Better Development



byドミ



(1)



「あ・・・!ああん・・・っ!」

体を突き抜ける快感に、わたしは甲高い声を上げる。
固く立ち上がった胸の飾りは、彼の口の中で転がされ、そこから電流のように疼くような甘い感覚が広がる。
彼の愛撫に慣れた私の体は、快楽に溺れ、私の秘められた場所からは、感じている印の愛液が溢れ出す。

「蘭・・・愛してるよ・・・」
「新一・・・ああっ!」

わたしの中に、新一自身が入って来て。
わたしの体は、歓喜に震えた。
抜き差しされる彼のモノが、わたしの中をこする感覚に、気も狂わんばかりの快楽の波が押し寄せる。
わたしは必死にそれに耐えた。


「あ・・・はあっ・・・ああああっ!」

やがて、わたしの意識は白濁し、わたしはしっかり新一にしがみ付きながら背中を反らし。
新一の熱い欲望が、薄い膜越しに放たれるのを感じながら、わたしも高い嬌声を上げて果てた。


   ☆☆☆


わたしの名前は、毛利蘭。
帝丹大学教育学部の3回生だ。

幼馴染だった工藤新一とわたしとが、お互いの気持ちを告げ合って恋人同士になったのは、3年前、17歳の時。
そこに至るまでには、色々な事があったのだが、それは割愛させて頂く。

事件に巻き込まれて、長い事不在だった新一が、全てにケリをつけて帰って来た時。
真っ先に、わたしに「愛している」と告げてくれた。
わたしは、夢のように幸福だった。

そして、新一とわたしは、初めて体を重ねた。
お互いに初めての事で、勝手も分からず必死だったし、最初は痛いだけで、快感も何もあったものじゃなかったけれど。
新一に抱かれた、新一と一つになれた、それだけで、わたしはすごく嬉しくて、夢のように幸福だった。



けれど。
その日から、既に3年。
わたし達を取り巻く環境も、随分と変わった。


新一とわたしは、別の大学に進学した。
新一は、日本最高峰と言われる東都大学の法学部に。
わたしは、家から通い易く、同じ学園だから進学もし易い、帝丹大学に。
それぞれ、進んだ。


新一は、探偵活動にも真摯に取り組んでいるし、学業も頑張っているし、かなり多忙な様子だ。
わたしはわたしで、空手の部活に力を入れているし、高校の頃よりもの入りなのでアルバイトもやっているし、その上、相変わらず毛利家と毛利探偵事務所の主婦代わりもやっているから、かなり忙しい。

新一と会えるのは、週に1、2回位。下手すると、2〜3週間会えない事も、ザラだ。

寂しいけれど、わたしは別に、それが「不満」な訳では、決してない。
お互いに、自分のすべき事を頑張ってんだもん。
遊んでる訳じゃないんだもん。

新一と会いたいなと思う事はあるけど、それぞれに事情があって会えないのは仕方がないし、不満なんかじゃない。

ただ。


ここ暫く、新一と一緒に、映画も見ていないし、遊園地にもショッピングにもドライブにも、出かけていない。
会うのは、殆どが新一の家で。



「んん・・・っ、あああっ・・・やああっ!」
「蘭・・・すげ・・・イイぜ・・・くっ!」

ここ最近、新一とわたしは、会うと必ず、体を重ねていた。
離れていた時間を埋めるように、お互いを激しく求め合い、快楽を貪るだけの逢瀬。


「愛してるよ、蘭」

告白されて、付き合いだした頃は、いつも新一の口から聞かされていたが。
最近の新一が愛の言葉を囁くのは、ベッドの中でだけ。


新一との行為が、嫌なんじゃない。
新一に抱かれると、歓びでいっぱいになる。
身も・・・心も。

けれど。


『新一にとって、わたしは、もしかしたら、欲望を満たす為だけの存在?』


その疑いが、少しずつわたしの中に湧き上がっていた。


   ☆☆☆


「それは・・・やっぱ、体目当てなんじゃない!?」
「や、やっぱり、園子もそう思う?」
「そうよ!ね、蘭も、そう思うよね!?」
「え・・・?」

突然、園子から話を振られて、わたしは慌てた。

「もう!蘭ってば、真紀の話、聞いてなかったの!?」
「き、聞いてたけど・・・」

ここは、帝丹大学内のカフェテリア。
親友の園子は、私と同じ帝丹大に進学した。
園子は経済学部、わたしは文学部に籍を置いている。

で、今は、大学に入ってから出来た友人・高田真紀の、彼氏である片山栄治に関する悩み事を聞いているのだった。

「外でのデートは一切なし、お互いの部屋に泊まってエッチするだけのお付き合い。やっぱ、それってエッチだけが目的なんじゃないの?」
「・・・単純に、そうとも言えないと思う・・・」

いきり立つ園子に、わたしは無意識の内に、そう返していた。

「そりゃ、蘭は、蘭一筋の新一君とお付き合いしているから、エッチ目的の男が世の中に居るなんて、分かんないかも知れないけどさ」

園子の言葉に、わたしの胸は、ズキズキ痛む。

新一は、大学も別の所に行っているし、事件に取り組んだりする関係で、色々と人脈も出来ているし。
世界が狭かった、高校の頃とは、違う。

新一から告白を受けた頃は、新一の気持ちがわたしにだけ向かっていると、純粋に信じる事が出来たけれど、今は。
世界が広がって、素敵な女性との出会いも沢山あって、新一の気持ちも、他に向く事があるかも知れない。

「蘭?」
「あ・・・だ、だって・・・真紀も片山君も、お互いに忙しいし、それに、どこかに行くお金もないんだったら、どうしても、家で過ごすデートになっちゃう訳でしょ?それって単純に、体目当てとも言い切れないと、わたしは思う」

わたしは、何となく、自分自身に言い聞かせるように、そう言った。

新一もわたしも、真紀たち以上に忙しいのは事実だから。
新一が体目当てだなんて考えるの、間違ってるよね?


でも、新一の場合、片山君と違って、「外でデートをするお金がない」って事は、多分、ない。
別に、新一に「お金を使って欲しい」って思ってる訳じゃないけど。
エッチ以外のデートをしようと思えば、新一には、いくらでもできる筈。
そんな風に考えると、また、ずんと落ち込んで来た。


「片山君って、真紀が嫌がっても、強引にエッチに持ち込んじゃうんだよね?」
「え・・・?」

園子の言葉に、真紀が少し狼狽したような顔をした。

「あたし、拒んだ事なんか、ない・・・」
「へっ!?何で!?」
「だ、だって・・・!あたしだって、栄治とのエッチが嫌なんじゃないもん!」
「なあんだ。嫌じゃないんだったら、会えばエッチでも、別に良いじゃん」
「だ、だから!それだけ、ってのが、嫌なだけだもん!」

あ。
真紀の気持ち、よく分かる。
わたしだって、新一に抱かれるの、嫌じゃない。
って言うか、むしろ好き。

ただ。
「それだけ」ってのが、不安になる。
新一がわたしに求めるのが、それだけなんじゃないかって、不安になる。

「栄治ってばさ、会う前は、こまめにメールも電話もくれるのよ。でも、エッチした後2、3日は、音沙汰なし。だから、エッチが済めば、あたしにはもう、用がないのかなって」

あ。
新一も同じだ。
ズキズキズキ。
心臓が痛む。


「だからさ〜。真紀、ちゃんと、エッチだけじゃ嫌だって、言いなよ」
「で、でも・・・そんな事言ったら、嫌われないかなあ?」
「そこで嫌うのなら、その程度の男よ!その時は、キッパリ切りなさいよ!」
「そ、そんな事、出来る訳ないじゃないの〜!」

ああ。心臓が痛い。
わたしは、わたしは。
新一に嫌われてしまうのが怖い。
たとえ、新一がわたしの体だけが目的でも、それでも構わないから、離れたくはない、そう思ってしまっている自分が居る。


「それにね・・・最近、栄治って・・・ゴムつけてくれなくて。わたしがつけてって頼んでも、大丈夫大丈夫って・・・」
「ええっ!?」

わたしは、思わず声を上げた。

「蘭?」
「あ、ご、ごめん・・・変な声、出しちゃって」
「新一君って、まさか、避妊してくれてない訳?」
「あ、ううん・・・それは毎回、きっちり・・・」
「何だ、蘭、やっぱ愛されてんじゃん」
「そ、そうかな・・・」

避妊をするのとしないのとでは、常識的に考えると、前者の方が「彼女を大切にしている」と、言えるだろう。

でも。
新一の場合、わたしを大事にしていると言うよりは、冷静に「妊娠する可能性」をきちんと認識しているだけではないかという気がするのだ。

新一もわたしも、母親が二十歳の時に産んだ子供だ。

うちの両親が、学生結婚で、苦労したのは確かだろうけれど。
それでも、今の新一とわたしなら、「親の同意なしに結婚が可能」なのだから。

わたしは、何となく。
新一が避妊を欠かさないのは、今は、わたしと結婚する意志がないのでは?という風に感じ始めていた。

そんな筈はない、新一は、そんな冷たい薄情な人間ではない、と一方で思いながらも。
新一の気持ちを疑い始めている自分が、すごく嫌だった。


「何かさ・・・絶対って事はないのに、どっかで『妊娠する筈ない』って高括ってる、考えなしっているよね。男にも女にも」
「う、うん・・・。片山君の場合、どうなんだろうね?」
「真紀。これは、きちんと片山君と、腹を割って話すべきだと思うよ」
「だ、だって・・・嫌われたくないもん!」
「バカね〜、そんな事言っててさ、本当に子供出来たら、どうする気よ?あんた、堕ろすしかないでしょうが。そうなったら、片山君に嫌われるとかどうとか、言ってられなくなるよ」


やるだけの事はやって置きながら、無責任に、彼女が妊娠したら離れて行く男の人を、今迄何人も見て来た。
きっと新一は、そういった無責任な事が出来ない人なのだと、思う。

でも、だから。
「わたしが大切だから」ではなくて、「責任を取らなくて良いように」、避妊をきちんとやってるんじゃないか。

いくら、馬鹿げていると思っても。
わたしの思考は、そういった泥沼から、抜け出せないでいた。


(2)に続く



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《後書き》

裏の連載が、パラレルばっかなので、たまには、「原作設定」の、裏連載をやりたいなと思って。
出来た話が、これ、だったりします。

ストーリーは、あるようなないような。
一応、大まかなポイントは、決めてあります。
まあ、だから、ラストがどうなるかも、大体決めてあるんですけどね。

これ、タイトルの意味、分かりますかね?
英語をそのまま訳した意味も含めてますが、もうひとつ、重ねてます。
タイトルが、全てを決めていると言っても、過言ではありません。
当てた人がいたら、気まぐれにリクエスト権を差し上げるかも(笑)。

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