13年越しの想い(メッセージ)
By 中村亮輔様
〈1〉
東都 桜木門前にある警視庁。
そこは東都の警察の本部で多くの警官が凶悪事件から軽犯罪まで様々な事件の捜査に全力を挙げている。
そんな警視庁のカフェテリアに5人の男女が談笑していた。
「いやー。まさかあのコナン君が工藤君だったなんて…でも、今思えば、小学1年生にしては推理が出来過ぎるという謎が解けましたよ。」
「そうね。東都銀行支店長夫人殺害事件や、渉君が拉致・監禁された時もコナン君の一言で解決したもんね。」
「そうですね。」
「そういえば…話は変わりますけど、高木刑事と佐藤刑事は無事に結ばれたんですね。」
「………!(/////)」
「………!(/////)」
「そうそう。まだ昼間だというのに一課の中で恋愛ドラマさながらの熱々ぶりで、全く困ったものですよ。」
「本当ですか?千葉刑事!?」「ああ。」「(/////)あ…あら、そう言う蘭ちゃんと工藤君も熱々だって聞いたけど?」
「な…!?(/////)」
「え…!?(/////)」
「『誰からそんなことを?』って顔ね。2人のよく知ってる人よ。」
「まさか…」
「そう。そのまさかよ。その人によると教室でよくキスしてるそうじゃない。」
「してません!」
「はは、そんなにむきにならなくてもいいんじゃないかい?」
「千葉刑事まで…」
「そう言う千葉も早く恋人見つけ
て、部屋の整理とかしてもらったほうがいいんじゃないか?」
「おいおい高木…大きなお世話だよ。」
「あははははは…」
「クスクス…」
「ほら、工藤君や蘭ちゃんに笑われてるじゃないか。」
「工藤君と蘭ちゃんも失礼だな…」
彼らは、高校生探偵の工藤新一、新一の彼女の毛利蘭、警視庁捜査一課強行班三係の高木渉刑事、佐藤美和子刑事、千葉刑事だ。
休憩するために高木刑事、佐藤刑事、千葉刑事がテラスにやって来た時に偶然、事件の手伝いに来ていた新一と新一を迎えに来た蘭を見つけて盛り上がっていたのだった。
「じゃあ、そろそろ俺達は帰ります。」
「お仕事頑張って下さいね。」
「それじゃあ、僕達も帰りますか。」
「そうね。」
「じゃあ僕はまだここに残りますよ。」
「早く帰れよ。」
「分かってるよ。」
そう言って新一、蘭、高木刑事、佐藤刑事の4人が一気にテラスを去り、千葉刑事だけになった。
千葉刑事は2組に分かれ、仲良く腕を組みながら帰って行く4人の後ろ姿を見ながら溜め息混じりに呟いた。
「恋愛ドラマか…僕には恋愛なんて縁が無いもんな…ただ1人、小学校の頃にラブレターを書いて渡して、『私も好き』って返事(メッセージ)をビデオテープに残して転校していったあの子も同窓会の時に『念願叶ってやっと好きな人と一緒になれた』ってノリノリだったって聞いたからな…今はこの狭くも広くも無い日本のどこかで、その好きな人と楽しく平和に暮らしてるんだろうな…少年探偵団の言う通り、高嶺の花だったのかも…しれないな…」
千葉刑事は一課に戻り、荷物をまとめていたが、背後から視線を感じて振り向いたが、そこには誰もいなかったため、彼は首を傾げた。
それから暫くして、千葉刑事はテラスを出て、駐車場にいた。
自分の車の停車スペースに向かう途中にミニパトを見つけ、自分の初恋の女子に似ていて、デシャビュすら覚えた巡査を思い出したが、その時と同じく「まさかね…」と呟いて打ち消した。
翌日、千葉刑事は連続強盗の聞き込みを高木刑事としていた。
「さて、大体証言が集まったな…そろそろ一課に戻るか?」
「ああ。もう昼だし…それに佐藤刑事に昼食一緒に食べないかって誘われてんだろ。早く行かないと、佐藤刑事に叱られるぞ。」
「五月蝿いな…」
「なあ千葉、結局、昨日何時まで残ってたんだ?」
「あれから、大体…30分位だな。」
「何してたんだ?まさか食堂でまた何か食ってたんじゃないだろうな?」
「何も食べてないよ。」
「なら良いけど。それ以上食べたら、また太るからな。」
「余計なお世話だよ。それはそうと…なあ、高木。」
「どうした?」
「昨日、お前、何かやらかしたっけ?」
「いや。特に何か起こしたことはないはずだけど…何でそんなことを聞くんだ?」
「実は―――」
その時、千葉刑事の声を遮る轟音が響いた。
2人の目の前で、乗用車とトラックが出会い頭に正面衝突したのだった。
2人が駆け寄ると、乗用車とトラックは両方ともフロント部分が潰れ、ガラスは割れて、飛び散り、かなり酷い有り様だった。
トラックはそのまま停止したが、乗用車に至っては横転していて、その上、近くに停車していた無人の観光バスに激突していた。
それだけ衝突したときの衝撃の激しさが見てとれた。
「早く救急車と消防を呼んでくれ!俺は無線で本部と交通課に連絡しておく。」
「分かった!」
「もしもし?由美さん?」
『そうよ。どうしたの?』
「今、杯戸3丁目の交差点で乗用車とトラックが正面衝突を起こした!早く来て下さい!」
『分かったわ。すぐ行くから、待ってて。』
そして、消防、救急車が到着し、乗用車とトラックに乗っていた人は全員救出され、救急車に乗せられ、病院に運ばれた。
幸い命に別状はなかった。
救急車が走り去ったあと、ミニパトがサイレンを鳴らしてやって来た。
「お疲れ様。連続強盗の聞き込みの後は交通事故か…大変ね。」
「ハハハ…」
「で、現場はどんな感じ?」
「乗っていた人は全員命に別状は無いらしいが、皆、重症らしい。」
「そう…じゃあ、現場まで案内して。」
「はい。」
「新人ちゃん!早くして!」
「は、はい!今、行きます!」
「うわ…これはまた凄い現場ね…乗用車とトラック両方とも前がペシャンコになっているうえに、乗用車は横転して、止まっていたバスに激突してるわね…よくこれで、死者が出なかったわね……」
「通報が早かったかららしいです。」
「高木君、千葉君!2人には大変だろうけど、一緒に捜査してくれない?警部には伝えておくから。」
「分かりました。」
「あの…」
「ん?どうかした?新人ちゃん。」
「いえ、現場検証を始めるから早く来てくれって。」
「分かった。今行く。あ、それと…」
「はい。」
「高木君と千葉君から事故の様子を聞いてくれない?2人共ばっちり一部始終を見てるらしいから。」
「分かりました。」
新人の返事を聞いた由美は現場に走って行った。
事情聴取は高木刑事、千葉刑事の順番で行われた。
高木刑事が事情聴取を受けている時千葉刑事は自分も被害に遭った連続車上荒らしのことを思い出していた。
犯人の重井徳子は息子の命を奪ったリアウインドウがぬいぐるみやフィギュア、ゴルフクラブなどの物やウイング、痛車のシールなどで塞がれている不謹慎な車に戒めの文字を片っ端からスプレーで刻んでいて、事故の被害者が加害者になるという最悪な形の事件だった。
そして千葉刑事の番になり、千葉刑事は由美の言う『新人ちゃん』の質問に答えて行ったが、またしてもデシャビュを感じていた。
しかし彼は聴取に集中するために、またもや打ち消した。
そして無事に事情聴取が終了し、一課に戻った2人は、目暮警部の好意により、早く帰宅したが、2人共近くの喫茶店に入った。
そして2人より少し遅れて佐藤刑事と、由美言わく「新人ちゃん」が入店してきた。
「ごめんね。2人共。由美も来るはずだったけど、急用で来れなくなったらしいから、私とこの娘だけで来ちゃった。」
「こ、こんばんは。」
「こんばんは。」
彼女のぎこちない挨拶に男性陣は安心させるかのような挨拶を返した。
それから1時間後……
喫茶店には千葉刑事と「新人ちゃん」の2人が談笑していた。
しかし、千葉刑事は話せば話すほどデシャビュが強くなってきた。
覚悟(?)を決めた千葉刑事はゆっくりと聞いた。
「なあ…君の名前を教えてくれないかい?まだ聞いてなかったよね?」
「は、はい…私の名前は……」
「名前は?」
「み、三池……苗子……です。」
「か弱く、今にも消えそうな声を確実に聞き取った千葉刑事は濃霧のようなデシャビュが一気に晴れた。
そう……彼女こそが、自分がラブレターを渡し、ビデオテープに『私も好き』と残し転校していった少女だったのだ。
〈2〉に続く
(作者の言葉)
今回は始まったばかりの千葉刑事と三池苗子巡査の物語です。
千葉刑事はふられたと勘違いし、三池巡査は忘れられていると思い込んでいる状態。
お互いがお互いを誤解している2人をどうやって進めて行くかとても迷いました。
正直、今まで書いたものの中で一番難しかったです。
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