ceremony after (sweetly)
あおり様
都会の夜空は星が見えなくて寂しいものだけど。
それを補うかのように地上に流れる天の川のような夜景を大きな窓から眺めて、蘭はふうっと息をついた。
「流石に疲れた?」
声に振り返るより早く、背後から柔らかく抱きしめられる。
上着を脱ぎ、ネクタイも外したシャツの胸に頭を預けて上を見ると、同じように覗きこんでいる新一と目が合った。
「平気。夜景があんまりきれいで、ため息が出ちゃっただけよ」
微笑む蘭に、新一も笑みを返す。
教会での挙式、パーティー、二次会と、今日一日は本当に二人にとって目の回るような忙しさだった。
それでも多くの人に祝福され、晴れて夫婦となったのだから疲労よりも喜びが勝っていて、充実した一日だった、と思う。
二次会の後さらに内輪のごく親しい友人たちだけで軽く飲んできた後、今日式を挙げたばかりの教会も眼下に見下ろせるこのホテルの一室へと落ち着いた。
蘭は身体を新一の方に向けようとしたがしっかり抱きこまれ、片手で顎を押さえられて顔向きさえも
変えられない。
仕方ないのでそのまま言う。
「いい眺めで、嬉しいけど…家に帰っても良かったのに。」
「オイオイ、冗談だろ?今日は父さん母さん、家に泊まるって言ってたし、今ごろ毛利夫妻も呼んで飲みなおしてる頃だろ。阿笠博士なんかも、来てるだろうし」
「いいじゃない。」
「…オメーが気ィ使うだろ〜が。今日のことでさんざんからかわれるのも目に見えてるし…それに、さ…」
そこで顎を押さえた手で蘭の顔を少しこちらにむけさせると、斜め上からその唇をふさいだ。
「…んっ…」
突然深く接吻けられ、喉の奥だけで細く声をあげる。蘭の呼吸を支配しながら、身体に回した手をずらして胸を柔らかく掴んだ。
蘭の肩がぴくんと竦む。
「親のいる家でこんなこと出来ないだろ?」
唇を離し、囁く。耳に直接流れ込む甘い声に、蘭は頬に血が昇るのを感じて身を捩る。
新一はお構いなしに手を進めてワンピースのボタンの間に指を器用に滑り込ませ、中の胸を探りながら思い出したようにぶつぶつと文句を言った。
「だいたい、ありえねえ話だろ。結婚を控えた二人が、式の前日まで2週間も引き離されて過ごしたってのはさ」
「や…ん…それは、だって…」
新一が文句を言いたくなるのも無理は無い。
この2週間というもの、園子とあちこちに出かけて泊まって来たり、毛利親子で温泉に出かけたり、夫の操縦法でも伝授するつもりなのか有希子と英理に連れ出され母親同伴の夜遊び(?)したりと、独身最後の日々を惜しむかのように精力的に連れまわされていた蘭と、何かの策略のように仕事に追われた新一とはまるで目に見えない力に阻まれたかのように会えず仕舞いだったのだから…不満たらたらの新一に文句を言われた園子だったが、逆に眉を吊り上げてこう言った。
「いいじゃない!結婚したらもう一生蘭のこと独り占めにするくせに!」
…こう言われては引き下がるしかなく、不満と寂しさと時にイライラを抱えながら過ごした2週間だった。
それだけに今日、ウエディングドレスを着た蘭と対面したときあまりの美しさと、久しぶりに見た懐かしさにひどく照れてしまい、思わず抱きしめそうになったが介添えの人がいたのでなんとか踏みとどまった。
当然の事ながら、その2週間は夜も独り寝だったのだから…
「そろそろ、ガマンできないんですけど?花嫁さん??」
そう告げるときつそうに服地を押し上げている胸のかたちを、確かめるように下着の上から撫で上げる。
「あん…もぉ」
不意打ちに思わず全身で反応してしまった蘭はそれでも一応型どおりに抵抗を試みる。
「シャワー…浴びてから。」
「いいけど。当然…一緒に、だろ?」
「え〜〜っ!///ダ、ダメ!!//////」
真っ赤になって首を振る蘭に新一が不満げに口を尖らす。
「あのな、蘭。俺達結婚したんだぜ?旦那様の背中くらい、たまには流してくんねーの?」
「ぅぅ…///」
そういう言い方をされると弱い。そしてそれを知っている新一は口篭もる蘭を見てふふっと笑うと先行ってるぞ、と言ってさっさとバスルームに消えていった。
「…強引なんだから…」
残されてぽつりと呟く。とはいえ、新一の気持ちも…わからないでもない。
寂しかったのは蘭だって同じ…さっき、ほんの少し触れられた場所が疼いている。
そしてたったあれだけでもう、身体の芯が熱を持ち始めているのを否応無しに感じてしまっていた。
(いい…よね?私、新一のお嫁さんなんだから…)
しなくてもいいのだけれど自分に言い訳するように心で呟いて、意を決して蘭もバスルームに向かった。
…だけど服を脱ぎ、髪をまとめて水音の響く浴室の扉の前に立つと、やっぱり恥ずかしく、二の足を踏んでしまっていた。
(どうしよぉ…)
気配に敏感な新一のこと、もう自分がここまで来てることなどお見通しだろうから今更逃げたりしたらあとでどんな『仕返し』されるかわかったもんじゃない。
躊躇した蘭は、苦肉の策で咄嗟に浴室の電灯をオフにする。
「オ〜イ、いきなり何すんだよ。」
中からの声に構わずドアを空け、中に入って後ろ手に閉めた。
すりガラス越しの、脱衣所のぼんやりとしたライトのみで、浴室は暗がりだった。
「…はずかしーんだもん…」
ぽそりと言う蘭を、伸びてきた腕が攫う。流れるシャワーの下で、素肌を抱きしめられて一瞬、意識がくらりとする。
耳のすぐ側で、蘭が愛してやまない甘い声が熱っぽく囁いた。
「…ホント、おもしれー奴だな。…じゃ、暗くしたんだから、もう何しても平気だよな?」
言うと同時に壁に背を押しつけられ、両胸を掬い上げられた。
そのまま、ぷちゅ、とやけに可愛い音をたてて片側に吸い付き、もう一方は指先でぴんと弾く。
両胸に一度に与えれらた異なる刺激に、声を堪えようとして
「くふん」
と喉が鳴った。
そんな蘭の様子を目線をあげて見ながら、口内でかたち付いてきた突起を舌先で突つき、吸う。
表情は暗くて伺えないが、もれる息遣いが蘭の快感を伝えていた。
(声、出しゃいーのに…)
蘭が必死で声を堪えようとするのがちょっとばかし不満な新一はますます甘い攻めを、与えつづける。
「ふ…ん…やぁ…!」
逃れようと身を捩るのを軽く押さえて、右手を遠慮無く腿の内側に滑らせた。
「あん、ダメ…!」
「何がダメなんだよ…」
胸を咥えたまま、わざとらしく聞く。そうしながら手は足の間を伝い、新一のみが触れられる場所をゆっくりと、指で辿った。
「あ…ん…」
誤算だった。暗くすれば見られないからと思ったが、視覚を閉ざされていることでかえってその他の感覚が鋭敏になってしまい、新一の指や舌が与える愛撫のひとつひとつがやたらにくっきりと際立って、強烈に性感を刺激されてしまっていた。
シャワーに多少かき消されつつも、自分の速い息遣いや新一の唇が自分の肌のあちこちを吸い上げる音なども耳に直接響いていっそうそれを昂まらせた。
いつのまにか直に触れられているその場所も、もう内腿までべたべたになるほど濡れてしまっているのも自分で解っていた。
今を逃したら、もう動けなくなる…
そう思って蘭は、わずかに残った意思をたて直し、喘ぎながらやっと言った。
「し、新一…待っ…て…」
「ダメ」
即答されて、それでもなんとか、自分の中を浅く掻きまわす指を手で懸命に押さえながら、
「や…だ…ここじゃ、や…ぁ…」
それを受けて新一が愉しそうに言う。
「ふうん。じゃあ、どこなら良いんだ??」
返事が出来ない蘭に、焦れたように浅く含ませた指を動かしてみせる。
「あん…!…先に…ってて…」
「ん??」
「やっ…ん…ベッド、で…待ってて…!」
やっとのことで言えた蘭にくすっと笑うと、するっと手を引き、熱を持った両頬にちゅっとキスして、
「じゃ、待ってるからなv」
と言い置いてさっと浴室を出ていってしまった。
壁にもたれたまま一歩も動けずにそれを見送った蘭はほっ…と息をつきながら、
(結局…背中なんて流してないし…)
と心の中で小さく文句を言った。
ふらつく足をたて直してなんとか身体を洗い、浴室を出て鏡の前で髪を解いて梳かす。
映った自分の胸にもう幾つか付けられていた紅いキスの痕を目の当たりにしてちょっと赤面する。
少し迷ったが、着て行っても無駄だと正しく悟り、タオルだけを巻いて部屋へ向かった。
サイドランプだけが点けられたベッドに近づくと、新一は横向きに臥して目を瞑っていた。
その顔を覗きこんでみるが、目は開けない。
(…疲れてたのかな、やっぱり)
思えばここ最近、自分も留守がちだったが新一もまるで独身最後の追いこみのように、立て続けに事件に駆り出されて忙しくしていたんだっけ。きっと夜も遅くまで飛びまわり、さらに夜更かしして本読んだり食事もめんどくさがって適当に済ませていたに違いない。
…これからはそんなあれた生活をさせないように、自分が見守らなくちゃ…そう決意を固め、タオルを外してベッドに滑り込む。
伏せられた長い睫毛の下の頬を指で軽く突つく。ほっとしたような気もするが、中途半端に温められた体は持て余しそうで、一抹の寂しさも覚える。
「…寝ちゃったんだね」
と、その手を掴まれる。
「んなわけ、ねーだろ」
と新一がぱちりと目を開ける。腕を伸ばして蘭の腰を抱き寄せた。
「やだ、寝たふりなんて…趣味悪いわよ!」
「…ホントに寝てると思った?」
「うん…」
「ガッカリしたろ?」
「バ、バカ!そんなこと…ひゃん!」
あわててもがく蘭の胸を、あらためて新一の手が捕らえる。
「さっきのでお終いじゃ…オメーも眠れるわけないよな?」
「もぉ…バカバカ〜〜!」
「オメーの『バカ』は『好きv』に聞こえんだよな…」
「…バカァ…」
それだけ言うのが精一杯で、さっきよりも激しく揉みこまれ、舐めあげ、吸われる感覚が胸の先から伝わってたちまち身体が熱くなった。指先にじわりと痺れが抜ける。
「あぁ…っ、ん…はぁっ…」
「蘭…気持ち良い?」
「ん…やぁ…」
「言えよ…」
言わなくたって充分解ってる筈なのに…わざと言わせようとする新一を軽く睨みつけたが、愛撫に応えてすっかり固くたちあがっている胸の先が指と、舌とで弄られるさまを、うっかり見てしまった蘭の頬がまたかぁっと熱くなる。
いったん温められていた身体は必要以上に敏感で、触れられるたびに電撃のような痺れが走った。
2週間ぶりの新一の愛し方は優しいが執拗で、容赦なく蘭を追い詰めた。
胸に絶え間なく与えられる刺激だけでももうギリギリだったのに、さらに手は下へと伸びて足を撫で上げ、その膝を開かせた。
指が直に、秘められた場所に触れる。
「ああん!」
花弁を一枚ずつめくるようになぞられ、蘭の腰が震えた。
熱い液体がたらたらと、新一の指に絡んで伝い流れる。
潤いに溢れたそこに新一はそっと唇を寄せた。
掬い取るように舌で弄ると、蘭が耐えきれずに甘く鳴く。
ここでも一番敏感な場所は真珠の粒みたいに固くふくらんでいて、甘い蜜を味わいながらそれを丁寧に舐め、優しく吸った。
「あ、あん!…やぁ!あ!」
蘭の身体が跳ねる。
「蘭、すげー可愛い」
もう声を止められない蘭に、舌での愛撫を続けたまま、涌き出る泉にそっと指を挿し入れる。
内部は熱く、待ち焦がれていたように指に吸いついた。ゆっくりと指が届く限りの奥まで満たし、内壁を擦りながら抜ける寸前まで引く。その動作を繰り返すと蘭の甘い声は切なさを増して、さまよっていた手が新一の後ろ髪をきゅっと掴む。
(…そろそろ限界?)
そう思いながら目を上に向けると薄明かりに照らされて、眉を寄せ、焦点の合わない瞳を潤ませて宙を見つめる蘭の顔が目に入る。
薄く開かれた唇から甘い声の混じった息が漏れ、激しい愛撫に翻弄されるように弱々しく首を横に振っている。乱れた髪が頬と、頚すじに絡みつく。
そんな乱れた姿を目の当たりにしては…
(むしろ、俺が限界…)
そう思ってさっと手を引き、濡れた口元を拭う。
突然全ての動きを止められた蘭が、息も整わないまま目を動かし、新一を見る。
(どうして…?)
と問いたげな切ない顔に笑みを返すと、ぽんとベッドに仰向けになり、手を差し伸べた。
「蘭が、おいで」
数瞬ののち意味を理解した蘭が恥ずかしそうに首を竦め、うらめしげに見る。
そんなことで許されるはずはなく、新一はにこっと笑って手招いた。
「…目…瞑って…///」
「はいはい」
新一が目を閉じるのを待って、力の入らない身体をなんとか引き起こし…愉しそうに目を瞑っている新一を軽く睨みながらそっ…とその腰に、跨る。
初めてではないけれど…恥ずかしさには未だに慣れない。
でも…おそるおそる触れてみた自分自身のソコの熱さに眩暈がする。
新一を受け入れないことには、この熱に治まりをつけることは出来そうになくて…蘭は自分も目を閉じ、息を詰めて、間もなく自分を貫くためにすっかり固くなった熱い楔に手を添えるとそっと静かに自分の入り口にあてがった。
新一も、息を詰めた。
そのままゆっくりと、腰を沈める。
「…ふ…ぅ…」
「…っ…」
新一の熱は蘭の中を押し広げ、蘭の内部は新一にしなやかに絡みつく。
お互いの熱さを充分に感じながら蘭はゆっくりと腰を揺らした。
新一は手を伸ばし、蘭の胸を下から包み込み、押し上げるように揉む。
「…っ蘭…熱っついな、オメーの…中…」
「はぁっ…はぁ…しん…ち…」
バラバラに乱れていた2人の呼吸が次第に合ってきて、それに呼応するように蘭の腰も一定の律動で揺り動かされる。無意識に内壁の一点を擦りつけてくる動きに、新一も下から不規則に突き上げることで応えた。蘭が豊かな胸を反らせて高く声を上げる。
「あ…ん!やっ…だ…め…」
「…ダメ?もっと、の間違い、だろ…」
「ぁん…バ、カ…!」
蘭の内部が急激に収縮し、ぐっと締め付けられる感覚に息を呑んだ新一がそっと目を開けると、目をきつく閉じ、何かに耐えるつらそうな顔で喘ぐ蘭の姿が目に入る。
ほんとうに限界が近いな、と感じ取って新一は何の前触れもなく蘭の腰を両手で掴み、一気に奥まで激しく突き上げた。
「あっ…あん!!あああん!…やあぁっ…!!」
「蘭…愛してるよ…」
激しい突きに意識ごと奪われそうになっても新一が囁く声はしっかりと耳に届いて…魔法のように快感を増幅させる。
「一生…いや、あの世でも、離さねーから…」
「あ…新一…」
「もう…独りにしねーから…!」
「新一、新一…っ!」
涙声で新一の名を繰り返し呼ぶ蘭の身体ががくがくと痙攣する。
新一もすぐそこに迫った自身の限界に耐えながら蘭の腰を掴む手に力を篭め、思う様に身体を揺さぶった。
「し…いち…す、き…あ、ああっ…!!」
「…くっ…ら、ん…!」
次の瞬間、蘭が自らを抱きしめるよなポーズで全身を細かく震わせ…やがて新一の胸にくったりと崩れ落ちた。
力なく倒れこんできた熱く柔らかい肢体を受け止めながら、新一も蘭の身体の奥に自らの情熱の雫を吐き出した。
「…っ…」
「は…ぁ…」
肩で大きく息をしながら、しっとり汗ばんだ蘭の背中を優しく撫でる。
蘭もまだ整わない呼吸で、酸素を求めて喘ぎながら新一の胸に縋り、頬を擦り付けた。
熱く愛し合った満足感と幸福感に疲れきった身を2人で浸していた、そのとき。
無粋なコール音が部屋に響いた。
習慣で枕辺においてあった新一の携帯電話が待っていたかのように突然鳴ったのである。
しばらくは、2人とも動けなかったが…コールは続く。
「…新一。」
蘭が新一の胸に身を投げたままぽつりといった。
「ん…何?」
「…電話…」
「ほっとけよ」
言い捨てて、蘭の背中にまた手を滑らす。
流石に今は、取る気になれない。今日ばかりは誰にも邪魔されたくない。
至極当然の要求と言えよう。
しかしそんな新一に挑戦するかのようにコールは鳴り続けた。
蘭が目だけを動かして電話と、新一の顔とを見比べる。
一向に諦める気配のない相手の性格を象徴するかのように鳴り続ける電話に、ついにこちらが折れ、軽く舌打ちしながら電話を手にとった。
(蘭の母さんだったら…笑うしかねーよな…)
昔の思い出に苦笑しながら開いたディスプレイに表示された名前を見て、新一は訝しげに眉をしかめた。
『遠山 和葉』
(…???)
電話を蘭に示す。まだ身体を動かせないままちらりとそれを見た蘭もきょとんとした。
「…和葉ちゃん、なんで?」
数時間前まで一緒に飲んでいた、そして今二人がどこにいるかは百も承知のはずの和葉がなぜ、しかも蘭でなく新一の携帯にかけてくるのか…?
「和葉ちゃんなら…私が出た方が良いのかなあ…?」
「いや…待て」
少し考えているうちにピンときた新一は通話ボタンを押すと精一杯不機嫌にハイ、と応じた。
果たして、電話の向こうから聞こえてきた声は、予想通りの人物のもの。
『く・ど〜v俺や、俺!』
「…服部か、やっぱり…」
表示される名前が自分のものだったら新一が出ないだろうと踏んで和葉の電話を使ってかけてきたのだろう。
相手が平次とわかり、見られているわけでもないのに急に気恥ずかしくなった蘭は慌てて未だ『繋がった』ままの腰を引こうとしたが新一の手にぐっ、と押さえ込まれて
「…っ!」
やっとのことで声を飲みこんだ。
『ど〜や?そろそろ第一ラウンド、終了か〜?』
『アホ!やめえ!!』
上機嫌な平次の横で、慌てて制止する和葉の声。園子の笑い声も聞こえる。
「この、酔っ払いどもが…」
『蘭ちゃん、どないしとる?』
もともと遠慮のない男ではあったが酒の勢いでさらに磨きがかかっている。
胸に縋ったまま息を潜めている蘭をちらりと見やって、「俺の上」と正直に言ったらあとで蘭が怒るだろうな…と思い、
「…眠った。疲れたんだろ」
『そりゃ〜そやろな!幸せそうで結構や!』
「…切っても良いか?」
相手にしてられない、と会話を強制終了させようとした所で電話の向こうの相手が変わる。
『もしもし、新一くん?』
「…園子か。なんだよ」
それを聞いて電話の相手が自分の親友とわかり、蘭がぱ、と顔をあげる。
微かに聞こえる声は確かに園子のものだけど、内容までは解らない。
「オメーも、ちょっと飲みすぎてんじゃねーか??」
『……』
「うるせーっての。もう家帰れ」
『……!………』
「……ああ…解ってる」
『………………』
「わかってるよ。言われなくたって、そうするさ」
『……』
「…ああ。じゃあな。」
はじめは苦々しく相槌を打っていたのに、最後はやけにしんみりとしていた。
電話を切り、今度はしっかり電源もオフにしてぽいと放る。
自分を抜きにして夫と親友の間で交わされた会話が気になった蘭は、首を上げて新一の顔を伺う。
その表情は穏やかだったけれど、何か深く考え事をしているような、言われたことをかみしめているような…神妙な顔つきだった。
気になってしょうがない蘭は、とうとうガマンできずに聞く。
「ねえ、園子なんて言ったの?」
「…」
応えてくれない新一に焦れて頬をむにっとつねる。
「…知りてーか?」
うんうんと頷く蘭を、それじゃ、と抱きかかえたまま寝返る。
「あ、ん」
腰を繋がれたまま身体を入れ替えられ、思わず声をもらした蘭は新一の体の下で身を竦める。
恥ずかしそうに頬をそむけたままちら、と自分を見上げた視線ににこ、と微笑み返す。
「…園子からのメッセージはな。」
「うん…」
耳元に唇を寄せて、囁いてやる。
「『腰が抜けるほど、愛してやってくれ』だってさ。」
「…!?」
「と、いうわけで。」
「ちょ、ちょっ…と…やん!」
さっきまでの神妙な態度はどこへやら、愉しそうに自分を組み敷く新一を見て、蘭は半ば呆れながら、それでも子供のような素直な強引さを愛しくも思いながら結局身を任せてしまっていた。肌におちる接吻けに再び意識が奪われる直前、蘭は心の中で、
(園子…まさかホントにそう言ったわけじゃないよね?/////)
いつか本当のことを親友の口から聞かなくては…と思った。
end
作者様後書き
果てしなく言い訳になりそうなので簡潔に。
無駄に長いよ!
蘭ちゃん乗っけちゃってるよ!
表とリンクさせてんのが無理目だよ!
む、むずかし〜なあ〜!!
ラブ天道は深い…;;;
こんなものでも…読んでいただけたんですか?
ありがとうございました。
戻る時はブラウザの「戻る」で。