The Romance of Everlasting 〜異聞・白鳥の王子〜「あなたと千夜一夜」



Byドミ



(第1夜)歓びと苦しみの夜の始まり



米花京に夜の帳が下りました。
しかし今夜は満月。
室内に居ても窓から充分な明りが差し込み、隅々まで照らしていました。

「蘭・・・」

新一王太子が、窓の傍で佇む乙女に声を掛けますと、乙女はビクンと身を震わせこちらを振り向きました。
今の蘭は、侍女たちに着付けられ、体の線も露な薄物を纏っています。
月の光に微かに浮かび上がる胸やお尻の隆起、対照的な腰のくびれ・・・新一王太子は思わず生唾を呑み込みました。
傍に寄って蘭を抱き締めます。
蘭の体は驚くほどに細く華奢で柔らかく、微かに良い香が漂い、新一王子の理性は簡単に吹き飛んでしまいます。

けれど、蘭の体が強張り細かく震えている事に新一王太子は気付きました。
昼間、同衾を承諾した時の蘭は恥らったような表情を浮かべていたけれど、このように怯えては居ませんでした。
いざとなったら怖くなったのだろうかと考えた王子でしたが、突然ある事に気付きハッとしました。

「蘭?オメーまさか・・・昼間は、オレと一緒に寝るってのが、どういう意味かわかってなかったのか?」

蘭が潤んだ瞳で新一王子を見上げて頷きました。


『ゲッ・・・マジかよ・・・って、もしかして純潔の乙女だったらそっちの方が当たり前なのか?だよなあ、それに初めてならいきなり抱きたいって言われて頷く筈もねえし』

おそらく蘭に同衾の意味を教えたのは侍女たちであろうと思われます。
新一王子は溜息を吐きました。

『あいつらは・・・母さんから因果を含められて俺んとこに送り込まれて来てたんだ、ついでにその手の教育も受けて来てたんだろう。たとえ未経験でも色々知ってて当たり前か・・・。けどまあ感謝しなくちゃいけねーんだろうな、何も知らねえ蘭をいきなり無体な目に遭わせて傷付けずに済んだんだからよ』

新一王子にしても、実はまるきり女性経験無しなのですが、その時代のならいとして教師達からひと通りの事は教わっていたのでした。

新一王太子は、膨れ上がりそうになる欲望を辛うじて宥め、言いました。

「蘭。怖いんだろ?オメーが本当にその気になれるまで・・・オレ、頑張って待つからよ。今だったらまだ・・・引き返せるから」

蘭が驚いたように新一を見上げました。
新一王子はかなりの努力を要しながら、蘭の体を離します。

蘭がもの言いた気に新一王子を見上げました。

「そんな目すんなって。女であるオメーにはわかんねーだろうけどよ、こっちは必死で我慢してんだ、理性を崩すような真似はしねえでくれ。・・・じゃあ、お休み」

今夜は何度も自分自身を慰めないといけないだろうなと自嘲的に思いながら、断腸の思いで新一王子は蘭に背を向け、自室に向かおうとしました。

背後で衣擦れの音がして、新一王子が振り返りますと、身に纏った薄物を全て床に脱ぎ捨て、生まれたままの姿になった蘭が立っていました。

「ら・・・蘭!?」

蘭は大胆に衣服を脱いだものの、恥ずかしげに俯き、胸と秘められた場所を手で隠し(もとより蘭の細腕で全て隠せる筈もないのですが)震えていました。
新一王子は蘭を強く抱き締めます。
蘭が既に覚悟を決めていた事がわかったのです。

「・・・良いんだな?」

震えながらも蘭はコクンと頷きました。

「もう、嫌がったって止めらんねーぞ?」

蘭が再び頷き、新一王子は蘭に深く口付けると、抱き上げて寝台まで運びました。

新一王子も、身に着けている物を全て、脱ぎ捨てます。
そして改めて、月の光に浮かび上がる蘭の美しい体を、感嘆の面持ちで見詰めました。

新一王子は、蘭の肌に手を滑らせます。
そのスベスベした感触が気持ち良く、それだけで頭が沸騰しそうになりました。


蘭の体を抱き絞め、その柔らかい感触を全身で感じ取ります。
胸の膨らみは、新一王子の胸板に柔らかく押し潰されますが、その頂の赤い果実だけは固く凝っています。


『うわ。たまんねー』


蘭は、震え、その顔には僅かな怯えの色もありますが、その瞳は信頼を込めて新一王子を見詰めます。


「蘭」

新一王子は、今日の昼間、その感触を知ったばかりの甘い柔らかな唇に、自身のそれを重ねました。
僅かに開いた唇の間から、舌を侵入させ、蘭の口内を這いまわり、甘い唾液を味わいます。
そして、蘭の舌を捕え、自身の舌を絡めました。


   ☆☆☆


新一王子に抱き締められる感触が心地良く安心出来て、蘭王女は身を委ねます。
お互いの舌を絡める甘く深い口付けの後、新一王子は、蘭の全身をくまなく指と唇とで触れて来ました。

恐れも恥ずかしさもありますが、愛する新一王子に触れられるのですから、勿論、嫌ではありません。
けれど。

『な、何なの、これ!?』

蘭王女の体を、甘く疼くような感覚が襲います。
新一王子に触れられた所が熱を持ち、痺れるような感じが走るのです。

思わず出そうになる声を、蘭王女は必死で喘いで逃しました。


触れられる事が気持ち良く、けれど声を上げられずに必死でその感覚を逃そうとする蘭の体は、ピクリピクリと跳ねるように動きます。

「蘭。蘭。愛してるよ・・・」

新一王子の低く甘い囁きが、蘭の身も心も、蕩かして行きます。


新一王子が、蘭の胸の頂きを捕え、片方は指の腹でこすり、もう片方は口に含み、味わうかのように舌先で転がしました。

「・・・・・・!!」

走り抜ける強烈な快感に、蘭は手足を突っ張らせ、背中を反らしました。
声をこらえる蘭のまなじりから、涙が一滴零れ落ちます。


「ら、蘭!?大丈夫か!?」

新一王子が、慌てたように蘭に声をかけて来ました。
蘭は、こくこくと頷きます。

蘭王女にとっては、声を出せない辛さより、新一王子に触れられる歓びの方が、ずっと大きかったのでした。


新一王子が、蘭王女の足を抱えて広げました。
誰にも見せた事がないその場所を、新一王子がじっと見詰めているのを感じ、蘭王女は羞恥に身を捩ります。


「蘭、すげー綺麗だ・・・」

新一王子が、蘭のそこに顔を寄せ、指と舌とで蘭の泉に触れます。
蘭のそこからは、既に蜜が溢れ出していました。


新たな感覚に、蘭王女の口から甘い吐息と熱い喘ぎが漏れました。
必死で声をこらえる蘭王女は、意識が朦朧としてきます。


蘭の中心部から、新一の指が侵入し、その異物感に、蘭は一瞬身を強張らせました。
抜き差しされる指の動きに、粘着性のある淫靡な水音が響き、蘭の強張りは解け、別の感覚を覚え始めます。

敏感な花芽が、新一の舌で舐められ、体の奥ではじける感覚に、蘭王女は上がりそうになる声をこらえて息をつめ、痙攣したかのように手足を突っ張らせました。

蘭王女は、肩で大きく息をします。
今の感覚は何だったのかと、ぼんやりと考えていました。


「蘭。力、抜いておけよ」

新一王子が、蘭の両膝の裏に手を入れ、押し広げながら、そう言いました。
熱い塊が、蘭の中心部に触れます。

新一王子のモノが、蘭の中に入って来た時、今までの快感を全て打ち消す程の、身を引き裂かれる痛みが、蘭の身を襲いました。

「・・・・・・!」

蘭は必死で新一にしがみ付き、悲鳴を上げないように荒い息をしながら、その感覚に耐えました。

「蘭、ゴメン!愛してるよ!」

蘭の入口は、蘭の意思とは裏腹に、なかなか新一の侵入を許しませんでしたが、ある一点を超えると、新一のモノはグッと蘭の奥まで入って来ました。


そして、その瞬間。
霊気的には、2人の「婚姻」が成立し。

蘭王女は、以後、新一王子の霊気に守られる事になるのですが、同時に。
毛利兄弟にかけられたベルモットの呪いが、新一王子までをも巻き込み、「新一王子に呪いの事を知られれば、呪いは完全に成就してしまう」という条件付けがされてしまったのでした。


ともあれ、2人はその時、それに気付く筈もなく。
蘭王女は、気の遠くなるような痛みに耐えながら、新一王子と一つになった幸せを感じていました。



「蘭・・・大丈夫か?」

新一王子のいたわるような声に、蘭王女はこくりと頷きました。

「蘭、すげー嬉しい。オレを、受け入れてくれて、ありがとう・・・」

新一王子の言葉に、蘭王女は目を見張りました。

「そろそろ、動いても大丈夫か?」

蘭王女は再び頷きました。


ゆるゆると、新一王子が腰を動かし始めます。
蘭王女は、再び襲ってきた痛みに、必死で耐えました。

しかし。


『あ・・・ああっ!これ、一体、何!?』


段々痛みに代わって、別の感覚が蘭王女を支配し始めます。
蘭王女は、熱い喘ぎと、吐息とで、必死でその感覚に耐えました。

新一王子の動きが、段々激しくなり、蘭王女は、全身を支配する感覚に、何が何だか分からなくなってしまいました。


「蘭、蘭っ!」

新一の体から汗が滴り落ちます。
寝台が軋む音と、2人の激しい息遣いと、隠微な水音が響き渡ります。

やがて、新一王子の激しい動きが止まり、新一王子のモノが蘭の中で脈動し、蘭の奥に熱いものが放たれ。
同時に、蘭の頭は白くはじけ、意識を手放してしまいました。



愛する人と肌を合わせて一つになる大きな歓びと。
声が出せない為に、快楽に溺れられない苦しさと。


二つがない交ぜになった、幸せだけれど辛い夜の、始まりでした。



Fin.



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