愛人(!!!?)生活 番外編 すべての始まり
by新風ゆりあ様
(5・最終話)怒り
嵐が去った後、ヨーコは怒りが沸き上がるのを抑えきれなかった。
(毛利さんが幸せそうに見えなかったのは、社長の態度のせいもあるかも知れないけど、鈴木さんの余計な一言がなければ、毛利さんがあんなにも苦しむことにはならなかったはずだわ!一言文句を言わないと!)
頭に血が上ったヨーコは翌日、鈴木邸に電話を掛けた。
「私、ナイトバロン社の事務員の沖野ヨーコと申します!鈴木園子さんにお会いしたいのですが、よろしいでしょうか?」
「少々お待ちください。園子お嬢様に訊いてきますので」
メイドが対応した。
電話に出たメイドは園子に訊きに行った。
「園子お嬢様、ナイトバロン社の事務員の沖野ヨーコさんという方がお嬢様にお会いしたいと申しているのですが、どういたしますか?」
メイドが尋ねた。
「ナイトバロン社の事務員の沖野ヨーコさん?ナイトバロン社は鈴木財閥の大切な取引相手だし、むげにはできないわね。すぐに来てくださいとお伝えして」
園子が答えた。
メイドはヨーコに園子の答えを伝えた。
「お待たせしました。すぐに来てくださいとのことです」
「わかりました」
ヨーコは電話を切り、鈴木邸に向かった。
鈴木邸に着いたヨーコは、玄関のチャイムを押した。
ピンポーン。
するとほどなくして鈴木邸の中からメイドが現れた。
「あの!私、先ほど電話したナイトバロン社の事務員の沖野ヨーコです!」
ヨーコがメイドに頭を下げた。
「園子お嬢様にお会いしに来られたんですね。お上がりください」
メイドがヨーコを促した。
「失礼します」
メイドに促され、ヨーコは鈴木邸の中に入った。
「こちらでございます」
メイドはヨーコをリビングに連れて行った。
ヨーコがリビングに入ると、そこには一人の女性がいた。
「あなたがナイトバロン社の事務員の沖野ヨーコさん?私は鈴木園子。初めまして」
女性が名乗った。
「初めまして。ナイトバロン社の事務員の沖野ヨーコです」
ヨーコが名乗った。
「で?私になんの用事なのかしら?仕事のことなら社長さんが来られると思うんだけど、どうもそうじゃないみたいね」
園子が尋ねた。
「はい。仕事のことではありません。毛利蘭さんのことです」
ヨーコが答えた。
「蘭のこと?」
園子が首を傾げた。
「えぇ、そうです!あなたの心無い余計な一言のせいで毛利さんは傷ついたんです!その責任を取ってもらいたいんです!」
ヨーコが声を荒げた。
「は?私の心無い余計な一言って何のことかしら?」
園子が尋ねた。
「とぼけないでください!あなたなんでしょ!毛利さんに変なことを吹き込んだのは!ナイトバロン社の社長には元女優の美しい奥様がいて、社長はその奥様を溺愛してる。あなたは毛利さんにそう吹き込んだんでしょうが!」
ヨーコが詰め寄った。
「あ、あぁ。そういえば私、確かに蘭にそう言ったわ。でもそれは前の社長のことで、今の社長のことじゃないわ!」
園子がやり返した。
「鈴木さん。あなたは仮にも鈴木財閥の次の後継者なんでしょ?なんでもっと早くにナイトバロン社の社長が代替わりしていることを調べなかったんですか?あなた本当に鈴木財閥の次期後継者という自覚があるんですか?」
ヨーコが詰め寄った。
「ぐっ!」
園子が言葉に詰まった。
「言葉は刃物なんです!使い方を間違えると、人の心を簡単に傷つける凶器になるんです!それをもっと自覚してください!そしていつの日にか、何らかの形で毛利さんに謝罪してください!わかりましたか!」
ヨーコがすごい剣幕で、園子に詰め寄った。
「わ、わかったわよ!ちゃんと謝るわよ!」
ヨーコの剣幕に、園子がたじたじになりながらも答えた。
「お願いしますよ!では私はこれで失礼します」
そう言って、ヨーコはリビングを出て行った。
ヨーコがリビングを出て行った後、園子がため息をついた。
「あの人、沖野ヨーコさんって言ったっけ。ナイトバロン社の事務員だって言ってたけど、蘭と仲がいいのかしら?蘭のことで私や小五郎おじさまや英理おばさま以外に熱くなれる人がいるなんて」
ヨーコは蘭とはさほど親しくはなかったのだが、蘭の優しさや健気さがヨーコの目には好ましく写っていた。
もしヨーコが女ではなく男だったら、間違いなく蘭にプロポーズしていただろう。
「それにしても蘭ってば社長秘書のくせに社長の家族構成を知らなかったのかしら?ったく、蘭ったら!しっかりしてるくせにどこか抜けてるんだから」
園子がため息をついた。
そしてその後、園子は蘭への謝罪として、十二月の大安吉日日曜日に一流のホテルの大きな会場を、結婚披露宴の会場として押さえたのだった。
終わり
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