Night of the Christmas
by槇野知宏様
目が覚めると、そこは私の部屋ではなかった。
炬燵の上には食べかけのチョコレートケーキ、その周囲には空になったカクテルの空き缶が転がっている。
『あ、昨夜は渉の部屋に泊まったんだっけ?』
そう思って視線を転じると、微かな寝息をたてて彼が眠っていた。渉の腕を枕にして寝てたワケだが、疲れが僅かながら取れた気がする。
渉と私は同じ布団の中で抱き合っていた。二時間くらい前にお約束的なコトを済ませた後なので、服どころか下着すら着けていない。
無精髭の生えた顎や頬、見た目より引き締まった胸や腕を指先で突いても微動だにせず静かに眠っている。渉は寝相が良いけど、彼に言わせると私のそれは相当酷いらしい。
フロントスリーパー、チョークスリーパー、頭突き、裏拳、ウェスタン・ラリアット等々・・・枚挙に暇(いとま)がない。
『もう慣れてますから』
そう言って彼は笑うけど、その後の報復(?)が激しいものだったりする―――穏和な顔してるのに優しい時と激しい時のギャップが凄い。
そんな事を考えていたら、渉の手が動いて、私の頭は彼の胸付近で抱き止められる格好となった。
「ホントに寝てるのかしら?」
そう呟いて彼の弱点である胸を舐めると、また渉の手が動いて、今度は私の身体は完全に彼の上に乗っかった形となった。
これは完全に起きている、と、確信した私は耳元で、何時から起きてたの、と、囁くと、寝惚けた声ではなく、ハッキリとした答えが返ってきた。
穏和な顔ってところからですよ、と、言った渉は私を優しく抱き締めて囁く―――寒くないですか、と。
温かいから平気―――そう言って彼の方を見ると、突然キスをされた。優しいようで少しばかり激しいキスだが、何故かチョコレートの味がする。
「ねえ、渉。何でチョコレートの味がするのよ?」
「クリスマスですからね。こういうプレイもありじゃないですか?」
そう言うと渉は指先に付いたチョコレートを私の顔に付けて、その部分を舌で舐めた。
「もう、渉のエッチ」
私も逆襲とばかりにチョコレートを指先に付け、それを渉の首筋に付けて、ちろり、と、舐める。
そうしたら渉が反撃し、私がカウンターで応戦する・・・これを繰り返すウチに身体中がベタついてしまった。
「限度というのを知って下さい。これじゃ布団の中じゃ寝れませんよ」
「何言ってるの。最初に仕掛けてきたのは渉の方じゃない」
少しばかりの言葉の応酬はあったが、それは笑い話となり、互いに顔を見合わせて笑う。
「明日はお互い非番ですし、シャワー浴びて布団を洗えば問題ないですね?」
「そうね。今を楽しみましょ、渉・・・」
そう言って互いに唇を塞ぐ。口から唾液が滴り落ちて素肌を濡らすが、それに構わず深いキスに没頭した。
唇を離すと、混ざり合った唾液が一本の糸になりカーテンの隙間から入り込む月の光を浴びて銀色に輝く。
キスに没頭してる最中に偶然、私の左足が彼の両足の間に入り込んでいたのだが、太股に“何か”が当たった―――何度か目にしただけでなく、その“何か”で毎回絶頂に達している。
銀の糸が切れたのを確認した私は渉に対して挑発的な視線を向け、膝で下腹部の下を押しながら耳元でこう囁く―――ねえ、何で“ここ”が堅くなってるのよ、と。
「まあ、オレも健全な成人って事ですよ」
「ホントに元気なんだから。まだ二時間しか経ってないのに」
そう言って私は胡坐(あぐら)を組んでいる“戦闘準備完了”という状態の渉自身を愛しそうに両手で捧げ持って舌を這わせる。
行為としては“舌を這わせる”というより“軽くキスをする”に近い。さらにそれを口に含んで頭を上下に動かす度に彼の吐息と快楽、そして耐えようとする彼の表情が私の心にあるスイッチを切り替えた。
息遣いも荒くなり、表情が変貌していくのが手に取るように分かる。その表情を見た私の中で、もっと苛めてみたい、という思いが心の奥底から沸き起こる。
限界が近い事を悟ってペースを上げつつ口に含んだモノを噛みながら―――甘噛みより僅かに力を入れた程度―――渉は私の口腔内に白い粘り気のある液体を放った。
独特の臭気を放つそれを嚥下しようとするが、放出した量が多かったようで口から僅かに零れて床の上に落ちる。絶頂に達した際に糸が切れた人形みたいに床の上に倒れて激しく息づく渉に近づいて耳元で囁く。
「結構、根性あるじゃない」
「まあ何度も同じ事をやっていれば、自然と耐性も付きますからね」
そう言いつつ、渉は私の耳たぶを甘噛みしながら、私の胸を丹念に攻め立てる。
優しく愛撫したと思えば、胸の突起を摘むように攻める―――彼が得意とする局所一点集中攻撃だ。
声にならない声が口から漏れる。それに構わず渉の手は胸から身体のラインを指でなぞりながら、私の下腹部へと到達する。
右手が動いて指が私の中に侵入した。上下に動く指がゆっくり動いたと思えば激しく動いて身体の内側から外側、そして下から上へと快感の波が押し寄せてくる。
「ん・・・力がぬけちゃうっ・・・」
「感じてるんですよね・・・もう指だけじゃ物足りないんじゃないですか?」
身体を動かし、ささやかな抵抗を試みようとしたが、彼の左手は胸を攻め立てるものだから力が入らない。
上下に動く指がゆっくり動いたと思えば激しく動いて身体の内側から外側、そして下から上へと快感の波が押し寄せてくる。
「指だめ・・・んっ・・・力がぬけちゃうっ・・・あぅんっ!!」
渉が床の上に大の字になったように、私は渉の身体の上に倒れ込む形となった。
「これでイーブンですね。美和子さんも耐性が付いたんじゃないですか?」
ニヤッと笑う渉の後頭部にエルボーをお見舞いして、彼自身を体内に挿入させた瞬間、急激な快感が突き上げて来るのを感じた。
「んっ・・・気持ち良いっ」
「相変わらずオレの上に乗るのが好きですね。でもこの体勢だとオレと美和子さんが繋がってるのが丸分かりですよ」
「変な事を言うと降りるわよ?」
そう言って降りようとした時、渉の両手が私の腰を掴んで先程とは比べようがない快感が体内を駆け巡った。
「奥まで来たでしょ?もっと感じて下さい」
「はあっ・・・一気に入れるなんて・・・渉・・・だめっ・・・そんなに突き上げない・・・あうっ」
彼の両頬の手を添えて顔を上げさせて、私は軽く唇を合わせる。その後は結合したまま、二人して思いっきり愛し合った。
身体中が汗と唾液にまみれ、耳に入る渉が動いた時に聞こえる淫らな水音―――それすらも心地良く感じる。
「見えますか?オレのモノが根元まで美和子さんの中に入っていく・・・そして繋がってるところが」
「渉・・・も・・・感じて・・・奥に・・・当たっ・・・て・・・あっ・・・もう・・・また・・・」
「もう少しですから・・・ん・・・オレも・・・抜きますよ?」
「ダメえっ・・・中に、中に出してっ・・・!!」
絶頂に達するのと同時に、渉から大量の体液が放出されて私の体内を染める。
何とか彼のを引き抜いた時、体内で放出された体液が太股を伝ってるのを自覚しつつ、私は彼の太股に腰を下ろした。
互いに疲労困憊という状態で暫く抱き合っていたけど、顔を上げた二歳年下の恋人が優しいキスをくれた―――最初に耳、次に頬、ついでにチョコレートクリームを口に含んだままのキス。
「もう渉ったら・・・最後の最後までエッチなんだから」
「すいません。でもクリスマスですから勘弁して下さい」
「宜しい。ただし今夜はこれで終わりよ。さすがに二回連続はキツイから」
「右に同じです。早いですけどシャワー浴びませんか?」
そうね、と、呟いた私は、渉の引き締まった胸に頭を乗せた。
終わり
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