月光花〜世界にひとつだけの花番外編〜



byドミ



蘭は、シャワーを浴びていた。
今夜の事を思い、今更ながらに身が震える。

話の流れと勢いで、新一と初めての夜を過ごす事になった。
それを後悔はしていないが、まさか今日そのような関係になるとも予想していなかったので、何の覚悟も出来ていなかったのだ。

男性と交わる事に対して、おぼろげながら知識はある。
新一とだったらそうなりたいという思いが、蘭の中にあったのも確かな事である。

今夜の成り行きは思いがけない事ではあったが、蘭が心のどこかで望んでいた事でもあった。
けれど、不安・戸惑い・恐れで、蘭の心は揺れていた。



念入りに体を洗い、迷ったが再び下着を身に着け、その上にバスローブを羽織った。
このバスローブは有希子のもので、今迄にも蘭が泊まる時に寝間着代わりに使わせてもらったりしていたのである。
髪をドライヤーで乾かすと、蘭は迷ったが、結局新一の部屋に入り、ベッドに腰掛けた。

新一は、1階のバスルームでシャワーを浴びているようだった。
蘭に2階のシャワールームを使わせ、新一は近所のコンビニに買い物に出かけていたのである。


階段を上ってくる足音がして、蘭は動悸が速くなったのを感じた。
部屋のドアを開けて、新一が姿を現した。
新一もバスローブを身にまとっていた。

蘭を見詰める新一の瞳に、今迄に見た事のない情念の炎を認めて、蘭は思わず視線を落としてしまった。

「蘭」

新一が蘭の隣に腰掛け、ベッドがきしむ。
新一は蘭の顎に手をかけ顔を上げさせると唇を重ねて来た。

新一は一旦蘭の唇を解放すると、蘭を見詰めた。
その瞳の深く昏い色に、蘭は引き込まれる。

「蘭、愛してる」
「新一・・・私も・・・」

てらいもなく、素直に言葉が出た。
新一は蘭をきつく抱き締め、髪に頬擦りする。

「出来るだけ待とうと思ってた・・・でももう・・・引き返せねーよ」

そして再び、新一は蘭の唇と己のそれとを重ねた。

「!!!」

新一の舌が、蘭の唇を割って侵入して来た。
そして、蘭の舌にねっとりと絡まる。

蘭は、身を硬くした。
今迄交わした事のあるキスとは比べ物にならない激しく深いキス。

口付けられながら、息もつけぬ程の強い力で抱き締められる。

「・・・う・・・んふ・・・」

蘭の体は震えていた。
新一の背中に手を回して、しっかりとしがみ付く。

無論、嫌ではなかった。怖いというのでもない。
今まで知らなかった新一の情念を感じ取り、蘭の体の奥底からも湧き上がるものがあったのだ。



2人は口付け合ったまま、ベッドの上に倒れ込んだ。
新一の掌がいつの間にか蘭の胸を包んで揉みしだいていた。

「ん、んんっ!」

新一に胸を揉まれて、口付けられたままの蘭はくぐもった声を出した。
新一の掌がバスローブの合わせ目から滑り込み、胸の下着の中に入り込んで、既に硬くなっている蘭の胸の突起を指の腹で撫でた。
同時に、新一の唇は蘭の唇を解放し、首筋を舌で撫でるように舐めながら胸の方へと移動していく。

「あっ!ああああああっっ!!」

胸の頂を刺激され、初めての感覚に、蘭は思わず高い声を上げていた。

蘭の首筋を移動していた新一の唇が、蘭の胸にたどり着き、胸の果実を探り当てて吸い上げた。

「ああ・・・はああああんん!」

蘭はのけぞって声を上げる。
既にバスローブは両側に広げられ、胸の下着は押し上げられていたが、蘭は初めての感覚に翻弄されて、それに気付いていなかった。

蘭がハッと気付いた時は、蘭を覆うものは下半身の下着だけになっており、今まさに最後の布切れが取り去られようとしていた。

「あっ、やっ!」

蘭は思わず両足に力を入れて閉じてしまい、最後の下着を取り去ろうとする新一の手を押さえてしまった。

「蘭。もう、引き返せねえと言ったろ・・・?」

そう言葉に出しながら、新一の動きは止まる。

「ちが・・・ごめんなさい・・・」

蘭は首を横に振って言った。

「嫌なんじゃ、ないの・・・でもっ・・・」

新一は、大きく息をつくと、蘭を息が詰まるほどの力で抱き締めて来た。

「オレこそ・・・ごめん・・・がっついちまって・・・。蘭。オレが欲しがってるって分かって・・・無理しちまったんだろ?」
「新一・・・?」
「オレは、オレは・・・気が狂う位にオメーが欲しい。けど・・・オメーに無理させて泣かせるのはもっと・・・耐えられねえ・・・から・・・」

新一の振り絞るような声に、蘭は新一への愛おしさが募るのを感じた。
新一の背中に手を回して、きゅっと抱き締め返す。

「馬鹿ね・・・無理なんか・・・してないのに・・・」
「蘭・・・?」
「新一だから・・・恥ずかしいけど見て欲しい。触れて欲しい。嫌なんじゃないの、無理なんかしてないの。でも、初めてだから・・・ちょっぴり怖いだけ」
「蘭・・・」
「いつかは、新一と初めての時を迎えるって思ってたんだから・・・他の誰とも、駄目なんだから・・・だから、ちゃんと抱いて・・・大丈夫だから・・・」
「蘭・・・分かった・・・」

新一が改めて蘭の最後の布を取り去った時。
蘭は恥ずかしさに耐えながら、自らおずおずと足を開いた。

新一の手が蘭の秘められたところを撫で、蘭の体はビクンと震えた。

「綺麗だ・・・蘭・・・」
「新一・・・」

蘭の秘められた花からは、蜜が滴り始めていた。
新一の指が蘭の花弁をなぞり、更に新一が蘭の足の間に顔を近付け、秘められた入り口に舌で触れ、滴る蜜を吸い取った。
新一の舌が秘められた花の花芯を探り当て、ちろちろと柔らかくなぶるように刺激した。

花芯をせめられる強烈な刺激に、蘭は身悶えする。

「あ・・・あっ・・・」

蘭の中心部を疼くような感覚が走る。

「あんっ・・・はっ・・・ああっ・・・あ・・・しん・・・いち・・・私・・・変・・・」
「蘭・・・?」
「ふあっ・・・んああっ、はあああん!!」

蘭は新一の頭を抱きかかえるようにしてしがみ付きながら背をそらし、両足を高く挙げ、痙攣するように足先を震わせ・・・脱力した。
はあはあと荒い息をつく。

「蘭・・・力を抜いてて・・・」
「え?・・・っ・・・」

新一の言葉を、肩で息をしながら聞いていた蘭は、よく意味が分からなかったが、次の瞬間蘭の中に入った来た異物に息を呑む。
入れられたのは、新一の指だった。
今までの行為で溢れ出していた蜜で、挿入はスムーズだったが、蘭の入り口はまだ狭く、新一の指1本でも侵入を拒もうとする。
蘭の目から一滴涙が流れ落ちた。

「う・・・」
「蘭。いてえのか?」

新一の心配そうな声に、蘭は首をぶんぶんと横に振る。

「違うの・・・私の体が・・・私の体なのに・・・新一を拒んでしまうのが、それが・・・悲しくて・・・」
「・・・オメーってさ・・・どうしてそう、可愛い事言うんだろうな・・・」

新一が優しい声で言って、蘭の唇は新一のそれで覆われた。
舌が絡まり合い、胸の果実が新一の指の腹でくりくりとこね回される。
そうしながらもう片方の手は蘭の秘められた場所にあり、指が蘭の中を抜き差しして掻き回し始めた。
蘭の中を新一の指がかき回すたびに、粘着性のある水音が響いた。

「蘭・・・聞こえるか?この音・・・」
「あ・・・」

蘭は真っ赤になって顔を覆った。
新一が優しく蘭の手を取り除く。

「蘭。この音は、オメーがオレを拒んでねえ、受け入れてるって証だよ」
「しんいち・・・」

蘭は、恥ずかしかったけれども、嬉しく思い、頷いた。
自分の体の奥底が熱く疼き、蜜がどんどん溢れ出して来るのは、新一を迎え入れたいという蘭の体の反応だと分かったから。

挿入されている新一の指が2本に増やされ、更に3本になる。
その度に痛みを感じるが、すぐに慣れ、蘭の中をかき回す指の感触に、何だか変な感じがしてくる。

「あん・・・ふあっ・・・あああっ、ああああああん!」

蘭の体をまた先程と似たような大きなうねりが襲い、蘭は手足を突っ張らせた後、脱力した。
荒い息をついている蘭の上に、新一の体がのしかかって来た。

「蘭・・・行くぜ・・・」

蘭の入り口に、硬く熱いものがあてがわれている。
蘭はきゅっと目を瞑って頷いた。
新一は上体を起こすと、蘭の指に自分の指を絡める。
そして、蘭の中に押し入って来た。


「・・・・・・っ!!」

想像以上の重量感と痛みに、蘭は息が詰まりそうになる。
新一の手の甲に傷が付く位、新一と絡め合わせている指に力が入った。

「らん・・・っ・・・!愛してるよ」
「・・・しん・・・いち・・・」

最初新一のものは蘭の入り口からなかなか奥に進まなかったが、ある1点を過ぎたところでググッと一気に奥まで入って来た。
その瞬間、蘭は思わず声にならない悲鳴を上げた。

新一は動きを止め、2人暫く肩で大きく息をしていた。
新一の汗が滴り落ち、蘭の頬に当たる。

蘭の痛みは徐々に落ち着き、蘭はうっすらと目を開けて新一を見詰めた。
新一の深い色の瞳が蘭を見下ろしている。


「蘭・・・。わかるか?今・・・オレが蘭の中に居るのが」
「新・・・一・・・うん、分かるよ・・・私・・・新一と・・・ひとつになったんだね・・・」
「ああ。これで蘭はオレの嫁さんだ。オメーが嫌と言ったって、ぜってー、一生離さねえからな」

蘭は目を閉じる。
痛みや悲しみによるものではない涙が、頬を流れ落ちた。

「うん。新一。新一が嫌と言ったって、絶対、一生離れないから・・・」
「蘭・・・」

新一は蘭と絡めた指を解き、繋がったままに蘭を強く抱き締め、唇を重ね舌を絡めてきた。
蘭はそれに応えながら、自身も新一の背に手を回してしっかり抱き締め、足を新一の腰と足に絡める。

2人お互いに、少しでも隙間が出来るのが惜しいと言わんばかりに、ピッタリと体全体を絡め合った。


やがて、新一の律動が緩やかに始まった。
蘭はその痛みに耐えていたが、痛み以外の感覚が少しずつ蘭の中心部から溢れてくるのを感じていた。

荒く息を吐きながら新一の動きが激しさを増し、蘭は甘い悲鳴を上げて新一にしがみ付き、ベッドが音を立てて軋む。


「あ・・・っ、はあっ、ああん・・・ああっ・・・しん・・・い・・・ち・・・わたし・・・もう・・・」
「蘭・・・くうっ・・・オレも・・・げん・・・かい・・・」

蘭が上り詰める感覚に耐えられなくなると、新一がより大きな動きでそれに応えた。


「んあっ、はっ、ああっああんっ・・・んああああああああっ!!」
「蘭、蘭!くっ・・・うっ・・・はっ」

蘭がひときわ高い声を上げて、目の前が真っ白になり、果てた時。
新一のものが蘭の中で大きく脈打ち、新一も脱力して蘭の上に倒れ込んだ。



   ☆☆☆



新一は力を失った自信を蘭の中から引き抜くと、蘭を抱き締めながら蘭の隣に横たわった。

「新一・・・」
「蘭。ごめん・・・痛かっただろ?」
「少しね。でも、嬉しい・・・」

蘭がそう言って微笑むと、新一が蘭の頬に軽くキスをしてきた。

「オメーってどうしてそう、可愛い事言うかな〜」
「ええ?そうかな?」
「そうだよ・・・」

そう言って新一は今度は蘭の唇に軽いキスをする。

「蘭。オメーだけだ、オメーだけだよ。オレの気持ちも欲望も呼び覚ますのは」

蘭は目を見張る。
男性は、気持ちとは別のところに欲望がある人が多いと聞く。
けれど、新一はそのどちらも蘭にだけあるのだと言う。
蘭はそれが嬉しかった。

新一が蘭の胸を軽く撫でる。
先程と違い、今胸の頂を触れられても何とも感じないのが不思議だった。

絶頂を迎えた後には、少しの間感覚が鈍くなる時間がある事などを、蘭が理解するのはまだこれからの事である。

「・・・他の男には、絶対見せたり触れさせたりするなよ。オメーのこんな姿・・・」

新一が少し体を離してマジマジと蘭の全身を見ながらそう言った。

「ななな・・・!そんな事っ!他の人なんて絶対嫌に決まってるじゃない!」
「ごめん。分かってるんだけどさ、今日のオメーがあんまり綺麗だから・・・」

新一にてらいもなくそう言われて、蘭は絶句した。



蘭自身はこの先も知る事がない。
新一に全てを許している時の蘭が、どれだけ妖しく淫らに美しいのかを。

蘭は新一にとって世界にひとつだけの花であり。
新一の腕の中でだけで花開く、月光花でもあったのだ。




Fin.




+++++++++++++++++++++++++++


<後書き>

表の話を書いたとき、既にこの話の構想はあったのですが。
すっかり書くのが遅くなってしまいました。

で、これは、一応「2005年工藤の日」の記念という事で。
たまたま書きあがる時期が重なっただけですが。

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