愛人(!!!?)生活 番外編 すべての始まり



by新風ゆりあ様



(3)同棲生活



新一と蘭は月曜から金曜までのほぼ毎日を、ホテルに泊まって過ごした。

新一に仕事がない土曜日の昼間や、たまに普段でも時間が取れた時などに、映画を観たり食事に出かけたりといったデートらしい時間を過ごしたが、仕事が忙しい新一は、時間を作ることもままらなかった。

そして新一は、土曜の夜から月曜の朝にかけては必ず家の方に戻り、蘭と週末を一緒に過ごすことができなかった。

それらを埋め合わせるため、新一は毎晩何回も蘭を抱いた。

月曜の晩は会えなかった間を埋めるために蘭を抱き続けた。

蘭の大学卒業式の夜、仕事を終えた新一は、蘭を迎えに行くため、蘭が大学の友人たちと卒業記念パーティをやると言ったカラオケボックスに向かった。

その途中で新一は蘭が通りすがりの男に手を掴まれている場面に遭遇した。

「放して!やだっ。新一っ!」
蘭は得意の空手技を繰り出そうとしているようだった。

新一は隣人である阿笠博士が作ってくれたボール噴出ベルトからボールを出して、ボールを蹴って、男の顔面にヒットさせた。

新一は学生時代にサッカーをしていて、その足さばきはプロも一目置くほどだった。

「新一?」
蘭が目を丸くした。

「蘭、こんな時間に何一人で歩いてんだっ!」
新一がとがめた。

「え?だ、だって」
蘭が縮こまった。

新一は蘭に駆け寄り、肩を抱き寄せ、敵意に満ちた目で周囲を見回した。

新一の迫力に、近くを通りかかっていた男たちは皆、蜘蛛の子を散らすように去って行った。

蘭の手を掴んでいた男も、新一の迫力に負け、ほうほうのていで去って行った。

新一は蘭を引きずるようにして歩き始めた。

「新一、なぜここに?」
蘭が尋ねた。

「あそこのカラオケボックスで卒業記念パーティやるって言ってたろ」
新一がカラオケボックスを指さしながら答えた。

「ねえ、新一。何怒ってるの?」
蘭が尋ねた。

「え?」
新一が目を丸くした。

そして立ち止まり、振り返って蘭の顔を見た。

「ワリィ。オメーに対して怒ってるわけじゃねーんだ。だから泣くな」
新一が謝った。

(こいつの涙。心臓にわりーな)

「だ、だって」
蘭の目から涙が零れ落ちた。

「その・・・、オメーの容姿は男心をそそるし。それに、オメーってよく今まで無事だったなと思うくらい無防備だから」
新一が言葉を濁した。




「あ、はっ、やああっ、しん、いちっ・・・」
蘭が甘い声を上げた。

「らん、らん。・・・っくっ・・・。オメーはオレのもんだ。誰にも渡さねー」
新一が一段と激しく蘭を求めた。

「あああっ。はああんっ!」
蘭が上り詰めると同時に、新一が蘭の中で果てた。

新一が蘭の中から自身を引き抜くと、蘭の中から二人の体液が混じり合ったものがドロリと零れ出た。

「あ・・・」



次の日、新一は蘭を連れて、ナイトバロン東京本社から歩いて数分のところにあるマンションに向かった。

「いつまでもホテル暮らしというのもなんだし、ここを借りることにしたんだ」
新一が微笑んだ。

マンションの部屋の中は既に家具調度は運び込まれていて、すぐにでも生活できるようになっていた。

二人暮らしでも十分すぎるほどのスペースがある、ファミリータイプのかなり贅沢と言える造りのマンションだった。

「あ、あの、新一?」
蘭が目を丸くした。

「ここに引っ越して来いよ。アパート引き払って」
新一が微笑んだ。

「ええ!?そ、そんなこと、無理よ!」
蘭が驚いた。

「なんで?」
新一が尋ねた。

「だ、だって。お父さんたちになんて言ったらいいの?時々遊びに来ることや、様子を見に来ることだってあるのに」
蘭が答えた。

「ああ、そのことか」
新一が納得した。

そしてリビングの奥にある扉を開けた。

そこは家具も何もまだ入ってない、独立した1Kになっていた。

「新一、ここは?」
蘭が目を丸くして尋ねた。

「ここ、もともとは年寄り世帯が一緒に住むための二世帯住宅なんだ。独立した玄関もあるし、リビングに通じるドアを目隠ししてしまえば、知らない人にはただの1Kのマンションにしか見えない。ここに蘭の荷物を入れて、ご両親や友人が遊びに来たときは、こっちの部屋に通すようにしたらいい」
新一が答えた。

「でも新一。例え1Kでも、場所柄家賃は高そうよ。それに今までの安アパートに比べたら、格段に造りが立派だし。やっぱり新卒の女が借りるには、分不相応だって気がする」
蘭が恐縮した。

「ああ、それなら、社員寮ということで。事実、うちの秘書たちはみんな、時間外勤務が多い代わりに、会社の近くに似たような規模の1Kかワンルームのマンションを、寮として借り上げて支給されてるから」
新一が微笑んだ。

「え?ひ、秘書!?」
蘭が目を丸くして驚いた。

「ああ。蘭は社長秘書室に配属が決まってるんだ。あ、心配しなくても、あそこは複数配置されてるから、いきなり秘書として独り立ちさせられることはねー。大丈夫。蘭だったらすぐに仕事を覚えられるから」
新一が微笑んだ。

こうして蘭の愛人(と思い込んでしまう)生活が始まったのだった。



4話目に続く


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