗の誕生日以来、快斗と青子は、どちらかの部屋で、ほぼ毎日、体を重ねていた。
快斗は、青子を抱く時のえも言われぬ甘美さを知ってしまったが為に、ついつい毎日求めずには居られなかったし、青子も一度として快斗の求めを拒む事はなかったのだ。

「んっ、あっ……かい……と……」

快斗の腕の中で、青子は甘い声を上げる。
けれど、まだ痛みの方が強いようで、時折苦痛を堪える表情を見せる。
そして、青子はまだ一度も、絶頂に達した事がなかった。

「くっ……青子……っ!」

結局、快斗は、自分だけイッてしまうのである。
青子を一緒に高みに導きたいという気持ちはあれど、快斗も青子が初めての女性なので、どうしたら良いのか分からなかった。

「青子。まだ、いてーのか?」
「う、うん……何かごめんね、快斗。青子って、マグロなんだよね……。快斗、青子がこんなんじゃ、満足出来ないよね」

申し訳なさそうに言う青子に、快斗はたまらない気持ちになる。

「オイ。そこで魚の名を出すなよな。それに、オレは、オメーを抱けるだけで満足してんだから。変な風に、気を回すんじゃねえよ」
「うん……」

青子は素直にこくりと頷くが、申し訳なさそうな表情をしていた。

(青子は、まだ1度もイッタ事がねえ。それなりに感じてはいるようだけど、まだ痛みの方がつええみてえだ。慣れしかねえんだろうけど……)

絶頂に達するかどうかだけが大事な事ではないと、快斗も頭では分かっているのであるが。
大切な愛しい青子を、自分の欲望だけの犠牲にしているようで、いたたまれない気持ちの快斗なのであった。

快斗の悩みは、それだけではなかった。
初めて青子を抱いた時は、夢中で、気付いていなかったが、さすがに今は、少しずつ違和感を感じるようになっていた。

(何でだろう。あれから毎日、青子を抱いてんのに。青子が、オレのもんになってねえ、幼馴染だった頃よりもっと遠いって、感じちまうのは……。青子。オメーは、自由な小鳥。たとえ捕まえたと思っても、オレの手をすり抜けて、飛んで行っちまう……)


違和感の正体が分からず、悶々としてしまう快斗であった。



(3)に続く


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このお話って、私の中での快青原点でも、ありますね。
快斗君は、怪盗キッドというもう一つの顔を持っている。
なので、快青はキ青を含んでこそ、と私は思っています。

私が書く二次創作で、コナンの新蘭ではパラレルが多いのに、まじっく快斗の快青ではパラレルをあまり書かないのは、そこら辺に理由があるのだと思います。
江戸川コナン君が毛利蘭ちゃんに対して抱える秘密と、怪盗キッドジュニアが中森青子ちゃんに対して抱える秘密とは、意味が違うと、思っています。


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